月の末裔関連の世界設定①
Ⅰ 物語のバックボーン①
それでは『月の末裔』関連の世界設定を書いてゆきます。
これに関しては現実と地続きの世界ですので、やれこの国の独自の神様はどうとか気候やら産業やらがこうとか、何食べてるのだとかその国の人の名前のシステムはうんちゃらかんちゃら、などと設定する必要ないです。
基本、20世紀終盤から21世紀初頭の日本に準じますので、日本人の名前(多少は厨二くさくても)であるキャラクターが、日本に実在する職業に就いて、現代日本のシステムの中で暮らしていればいいでしょう。
まあ当然、水神様から授かった泉のある大阪郊外の架空の町やら、月の神の氏族やら『生と死の狭間』やらはファンタジー要素ですから、その辺はチマチマ設定を詰めてゆきますが。
そもそも『月の神の氏族』というアイデアを持った、最初の頃から少し語ります。
ふた昔、さん昔以上は前の話になるかのう。
今やおばはん以外の何者でもないかわかみれいが、さすがにまだ十代の娘さんだった頃のことじゃった。←?
学校の古典の授業で『古事記』だの『日本書紀』だのを習ってしばらく経ったある日、私はふと思います。
(ツクヨミノミコトって、何故こんなに影の薄い神様なんだろう?)
黄泉のイザナミノミコトから逃げて来たイザナギノミコトが、禊をした際に生まれた三柱の貴い神様のうち、アマテラスオオミカミとスサノオノミコトについての記述は沢山あるのに、ツクヨミノミコトはほぼほぼ、
『夜の食す国を治めよ』
と、とーちゃん(イザナギノミコト)に言われただけ。
(わだつみを治めよ、とかも言われたらしいけど)
えー? これって変じゃない?
記紀にアマテラスオオミカミのことがたくさん書かれるのはある意味当然(天皇家の祖神だから)だとしても、ツクヨミノミコトのこと、もっと書かれていてもいいのでは?
何故問題児?のスサノオノミコトのことばかり、書かれているの?
ウケモチノカミ(食物の女神)をツクヨミノミコトが殺した、というエピソードもあるらしいけど、古事記ではオオゲツヒメノカミ(穀物の女神)をスサノオノミコトが殺したエピソードとして書かれている。
時代的には古事記の方が古いから、食の神を殺すことで穀類の種を手に入れることになったのは、どちらかと言えばスサノオノミコトのエピソードっぽい。
元々、ツクヨミノミコトとスサノオノミコトは同一神の可能性もあるけど、『月の神』はもしかして、『あえて』隠された神なのでは?
そう思い至った瞬間。
私の中の無自覚厨二が発動し、バタバタッと『月の神の氏族』の原型が組み上がりました。
月の神が司るのは、夜もしくは海。
はっきりと見えない、つかみどころのない、そういう恐ろしい部分・影である部分を司る神なのではないか?
具体的に『夜』とか『海』というよりも、人の心の影の部分・つかみどころのない心の闇、つまり夢や無意識を司っているのでは?
そこを司る霊力を持つ者たちは、権力者・為政者にとって得難い切り札になり得るだろう。
彼らに保護されると同時に管理され、世間から隠されたのが……、『月の神の氏族』。
名前だけは残っているものの、具体的に歴史には残らない存在……となったのでは?
つまりこの瞬間、『色彩(いろ)のたゆたい』や『月の末裔』のバックボーンが、くっきり浮かび上がったのです。
ここまでくると後は、次々とストーリーやエピソードが浮かび上がってきます。
それをじっくり育て、取捨選択をくり返し……、長い時間をかけてきちんとしたお話にしてゆくことになります。
次回は『月の末裔』と地続きの、『クサのツカサ』のことを書いてゆきましょう。