ラクレイド話の世界設定④
Ⅳ ラクレイドの周辺国②
ラクレイドやデュクラのある大陸は、この世界で一番大きな大陸です。←設定
でも、それよりやや規模の小さい大陸は遠く海を隔てた地に二、三あり、そこでもそれなりに、別の文明を築いて栄えたり衰退したりしている国々がある……という、ふんわり設定があります。
この世界の地球?規模の話ははるか先の時代になるでしょうから(笑)、ラクレイド・クロニクルで語られることはありません。
ラクレイド話で語られることの多い外国のうち、最高に遠い(笑)二つの国について少し書きましょう。
【南洋の島国・レーン】
レライアーノ公爵の生母・レーンの方ことレライラ(ルクツ)さん。
彼女の出身国がレーンです。
大小10ほどの島の連合体、と呼べる国で、主な産業は農業・漁業。
そして特産加工品の輸出。
アイオールさんたちが活躍する時代より五、六十年前くらいから、サトウキビから作る黒糖や蒸留酒、真珠や珊瑚などの特産品を輸出してそれなりに稼いでいます。
だけど華美を嫌う国民性ともあいまって、少々稼いでも質素に暮らす者が多い模様。
信心深い人が多いので、稼いだお金を神殿へドンと寄進したりします。
信心、つまり『レクラ(神)』への信仰。この国独特の宗教です。
良くも悪くも島ごとに閉鎖的になりやすい彼らを、緩やかにつないでいる『レクラ』信仰。
説明するのが少々、難しい信仰です。
どんな教えか、拙作『王太子スタニエールの憂い』で少し説明していますので抜粋します。
これは、アイオールさんの両親が初めて出会った時のシーン。
とあるきっかけで二人(スタニエールさんとルクツさん)は、『レクラ』問答になります。
以下、抜粋。
「違います。私のレクラに今、必要を感じないだけなのです、ラクレイドの方」
少女は自明のように謎めいたことを言う。苛立ちが募る。
「それがレーンの神の教えなのか?そもそも『レクラ』とは何なのだ。レクラは神の名ではなかったのか?」
『レクラ』は光であり闇であるもの。
海であり島であるもの。
この世をつくるあらゆるもの。
それらすべてを引きくるめて『レクラ」と呼ぶ。
つまり『レクラ』は神である。
《中略》
「レクラはレクラ、何とは申せません」
少女は不思議そうに言った。
「レクラは光・闇・海・風・島・人・鳥・魚・木・草……そのすべてです。それ以上の説明は出来ません。ああ……外国の方にはなかなかわかっていただけないと、おねえさま方からよく聞かされていましたけれど。本当なのですね」
感心したように彼女は、半ば独り言のようにそう言った。
抜粋終わり。
当時十四歳だったスタニエール王子が、王の名代としてレーンを訪れた際、偶然出会った十一、二歳ほどの少女。
黒髪に深い紫の瞳を持つ、神殿に仕えているらしい彼女とスタニエールは、レーンの神『レクラ』について問答します。
そして、訳わからんと首をひねるスタニエールさん。
ラクレイドの神は『この世を創った』とされている。
が、レーンの神『レクラ』は、この世を創ったのではなくこの世……世界そのものなのだという。
要するに、神がこの世を創ったのではなく、遥か昔から在り遥か先まで在る存在、つまり世界こそが神だ……と。
その理屈を、頭では何とか捉えたとしても、どうもピンとこないスタニエールさん。
外国人にはこの教義が『ピンとこない』らしい、ことを、初めて目の当たりにして軽く感動するルクツさん。
二人の感覚や考え方の隔たりと同時に、互いがとても印象に残る存在だということを表現できたかと思います(笑)。
『レクラ』という神の概念は、彼らが海洋民族であり、果てしない海と空に包み込まれるように生きてきたことから生まれた、東洋的な哲学にも似た教義……として、私が一生懸命ひねり出した(笑)宗教です。
彼らは『世界はそもそもひとつで、万物は究極、同じものが基になって臨機応変に形が変わっただけのもの』と捉えています。
彼らが、穏やかで基本的に争いを好まない国民性なのは、この教えを信じているからかもしれません。
元々ひとつなのですから、必要以上に争って敵対する意味がない、という感じなのでしょう。
でも……この教義。
読者の方には、わかりにくかったかもしれませんね~。