ラクレイド話の世界設定①
それではまず、ラクレイド話こと『ラクレイド・クロニクル』の世界設定について描きましょう。
言わずもがな、ではありますが。
ラクレイドやその周辺国はあくまで架空の国であり、かわかみれいの独自ふんわり設定の世界ですので、『ヨーロッパの王制はそんなんじゃない』とか『西欧の中世・近世の成り立ちや歴史から見て矛盾がある』などのご指摘は、何卒カンベンして下さいませ。
キッチリ言い訳も書きましたし(?)、サクサク進めましょう。
Ⅰ ラクレイド王国の身分制度
① 王
ラクレイドで唯一無二の存在。当然、身分は№1!
彼ないし彼女が頭を下げるのは、ラクレイド神話の創世神・ラクレイアーンのみ、とされている。
カタリーナさんに頭を下げられ、本気でアイオールがうろたえるのも(『第八章 王都へ⑥』参照)、この社会通念があるから。
② 王族
王妃や王配、王の親や兄弟、王子や王女など。
ただ、臣籍へ降ったものの王位継承権を持つ王子や王女は、冠婚葬祭時『王族』の扱いになる。
③ 貴族
公・侯・伯・子・男爵。
歴史のある爵位の高い家は当然尊重されるが、ラクレイドは基本、実力主義のお国柄。爵位だけ高くても威張れない(笑)空気がそこはかとなくある設定。
身分に寄りかかっているだけの者は、結構あからさまに疎まれるので注意が必要。オツムの軽い調子乗り(リュクサレイノさんちのクレイールくんとかw)には、住みにくい国でもある。
なお、五代目の王(フィオリーナ女王)の時代以降、国境近くの伯爵家(かつての小国の領主)で王家と関りの深い(そして忠誠心が篤い)と認められた家は『辺境伯』と呼ばれ、初代王の子飼いの家臣・侯爵と同等の扱いに。
④以下の身分の者が功績により、一代限りの爵位である準爵を賜った場合は彼らも貴族に含む。
④ 士族
貴族や豪族の血筋から派生した、特殊な知識や技能を要する職に就くことが多い、貴族と平民の中間的な身分。
エミルナールくんやマーノの身分がここ。
高級官僚(王宮官吏)や各地の領主に仕える代官や官吏、医師や薬師になる者は八割がた、この階級の出身者。
⑤ 平民
一般庶民。姓はない。
元の身分から追放または望んで身分を返上した者、④以上の身分出身者で、嫁入り・婿入りなどを通じ農民や職人、商人となった場合も平民。
さて。
『レクライエーンの申し子』の『序』で、この話の語り手のひとりであるエミルナールくんが
「ラクレイド西部・ウエンリィのクリークスに古くより住まうコーリンを祖とするサリエールの息子、エミルナール・コーリンと申します。王命により、本日よりレライアーノ公爵閣下の秘書官を務めさせていただくこととなりました。以後よろしくお願い致します」
と、初対面のマーノ(タイスン護衛官)に自己紹介します。
これがこの国の作法ではあるのですけど……ナンだかまどろっこしいことを、色々と言ってますよねえ(笑)。
この辺は作者の趣味(かくれ設定厨)のせいでもありますが、私としては読者の方に『ああ、ここはどこかの違う世界が舞台なんだなァ』ということを感じてもらいたかったから……です……けど。
哀しいことに、あまり成功していないようですね。
この世界の固有名詞の羅列は読者にとっては鬱陶しい、ただのブラバ要素だったようです(泣)。
まあ、泣いていても仕方がありません。
それは今後の課題として。話を続けます。
この自己紹介にはぶっちゃけ、
『俺っちは西国・ウエンリィはクリークスで、昔っからブイブイゆわしてきたコーリン家の現当主・サリエールの息子のエミルナールや。レライアーノ公爵閣下の秘書官務めるよう、畏くも王命を拝した身ィや。青二才やと思って舐めくさったら承知せーへんど』
(何故ガラの悪い関西弁?ww)
という意味合いがあります(笑)。
ラクレイドで『名乗りの作法』と呼んでいるこの形式で自己紹介をするのは、基本士族(姓を持つ者)以上の身分の者。
己れの出自を明らかにし、仁義を切る意味がある、と(笑)。
庶民の場合は簡単に
「俺はマイノール。マーノと呼んでくれ」
「僕はエミルナール。エミーノと呼ばれることが多いので、それで結構です」
くらいの自己紹介でおしまいです。
また、ラクレイドは建国の頃から実力主義的側面の強い国柄でもあるので、②~④の垣根は、己れの実力さえキッチリ示すことが出来れば意外と低い……という設定であります。
(結婚などはさすがに身分間の制限があります)
マーノがアイオールに気安いのは、幼馴染みの乳兄弟であると同時に『ふたつ名持ちの護衛官(当代トップクラスの護衛官)』であるという、実力の裏打ちもあるからです。
……いやまあ、それにしたってマーノの態度は、この国の常識で考えて無礼でしょうけどね、たとえ私的な場だけであったとしても(笑)。
ただし、いくら実力主義のお国柄とはいえ、さすがに彼ら(姓を持つ階級)と平民が、あまり気安く付き合うことはありません。
身分社会ですからそんなものでしょう。
また、ラクレイドは基本的に奴隷制度を設けていません。
ですが事実上奴隷的な扱いを受けている者は、社会の隅にいると考えられます。
たとえば『流れ者』と呼ばれる芸人などは、地域によってかなり下に見られています。




