たとえ、形代(かたしろ)であったとしても。の世界設定④
Ⅳ この世界の国土やら歴史やら
さてさて。
この世界設定もいよいよ大詰め?。
ヒトが暮らす国土やら、それとなーく現王朝が隠している、以前存在した王朝のことなどのあれこれを書きましょう。
まずは国土について。
雰囲気としては絶海の孤島……孤島というにはあまりにも巨大ですが、そんな感じです。
大まかにいうならひし形っぽい大陸で、東西南北に人の住める環境があり、大陸の中心部は砂漠という感じ。
オーストラリア大陸のイメージでしょうか。
東は王都。国の政治経済の中心。
西は武芸者が多く暮らす里が点在。王都や他の町で警察や護衛士……この世界では衛士と呼ばれている職に就く者の多くが、この地方出身者あるいは所縁の者になります。
北は鉱山も多く、鍛冶屋や細工職人の暮らす町、南は船乗り(運輸、商業に携わる者)が多い町……、という設定です。
なにしろ、大陸の中心部に大きな砂漠がありますので、各地の行き来は船の方が早くて安全確実、という感じです。
また、同じ方向へ延々船を進めているとやがて元居た場所に戻る、『ドラク○』仕様(笑)の海でもあります。
海が荒れる時もなくはないのですが、この世界はこの通りある種の閉ざされた環境であり、王族の方々が正しく天に祈っていれば凄まじい天変地異は起こらない世界になっています。
この世界の王族は、為政者であると同時に祈禱者であり、神をその身に降ろす巫覡でもあります。
この世界の人々が王族なり大王を敬うのは、文字通り神を崇めるような気持ちなのです。
王族たるべき人(始祖大御神の最後の希望・大白鳥神の正しい後継者)がいなくなると、この世界は破滅するとも伝えられています。
私の見えているこの世界の終盤は、血筋はともかく『王族』と呼べるほどの祈祷や神おろしができる能力者がいなくなり、人の力だけで生きなくてはならなくなる……、という感じです。
嵐や地震などの災害も増え、生きにくくなりますが、人は神頼みの暮らしを諦め、自分たちで何とかするように頑張ります。
そうなることを見越していたのが、始祖大御神が最初に望んだ二柱の神。
この二柱の神は、夢や死を司る神として市井に埋もれるように存在、自らの霊力を広く浅く人々の魂に感応させ、その精神を底で支えて来ていたのです。
彼ら……始祖大御神自身の望みから生まれた最初の神々は、自らの器たり得る者(世襲ではない)を中心に、『燕雀』という組織を造り上げ、大白鳥神の末裔が治める世の片隅で、静かに人々に寄り添い続けていました。
王朝側もそれを知っていますが、あえて放置しています。
近親婚による霊力の保持がいつまで続くか、王朝の中心にいる大王に近い人ほど危惧しているのが現実でしたから。
『いろなし』『くろ』と『大白鳥神』。
始祖大御神の望みから生まれた者同士、結果的に相反する立場ではあるものの、どこか通じあうのです。
『燕雀』と『王族』。
彼らは、神そのものではありませんが、人の身では一番神に近い存在です。神々の意志を、完全ではなくても察しています。
時に反発時に協調しつつ、彼らはこの世界をゆるくまとめています。
この地で暮らす生き物は、広い意味で彼ら三柱の子供たちですから。
……とまあ、先に未来についてのアレコレの世界設定を書きましたが。
今の王朝の、すぐ前にあった滅んだ王朝のことを少し書きましょう。
大陸の中心部に砂漠が生まれた理由でもあります。
大白鳥神の産んだ子供たちが、よみがえりした魂の器として現世を生き、やがて増えて地に満ちた頃。
今以上に神の息吹が濃く残っていた遥かな昔のこと。
病の始祖大御神・『あお』の苦しみをなだめる為に生まれた女神がいました。
それが万物を慈しむ『みどり』という名の女神です。
当時の王朝は、一族の総領娘を『みどり』の生まれ変わりとして遇し、病の神の荒ぶる御魂をなだめる役目を担わせていました。
彼女は命ある限り、その身に『あお』の一部を封じます。
『あお』の病の影響で、『みどり』役を担う巫女は通常短命でした。
自分の命を削って『あお』のお守りをするからです。
この王朝最後の『みどり』の巫女姫に、恋をした若者がいました。
彼は大白鳥神の系譜に連なるものの、一族の鬼子として忌まれていた『業火』の性を持つとされ、その性をやわらげる為に癒しの女神『みどり』の神殿へ送られたのです。
神殿に来た彼は巫女姫の優しいひととなりに触れ、恋に落ちます。
でも彼女は巫女。
当然、恋人や夫を持つことは出来ませんし、そもそも『あお』の霊力で命を削り続けている状態。いつ死んでもおかしくない身の上でもあります。
彼は懊悩し……ついに正気の規を超えてしまいます。
神事を捻じ曲げ、己れの中の『業火』の性を完全に開放し……神殿とその周辺の町や村、王都(その当時)さえ業火で燃やし尽くしてしまったのです。
守るべきものがなくなれば、巫女姫はきっとさだめから解放されると、勝手に思い込んでの仕業でした。
狂った恋情と我欲で祟り神になった彼を、巫女姫は最期の力を振り絞るようにして鎮め……事件はようやく終結します。
以来、大陸の中心部は草もろくに生えない砂漠になり果てました。
大白鳥神の濃い血をひく王族たちも、王都の宮城で業火に呑まれ死に絶えました。
逃げ延びた傍系の王の血筋の者の中で、大白鳥神の霊力をどうにか保持していた者が新たに国を興しました。
それが現王朝の始祖です。
しかしこの大いなる厄災を引き起こした者が、やはり大白鳥神の血筋の王族(それもかなり血の濃い、本来なら御位にも近い存在)だったことは歴史から隠されることになり、大王の口伝としてのみ伝えられることになったのです。
……と。
色々ごじゃごじゃごじゃごじゃ設定し、クロニクル化して書いたりしましたけど。
それなりに形として綺麗にまとまり、読者が楽しく読めそうなのは
『たとえ、形代(かたしろ)であったとしても。』
の、エピソードくらいかな?と思います……パタリ。←転倒
苦労の割に、他のエピソードは上手く形にならなかったのですよ~。
物語のバックボーンを熱心に設定するあまり、肝心のお話のピントをどこに合わせるべきか、迷子になってしまった悪い例ですねぇ。
私にもっと力量があれば、この辺(過去話や未来の顛末)も上手く書けるかもしれません。
でも今の力量では、『たとえ……』を書くのも四苦八苦ですね~。




