たとえ、形代(かたしろ)であったとしても。の世界設定②
Ⅱ 厨二病の神様が見た夢の続き
さて。
孤独に病んだ神様の
「我ではない者を、我のそばへもたらせ。我を苦しみから解き放つ者を、我のそばへもたらせ」
という願いによって、神の世界――内的世界、神の心の中ともいえましょう――に、二柱の若い神が現れます。
『我でない者を』という言の葉より生まれた、あらゆる軛すなわち色から自由な翼ある男神『いろなし』が、『苦しみから解き放つ者を』という言の葉から生まれた、すべての苦しみすなわち色を引き受ける翼ある女神『くろ』が現れました。
『始祖大御神・あお』は喜び、空に浮かぶ力強い二柱の神を言祝ぐと、
「妹背となり、子を産み増やせ。お前たちの住まう土地を与えよう」
と仰せになりました。
言の葉は瞬くうちに、海と空の間に広大な大地を生み出しました。
二柱の神は手に手を取って大地の上に舞い降りると、互いに言揚げしあって妹背の誓いを結び、生まれたばかりの熱い大地に巣を創って子を産みます。
こうして二柱の神は万物の親になりました。
青色一色だった世界は、二柱の神が産んだ神々により、ありとあらゆる色にあふれるようになったのです。
……などという神話が、この世界にはあります。
空と海、という、足で立つことが出来ない世界の中で生み出された二柱の男神と女神。
翼ある、つまり『鳥』のような存在と設定されています。
いや、設定したのはアンタだろうですけど、こういう創世神話を持つ場合、それが順当かなと(笑)。
そもそもは『鳥』という存在に憧れを持ち、神格化するという流れが現実的でしょうが、このお話はかなり『文字通り』その神話から世界が出来た、という形にしました。
色とりどりの鳥たちが大地を彩り、(厨二)病の神様の孤独を慰めた……ということにしたのです。
でもそれだけでは、本当の意味で神様は病を癒すことが出来ませんでした。
ま、そりゃそうでしょうね(笑)。
だってこれって、自分の妄想で生み出した世界にだけ、ひたっているってことですから。
根本的に病が癒る訳ありませんが、神はそのことに気付きません。
始祖大御神が産みだした世界は、大地の隅々まで生き物で満ちるようになりました。
しかし、神の子孫とはいえ親から世代を経るにつれ、子供たちの身体はどうしても、小さく弱くなってゆきます。
寿命、というものが生まれ、命を失くした者たちがごろごろと大地に倒れ伏すようになったのです。
大地が死者に覆われるようになったのを見かね、二柱の親神は互いの霊力のすべてを解き放ち、死んだ子孫の魂を慰めることにします。
『我でない者を』という言の葉より生まれた、あらゆる軛すなわち色から自由な翼ある男神『いろなし』は、死にゆく子らが怯えないよう、ひとりひとりに寄り添った優しい楽土の幻を見せてやることにしました。
『苦しみから解き放つ者を』という言の葉から生まれた、すべての苦しみすなわち色を引き受ける翼ある女神『くろ』は、死した後の子らの魂を抱きとめ、憩わせる地である『冥府』を造り上げ、そこの神となりました。
こうして、大地からおびただしい死の影と恐怖は消えましたが、同時に命あるものはいずれ死ぬというさだめが出来上がってしまいました。
『あお』は絶望の上に絶望を重ね、最後にこう望んで目も心も閉ざしたのです。
「この果てない『孤独』に決して染まらぬ者をここへ。その者こそがこの地を治めるべき存在となろう」
この最後の強い願いによって生み出されたのが『大白鳥神』
この地を治める王族の祖神となるのです。
ここまでが、この世界の創世神話になります。
この後は徐々に主役が、神から人へと移り変わってゆきます。
ああ……でも。
なんでこんな暗い設定の神様とか、大本からすでに病んでいる世界を作り出したのでしょうね、当時の私は。
今では作れない世界観です。
世界観含めこの世界やストーリー、もちろん気に入ってはいますけど。
こんな病んだ発想の世界、きっともう作れないでしょうね(笑)。
ある程度若くないと思い付かない&組めない、世界かもしれません。




