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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第9話 同じ眼を持つ者

SIGN 序章


第9話 同じ眼を持つ者



「…お姉ちゃんが今からこっちに向かってくれるわ!」


30分ぐらい…かな?

とにかくあの人を見失わないように見張ろう。


今はそれぐらいしか出来ない。



それにしても…あの女の表情…。

かなり顔色が悪い…。


本人は自殺衝動に駆られているかもだな…。

だとすると行動を開始するかもしれない。


まずは人気の居ない場所へ向かう…

日も落ちてきて、時間的にも頃合か…。



最悪間に合わない場合…その時はどうする?



「白凪さん、落ち着いて!

 大丈夫ですよ…きっと間に合います!」


天城君…ありがとう!

私が取り乱してもなんにもならないものね…冷静になるのよ。




ギャルが移動を開始したか!


フラフラと路地へ向かって歩き出すギャル。



「白凪さん…動き出しましたよ…!

 どうしますか?追います?」



「…。

 こっそりつけましょう…。

 目的はあくまで尾行…それ以外は手を出さない」



お姉ちゃんが間に合うことに賭けるしかない!




二人は距離を保ちつつ彼女を追った。


かなりゆっくりだが、フラフラと人気のない方へどんどんと進んでいく…。



尾行を始めて15分ほど経った頃だ。

小さなトンネルの中央付近で彼女は止まった。




「…立ち止まったわね…」


「何をしてるんでしょうか?」




「わからないけど…

 あの場所が憑依している霊に関連がある場所か…

 都合のいい場所だからか…」



ボソボソ…


何か喋っている?



「私…どうしてこんなところに…。

 ヒッ…!!

 (か、体が動かない…!それに…何よ…この目の前のモヤみたいなものは…!?)

 」





「!!…霊が姿を現した…天城君にも見える?」


「ええ…男性…ですかね?

 彼女の体から出てくる感じでした…

 なんというか…寒気がします…。

 それだけじゃないですね…何か物悲しさみたいなものを感じます…」



男の霊だ…。

彼女の体内に居たときより禍々しさは消えている。

天城君の言うとおり…何処か物悲しい感じだ…。





「…俺がわかるだろう…?

 君に騙されて…死んだ…木村晃一だよ……」


「ガタガタ…

 (…こ、こいつ……なんで!?

  なんで私の前に!?)」




「…"お前達"の悪ふざけのせいで…俺は学校にも行けなくなった…

 お前達にハメられ……常に優等生で…一番だった俺は………俺は…!

 親にも見捨てられ…俺は死ぬしかなかった………お前達のせいだ…」



「わ…私は……!関係ないしッ!

 て、ていうか、アンタが勝手に死んだんでしょ…!

 化けて出るなんて、あんた最低…!

 とっとと消えてよ!キモッ…」



その言葉に霊は怒りに満ちた。




「…いけない…!

 霊気が危険な信号を発してる…!

 憑依してたときよりも一層禍々しさが増してるわ…!」


かなり強い怨念を抱いている…!

これはまずいわ…!


お姉ちゃん早く来て!!





「………もういい…

 お前のようなクズは地獄の苦しみを与えて…殺してやるよ…」



ヒュウウウッ!

霊は彼女の体に再び入り込んだ!



「アッ…アッ……

 (なに、これ…体が言うこときかない…!

  声も…でない!

  いや…いやだ…!死にたくない…ッ!!)」



彼女は自分の左手の人差し指を右手で掴むと、本来曲がらない方向へと一気に曲げた。


ボキッ!


骨の折れる音がトンネルに響く。

悲鳴はなかった。


だが、表情は苦悶に満ち満ちていた。

悲鳴を上げなかったのではなく、声が出なかったのだ。


最大限の恐怖と、痛みは彼女に伝わっていた。





「あの人…自分で自分の指をッ…!」


「ええ…。

 どうやら少しずつ苦しめて殺す気みたいね…。

 一発で殺さない所を見ると、まだ理性が完全にとんではいない…。

 つまり狂気化はしていないわ…今ならまだ話が出来るかもしれない…!」



でもダメ…。

ここでまた首を突っ込めば、同じ過ちを繰り返すことになる。



「…」



悔しくてたまらない…。

目の前で苦しんでる人を救えないでいる…。


彼女は相応の罰を受けているのかもしれない…。

だが、このまま殺させるわけにはいかない…!



でも…それを救うことも出来ない…。

そんな無力な自分に本当に腹が立つ…。




ボキッ!ボキッ!!


次々に左手の指を自身で折っていく。




「はぁ…ッ…

 (もう…もう…やめて……許して)」



『ダメだね…

 お前達は全員苦しみの中死ぬんだ…俺のように…』




ボキッ!!ボキッ!!!



左手の指は全て折れたようだ。


次に霊がとった行動は…



ドガッッ!!


華奢な彼女の蹴りを壁に撃ちつけ始めた。


1回…2回……。


交互に足を壁にぶつける。



壁は蹴られるたびにヒビが入り、足からは出血が見られるようだ。





「…白凪さん…

 僕はもう…限界です」



勇は中腰から立ち上がった。



「天城君!

 落ち着きなさい!あなたが行った所で状況は何もよくなりはしないわッ!」


「全力で羽交い絞めにします…ッ!」




「馬鹿ね…!見て解らないの?

 あんな華奢な女の蹴りでコンクリートの壁が砕けてる…!

 完全にリミッターが外れてる…!

 あれだけの力を普通の人間に止められるわけない!」


「ですが……ッ!

 見てられないです…!

 このままじゃ彼女は本当に死んでしまいますよ!!?」



「静かにッ…!!

 私だって…私だって悔しくて仕方ないわよッ…!!

 でも…しょうがないじゃない…力が無いのよ…私達には…!」



その時だった。

二人の横を一陣の風が突き抜けた。




「…」



見ると男がトンネル内に入っている!

いつの間に…?




「…俺には貴様ら"二人"は同等のゴミに見える…」


「…

 (た、助けて…)」



女は恐怖に怯えた表情を浮かべていた。

涙を流し、失禁している。



「…下種が…何を見ている?

 殺してほしいのか?」



男は女をゴミを見るような目で言った。




「…なに…あいつ…?」


「白凪さん…彼の動き見えました…?

 僕…彼が横切ったことにまるで気づかなかったです…」




只者じゃないのは一目瞭然だ…。

ものすごい霊気…!

それだけじゃない……なんだ…

この途轍もなく重い……例えようのない雰囲気は…!

あの霊の禍々しさすらかき消すほどの…。




『なんだ…貴様は……

 俺の邪魔をするな…』


「知ったことか…。

 ゴミをどうこうしようが俺の勝手だ…」



ビリッ!

ビリッ!!


重い雰囲気がさらに張り詰める。



「白凪さん…なんかやばくないですか…?」


「ええ…。

 あの男…何を言ったのか知らないけど…完全に霊を怒らせている…!

 狂気化の兆候だわ…まずい!」



あの男が何者なのかわからないけど…

危険信号が出てるわ…。



でも…これはどういうことなの…?

彼女からサインが消えた…。

それだけじゃない!

あの男にサインが見られない…!



この状況下で死なないってこと…?




『では…貴様から……死ねッ!!!!』


霊は彼女の体を操り、男に攻撃した!

右のストレート!


かなりの速度だ!



ドガッ!!



『!!…』



男は彼女の攻撃をかわし、さらには自らの右拳を腹部に当てている。



「遅いな…」



『くく…!

 愚か者めッ…!どんなに攻撃しようが…ダメージを受けるのはこの女だけだ!』




そうだ…。

どんなに殴りつけても霊的な攻撃でなければ、物理的なダメージは全て肉体にいくだけ…!


私も自分の霊力を拳に込めて打ち込んだことがあったっけ…。

アレ全然効果ないのよね…!




『…!?

 な……がはっ…!?』



霊に反応してか、彼女が苦しみ出した。



「くく…馬鹿かお前?

 誰が"普通"に殴ったって?」



『な……なんだお前…何をした…。

 苦しい…』




「白凪さん…なんか様子がおかしくないですか?

 あいつの攻撃を受けて苦しんでますよ?」


「何かしたのか…ここらじゃ、ただ殴りつけたぐらいにしか見えなかったのに…!」



一体どういうこと?



「ゴミをなぶる趣味はないんでね…。

 楽にしてやるよ…ありがたく受けな」



そういうと男は彼女の顔面を片手で掴んだ。

正面からだ。



「が…が…」


「くく…何するか…わかるよな?」




「あいつ…何をする気ですか…?」


「顔面を持ちながら全身を浮かせた…!?

 なんて力なの…!?そんな大柄でもないのに…!」


はっ!!

まさか…!?


優は気づくや否や走り出した。



「あの世で勝手に殺り合え…。

 少なくともこっちでやられるのは迷惑なんでな…死ねッ!!」



男は彼女の後頭部を壁に全力で撃ちつけようと、勢い良く突き出した!



ドガッ!!



「…」


男は確かに全力で、彼女の後頭部を打ち付けた。


コンクリートが割れるほどだ。


だが、直ではなかった。



見ると彼女の頭の後ろにはバッグが挟まっていた。


どうやら咄嗟に優がバッグを投げたのがタイミングよくクッションになったようだ。




「…女…邪魔すんなよ」


「はぁ…はぁッ…

 間に合ったからいいものの…今の…殺す気だったの?」



霊の気配が消えた…。

こいつがやったのは間違いない…。

一体…何者なの?



「ゴミは始末する…。ただそれだけだ」


「う…うう…」



よかった…。

彼女は息があるようね。



ドサッ!


男は女を投げ捨てた。



「興ざめだな…」


男はそう言うと、優を横切って去ろうとした。



「待ちなさい!」



優の叫びに男は足を止めた。



「あなた……一体何者なの?」



「…ふん…。

 "霊王眼"か…こんな雑魚が…ね」



!!


こいつ…!

なんで霊王眼なんて知ってるの!?



「じゃあな…」


男は去ろうとした。


その時だった。




「…なんだ?ガキ」



勇が男の前に立ちはだかった。



「…警察に行くんだ…!」


「おやおや…

 正義のヒーローごっこか?」




「行かせないぞ…!

 お前は女性にあんな乱暴をしたんだ!」



「だ、だめッ!天城君!逃げて!!」



ニヤッ…!


男は不敵に笑った。


そして、何事も無く勇の横を歩いていった。




「お前…でかい口叩くのはいいが、それ相応の力を持ってからにするんだな」



その瞬間天城勇は足元から崩れ落ちた。



「ゆ、勇君!?」



優は急いで駆け寄った。



「殺してはいない…雑魚には興味がないからな」


「くっ…!お前ッ…!!」


優は立ち上がり、男を追おうとした。


パシッ!



「!…天城君」


勇が優の腕を掴んで静止させたようだ。



「僕は…大丈夫…です…。

 追わない…で…」


ガクッ…


勇はそういうと気を失ったようだ。



「俺の攻撃を6発受けて意識保ってられるとはな…。

 ただの雑魚じゃなかったか」


「…彼のためにも…あんたを追う事はしない…。

 ただ…一つ教えなさい…!」



「"何者なの"…か?

 くく…、お前と同じ眼を持つ者…とだけ言っておこう」



!!



「じゃあな…次邪魔をすれば…命はないと思え…」



そういうと男は風のように消えていった。




第9話 完   NEXT SIGN…

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