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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第5話 最悪の敵

SIGN 序章


第5話 最悪の敵



「…」



なんだか…こうして二人きりで帰ってると…

こ、こここここ恋人みたいに…思われるんだろうか…。



む、むう…


べ、別に天城君は嫌いじゃないし…。


な、なんだろこの気持ち…。



「…さん!優さん!?」


「へ!?

 な、なに!?どうしたの!?」



「いえ…何度も話しかけてるんですけど、返答がないので…。

 どうかしました?」


「な、なんでもないわよ!」



うう…調子狂うなぁ!



ザワッ…!



「え…」


「?…どうかしましたか?白凪さん」




この感じ…

間違いない…。



辺りを見回してみる。


すると電信柱の前にぼーっと突っ立っている男性がいる。

身なりを見る限り…大学生くらいの男性だ。



「…白凪…さん?」


「見えるのよ…"サイン"が」



どうする…?

というか、まだ陽も落ちきってない上に、ここは人通り結構あるよ!?



こんなところであの人…死ぬ気でいるの?



もしかして、これから移動をはじめるとか?

…てか、私…関わったらダメって言われてるんだよね…どうする…どうすればいい!?




「あの男性…ですか。

 僕には何も見えないですね…やっぱり」



そうだ…!

今は彼がいるんだ…力はまだ自在に操れないけど…。

いざとなれば二人でかかれば問題ないわ!


いくのよ…!


それにしても連日遭遇なんて…ほんと普通じゃないわよッ…!



優はゆっくりと男性に近づいた。

そのあとを勇がぴったりとくっついていく。



「あ、あのー…」


「?…はい?」



え…?

サインが消えた…?


誤反応…だったの?



「あ、いえ…ごめんなさい、人違いでした」


「?…そう」



そういうと男性は歩き出した。




「白凪さん…どうしたんです?」


「わからない…急にサインが消えた……

 こんな事初めてだ…」



ザワッ…!ザワ…。

印が出ている者の近くにいると感じる、このざらつく感じが消えてない…。


…でもサインが出ていない…。

どういうことなの?


その時だった。



「ええ…!?」


前方を歩くあの男に再びサインが!



「どういうこと…!?」


「また印が出たんですか?」




「ええ…あの男に確かに見えてる…

 やっぱりさっきのは見間違いじゃない」


「出たり消えたりって…

 その印は霊が憑依している人間を殺そうとしている警告なんですよね?」



「ええ…もうすぐにでも"殺ってやる"ってサインよ…。

 あれが出た以上ターゲットは必ず殺される…数時間のうちにね…」



「それが出たり消えたりって…迷ってるってことですか…?」



わからない…。

そんなケース私だって初めてだもの…!



「とにかくあの人をこっそりつけましょう…

 殺る気であれば人気の無いところに必ずいくはず…」



ごめんお祖母ちゃん…やっぱり無視なんて出来ないや…!



二人は男の尾行を開始した。




距離は十分保ちつつ、逃がさない程度の速さで尾行する。



「ばれてないんですかね…?」

「多分ね…」



段々暗くなってきた上に、人通りの少ない方向へむかっている…。


やっぱり…あの人を殺す気ね…ッ!



相手が一人であれば大丈夫…!

今日は彼もいるし、私も札を持ってる。


いけるわ…!



何よりあの人から感じる霊気は昨日の霊より遥かに小さい。


…大丈夫!




尾行を続けて30分ほど経った…その時…。


男は歩みを止めた。



男の最終地点は建物のような屋内ではなく、何もない空き地だ。

雑草が生い茂ってる。




辺りを見回しても人気はない…。


あちらにとっても、こちらにとっても…ここなら問題ないだろう。




その時だった。




「くくく…出ておいでよ。女子高生とその彼氏君」




『!!』


二人は同時に驚いた。



気づかれてた!?

いつから…!?



「……白凪さん…もしかして…僕達…」


「誘い込まれた…みたいだね」



二人はゆっくりと物陰から姿を現した。



それを感じたのか、男もゆっくりと振り返った。


特に威圧感も感じない…憑依されているような感じもあまりない。


正常を保っているように思える。



「またサインが出ていない…。

 今ならまだ話が通じるかもしれないわ!

 ねぇ!とり憑いてる人…ッ!わかる?出てきて欲しいの」



優がそう言うと、辺りがざわつき始める。



ビリッ!ビリッ!!

空気が張り詰める!

物凄い威圧感だ!



「く…!」



一瞬にして男を包む霊気の大きさが膨れ上がる!



こいつ…!?

今まで猫をかぶっていたの…!?

凄いプレッシャーだ…!


霊気の大きさがヤバさを物語っている…。





間違いない。

これは相手に出来るレベルじゃない…!


たとえ天城君と組んでやったところでも恐らく…!



「はは…!愚かな人間…

 ひょっとして、私をなだめようとするつもりだったか?」



ドサッ!



勇が片足を地につけた。



「天城君!?」



「はぁ……はぁ…」


息が絶え絶え…おまけにすごい量の汗をかいている。


無理もないか…これだけの霊気をあてられちゃ…!


!!!!!



優は目を疑った。



「天城……君…」



彼にサインが見える…。


見えなくなったんじゃなくて…ターゲットを選んでた…?


そんなことが…出来るの!?

憑依しない相手なのに…?



「君達…

 それで隠してるつもりかもしれないけど…普通じゃないよね?

 人間にしては、物凄く大きな"気"だ…。

 どちらかといえば、私達よりだよね」



「え!?」



こいつ…一体…!?

普通の霊じゃ…ないの!?



「特に君…

 実に弱々しいけど、内なる霊気はすごいよね?

 "器"が物語ってるよ」


天城勇を指差し、そう言うと次の瞬間だ!


10m…確かにそれだけの距離があったのに…

一瞬にして勇の目の前にいる…!



ガタガタ…

優は震えが止まらなかった。



「くく…君たちあれかなぁ?

 霊感が少しばかりあるから、お払いごっこでもしてた?

 だめだよ?ちょっとした出来心がこうやって死を招く…くく」



二人を見下すかのように不気味な笑みを浮かべながら男は言う。


ダメだ…体が動かない…!



「ちなみに、殺す前に教えてあげる。

 私は人間霊ではない…狐だよ。

 君達を見つけたとき、ご馳走だと思ったよ…。

 だから解りやすいように…誘ってみたんだ…!くくく!まんまと食いついたねぇ!

 くく…どうかな?イメージ通り…ずる賢いだろ?」




動物霊…く…!

なんでこんなところにいるのよ!!



「その顔…察するに、私のような動物霊がなぜこんな所にいるのか…かな?

 それはこの男がいけないんだよ。興味本位で私の住処を荒らすんだもの。

 阿須磨山って知ってるかなぁ?霊山なんだけどねぇ…そこから憑いてきちゃったんだよ…」


自分を指差しながら喋る狐。

徐々に表情が狂気に染まっていく。


ゾゾゾ…!

ゾクッ!


「人間を…喰らいにねッ!!」



ドサッ!


あまりの威圧感に、天城勇はその場に倒れこんだ。


優も倒れそうになるものの、片足を地につける程度で踏みとどまっている。



「これだけ威嚇しても倒れないか…気に入ったよ人間」



余裕の笑みを浮かべる狐。



「く…!」



体は動かないが、目で威嚇する優。



「いい眼だね…。

 決して屈することの無い…光に満ちたいい眼だ。

 その強気な姿勢がいつまでとれるか…実に見ものだね…」



そういうと狐は倒れた勇の首に手を回した。



「!…や、やめろ…!」


「いいね…その顔…

 私が本気でやれば…一瞬でねじ切れる…。

 まぁ…この"入れ物"も壊れるかもだけどね…クク!

 まぁどのみちこの入れ物も用が済んだら喰ってやるんだけどね」



体が動かない…!

助けなきゃなのに…なんで言うこと聞かないのよ!

私の馬鹿…ッ!!




はぁ…はぁ………

助けて…お祖母ちゃん…!




「ははは!!動けないようだね…。

 可哀想に…じゃあお別れだよ…彼氏君…」



狐が首に回した右手に力を入れようとしたその瞬間だった!



"何か"が奴を攻撃した。



その何かはわからなかったが、狐の体は遥か遠方に飛ばされた。



ザッ…



「間に合ったみたいね…」



この声…



「やれやれ!あれほど関わるなといったのに…このボケ孫め!!」



ああ…!



お姉ちゃん…お祖母ちゃん!!



「大丈夫?…優」


「う、うん……

 私…私……」



優は亜子に抱きついて泣き出した。


「よしよし…わかったから…」


「あとでおしおき覚悟するんじゃぞ!優!」



「…ぐす…うん!」


優は倒れた勇の肩を担ぎ抱えて後ろに下がった。




「お祖母ちゃん…どう?」


「この感じ…狐様じゃなぁ…。

 まぁ若造のようじゃし…大丈夫じゃろ…」




ビリッ!

ビリッ!!


空気が再び張り詰める!



「ひひ…若造だぁ…?

 人間風情が……調子に乗るなよ…?」



狐が立ち上がった。



「やりあう前に交渉といきませぬか…?狐様…」


「交渉…だと?」



茜は交渉を持ちかけた。



「怒りを鎮めて…眠れる地に戻ってはくださらぬか?

 わたしらに出来ることであればする…どうかのう?

 考えては下さらぬか?」



「嫌だね…私は人間を喰らう…何が何でもね…くく」



「やれやれ…では仕方が無い」


「お祖母ちゃん…器である憑依されているあの男性…どうします?

 あれでしたら"剥がし"ますけど」



「構わんよ…。どこぞの山から連れてきてしまった責任はあやつにもある。

 多少痛めつけねばまた同じ事をするじゃろて…」



「ですね」




「ごちゃごちゃ喋ってるんじゃねぇってんだよ!!人間共ッ!!

 何処までも狐様を馬鹿にしおって!!」



逆上する狐…今にも飛び掛らんばかりにいきり立っている。

威圧感も今まで以上ではあるが、対峙する茜と亜子は平然としている。




「う、うう……。

 あれ…?………」



勇が目を覚ました。



「気がついた?…お姉ちゃんとお祖母ちゃんが来てくれたの!」


「僕……気を失ったんですか…?」



勇は俯いた。

その表情は悔しさがにじみ出ていたかに見えた。



「仕方ないよ…。あの霊…動物霊だった……しかも狐…。

 私達じゃどうしようもない相手だわ…。

 まさかこんな街中にいるなんて思いもよらなかった…」



私……こんなことばかりだ。

自信過剰の割に、結局何も出来ない…。



力が欲しい…!



―――

――



「ふむ…。

 いきり立ってはいるものの…やはり狐様じゃのぅ…。

 冷静を保っておる。襲ってこん」


「ええ…。何か企てているんでしょう…。

 化かし合いでは分が悪いかもしれません…」



狐はこちらを見据えたまま動かないでいる。

それはこちらも同じ…。


何しろ動物霊の動きの早さときたら人間霊の非ではない。


一瞬でも目を離せば、それが死に直結するかもしれない。



それにしても何も無い時間が続く。


いや、見えないところですでに戦いは始まっているのかもしれない。

いわゆる頭脳戦…相手がどう動いたら自身はどう動くか…。

様々な可能性を考えて2手、3手先を行く…そんな戦いが行われているのかもしれない。




「亜子や…基本的に手助けは無用…。後ろの二人に細心の注意を払っておいてくれ…」


「わかりました…。

 でも、危なくなったと思ったら二人よりお祖母ちゃんを助けます」



「!?…私など老いぼれ…助けんでええわ!」


「そうはいきませんよ…優にはお祖母ちゃんがまだまだ必要です。

 これからバシバシ鍛えてもらわなくちゃいけないし…

 何より…おいしいカレーが食べれなくなってしまいます」


ニコッと笑う亜子。



「ふ…まったく…お主ら姉妹ときたら…」



「大丈夫です。

 あの二人だってやる時はやるでしょう。

 私の妹であり…お母さんの娘であり…なによりお祖母ちゃんの孫なんですから。

 いつまでも守るだけでは成長しませんわ…」



「じゃな…」



フッ!!

狐が動いた!



「来るぞ!!亜子!!」


「はいッ!!」




第5話 完   NEXT SIGN…

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