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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第39話 夏休み編/修行18

SIGN 序章


第39話 夏休み編/修行18



優と由良葉によるタッグ戦術。

傀儡ちゃんを左右から攻めるようだ。



「ハッ!」



由良葉は右手の狐火を傀儡ちゃんに向かって放った。

距離はまだある…が、かなりの速度で飛んでいく炎弾だ。



「っつぁ!」



炎弾をよけるでもなく、自ら霊気の弾を放ち相殺した。

反対側から優が迫ってきているのがわかったからだ。


体捌きでかわしていれば、恐らくわずかな隙が出来ていただろう。



「はぁッ!」



隙はつけなかったが、距離を縮める時間は稼げたようだ。

優は間合いをつめ、頭部狙いの上段蹴りを放つ。


これを片手で余裕のガード。

優にもガードされることがわかっていたのか、はたまた両手に霊気を集中してるため操作出来なかったのか…

今の蹴りは霊撃ではなかった。



傀儡ちゃんはすぐさまカウンターの拳を放つ!

優はそれを両手でガードした。


相当の威力だったのか、優はよろめいた。



「ふむ…己の霊力量に任せて、防御を捨てたか…常に+の霊気で勝機を狙うか」



多少の攻撃ならきっと大丈夫…!

今は攻撃に重点を置かなきゃ!


守っているだけでは勝ちはないわ!



ヒュッ!



「ぬ!?」



傀儡ちゃんの左手を司の鞭が縛り付けた。



「今よッ!」


司の掛け声に合わせて由良葉が飛び出した。



「もう一発ッ!!」


今度は傀儡ちゃんの懐に入って殴りつけるように左手の狐火をぶつけた!


今ので2発…由良葉に今と同等の威力を放てる回数はあと2回…。



「やるのぉ!見事なコンビネーションじゃ!」



由良葉は連続で畳み掛けることをせず、一旦引いた。


今の一撃でガードを貫いてダメージを与えた感触は確かにあった。

しかし、その攻撃であとの2発を与えるよりも、


ガードできない状況下で攻撃したほうがよりダメージを与えることが出来る。

そう考え、あえてそこでの連打はやめたのだ。



「ふん!!」


「!…きゃっ!!」



傀儡ちゃんは思い切り左手を振った。

鞭で縛られていようがお構いなしに、力で振りほどこうとしたのだ。


その結果、司ごと振り回し、結果振りほどくことに成功した。


だが、その一瞬に隙が出来たのを優は見逃さなかった。



「シッ!!」



ドガンッ!!


優の全力の右ストレートが腹部に被弾!

見事な焦げ痕が付く!


「はぁぁぁッ!!!」



ドカドカドカッ!!


優は由良葉と違い、手数で勝負に出た。

由良葉は霊力の絶対量が多いものの、その配分が下手で無駄に霊力を消耗してしまう点がある。

優にはそれが無い分、乱打も可能というわけだ。


"最小限で最大限の効果を"


まだ完璧ではないにしろ、その要領は掴んでいる。



「やりおるな…一撃一撃が確実なダメージになっておる…!

 これは油断しすぎたかの」



優の乱打に翻弄される傀儡ちゃん。

だが、明らかに何かを狙っている…優もそれは感じていた。


一瞬の隙が命取り…!



「…」


ブンッ!


攻撃を喰らう中、傀儡ちゃんの両拳が輝きだした。



「!」


優はすぐさま攻撃の手を止め、後ろに下がった。



あそこまで霊気がハッキリ輝いているということは…すなわちそれだけ強力な霊気が集まっているということ。

いくら優の霊力量が多いといっても、守備なしにあれを喰らうのは、余りにも無謀…。


警戒してしかるべき。



ダッ!


優が引いたその瞬間に傀儡ちゃんは一回転して走り出した。


向かう先に居たのは由良葉だった。


傀儡ちゃんは前方に向けて巨大な霊気弾を放った!

由良葉の体の大きさと同等なほどに巨大な霊気!


しかも速い!



「!」



由良葉も咄嗟のことに、対応が効かないでいた。


"避けなければ"


頭の中ではわかっていても、体がそれに対応してくれない。



ドッガーーーンッ!!


由良葉に直撃!

恐らくガードも間に合わなかった!



「由良葉君ッーーー!!」



さらに、傀儡ちゃんは由良葉の状態を確認せずに再び一回転し駆け出した。



「来る!」


優はすぐさま構えた。

いかなる攻撃にもすぐに対応出来る様に!



「…」


先ほど同様走りながら左手を突き出した。

と同時にあの巨大霊気弾を放った!


優は予測して構えていたため、すぐさまこれを横に飛んでかわした!



「危なかった…」



!…まさか……!?



「そんな…」



ドッガーーーン!!


なんと…実の狙いは優ではなく…直線状にいた司のほうだった。

油断していた司にかわすことはもちろん、防御すら出来なかった。



「ふふふ…司ちゃんには悪いが、眠ってもらうよ…。

 残るは優…主だけじゃ」



その瞬間だった!


ドッガーーン!!


突如として起こる衝撃音!



「な、なんじゃ!?」


何かが傀儡ちゃんに攻撃したのだ。


優ではない。

傀儡ちゃんの背後からの攻撃…。



「へへ…!やっとこ無防備のとこに渾身の一撃を打ち込めたね…!」


神楽由良葉の一撃だった。


なんと、あの巨大霊気弾を喰らってなお、立ち上がったのだ。


正確にはあの攻撃を直撃した訳ではなかったのだ。

偶然か否か…由良葉は咄嗟に霊気を高めていた両手を突き出し、わずかながらに直撃を避け、

さらに衝撃波でその軽い体が吹き飛ばしたのだ。


これによりダメージは最小限に抑えられた。



「なんと…まぁ…」



この不意打ちでわずかながらに隙が生じた。

一瞬の隙だ。


だがそれを見逃さなかったのは優だった。

司をやられた怒り…司のことを忘れ、かわしてしまった自分への怒り。


それを全力で傀儡ちゃんにぶつけた!



「うああああああッ!!!」



ドガッ!



「…」


それほど重い衝撃音ではない。

しかしながら、それは強力な一打だ。


炎を帯びた拳。


傀儡ちゃんの腹部をチリチリと円状に燃やし焦げ目が浮かぶ…そして!



バシュッ!!


腹部にはくっきりと拳の型の穴が開いた。

周りには焦げ目を残し、プスプスと煙を吐いている。



「はぁ……はぁ………」


「ふむ…」



ドサッ!



地面に伏したのは…



優ではなく…傀儡ちゃんだった。



「はぁ……はぁ…………やった…の…?」



優も今の一打で全ての霊力を使い果たしたようだ。

同時に体力も尽きたようで、そのまま崩れるようにしゃがみこんだ。


まさに精も魂も尽き果ててしまったようだ。



「優…いや、皆ようやったな…。

 まさか負けるとは思わなかったわ」


「へへ……でも私も今ので力尽きちゃった」



「たいした奴等だよ。お前ら…本当に倒しちまうとはな…」



茜が最初から本気で、もっと嫌らしく戦っていたならば、勝敗は別だったであろう。

だが、それでもこの結果は素晴しいものだった。




3時間後―――

―――



「う…うう…」


司が目を覚ましたようだ。

これで全員が目を覚ましたことになる。


「目が覚めた?司」


「優…?…そうだ!結果は!?」



勢い良く起き上がる司。


「落ち着きなさいよ司。ちゃんと勝ったわよ!」


「ほ、ほんと!?」



「うん!皆で得た勝利よ!

 私達やったのよ!」



皆本当に嬉しそうに笑っていた。

この一ヶ月、正直楽なことはなかった。


それでも強くなると信じて努力を続けてきた。


その結果がこうして勝利の形として現れたのは喜ばしいものだった。



「最後の修行がこういう結果になったのはアイツらにとっては自信に繋がるし、よかったんじゃねぇかな」


「お主は結果が出なかったようじゃがな」



皆が喜ぶ中、和馬と茜がこっそりと話をしていた。



「るせぇやい!…あんな"化け物"ハナから勝てる気なんてしなかったっての」


「傀儡ちゃん弐号…ありゃ、お主と私が組んでも恐らく敵わんじゃろうな」



「はぁ…それがわかってて、なんで"銀"に霊力込めさせたんだよ…」


「仕方なかろう。ワシでは力不足じゃし…

 だとするとお主より強いのはもう銀しかおるまい」



由良葉の体内に共存する白狐の霊・銀。

精霊に近い力を持ち、由良葉の体を依り代としている。


銀の人格が表面に出ると、由良葉の体にも変化が現れる。

外見だけじゃなく、霊気値も大幅に上がる。


この状態で傀儡ちゃん弐号に霊力を込めたのだ。



和馬は皆の知らないところで何戦か戦った。

しかし結果は手も足も出ない…まさに桁外れの実力だった。



「とりあえず…楽しいひと夏だったぜ」


「…一ヶ月か…早かったの…。

 向こうに戻ってもちゃんと修行に励むんじゃぞ?」



「わぁってるよ!又何かあればいつでも連絡くれよ。

 飛んでいくからよ…。

 俺等奥里はあんた等に大きな借りが出来ちまったしな」


「ふむ。その時はあてにさせてもらうさね」



「お祖母ちゃんー!何話してるの!?

 もう山を降りようよー!」



優たちはすっかり立てるまでに回復して、すでに下山準備に入っていた。



「さて、じゃあ下りるかの」


「あぁ」



―――

――



『修行ありがとうございました』



一同深々と頭を下げた。



「よいよい。それよりも、よく一月もの間修行に耐え、頑張ったの。

 主等は確実に強くなっておる。誇ってよいぞ。

 だが、慢心はするでないぞ…まだまだ未熟であることは忘れぬようにの」


『はい!』



皆、それぞれ家に帰っていった。



こうして一ヶ月にも及ぶ修行の日々は幕を閉じることになった。


最終的に勝利という最高の終わり方には皆満足していた。


私も…強くなった実感を持てた。

きっとこれで戦える…!



っていっても、最近はサインを見ることもなかったんだけどね。

これからも…もしかしたら無いかもしれない。


でも、本当はないならないでそれが一番なのよね。


"死を告げる刻印"なんて…。



でも、見かけたら…その時は今度こそ私の力で助けてみせる!



「それが能力を得た…私の運命だものね」



さぁてと!

夏休みも明後日で終わりかぁ。


残りの二日は満喫しよっと!



明日は商店街のお祭りだし、目一杯楽しもうっと!



第39話 完   NEXT SIGN…

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