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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第35話 夏休み編/修行14

SIGN 序章


第35話 夏休み編/修行14



「はぁ…はぁ……」



司は渾身の一撃を放ったせいか、すでに満身創痍…立っているのがやっとだった。

傀儡ちゃんは司の攻撃を受けたまま立ち上がってこないようだ。



「司…すまない……俺がいながら、皆を…グッ…」



片桐は足首を捻ったのか、右足を引きずっている。


今意識を保っているのは白凪優、夕見司、神楽由良葉、片桐亮、そしてシロのみ。

須藤、瀬那、岡島、日下部、椎名、天城の6人は傀儡ちゃんの前に奇しくも敗れ去った。



「先輩…大丈夫ですか?」


「あ、ああ…ちょっとひねった程度だ…それよりも…

 今の一撃で倒せたのか…?」



「…!………どうやら…今までは遊んでただけ…みたいですわね」



司は倒れる傀儡ちゃんを見て冷や汗を流しながら言った。

どうやら、傀儡ちゃんを纏う霊気を見てそれを察知したのだろう。



「…」



司の言葉どおり、傀儡ちゃんは何事も無かったように立ち上がった。




「くっ!来るか!?」


「先輩…私達に出来ることはもはや動きを封じることぐらいですわ…」



司の霊力はすでにつきていた。

霊気も力強さを失い、体力的にもすでに動き回れる状態じゃなかった。



「司…お前は休んでろ!奴を羽交い絞めにするなら俺だけで出来る」


「でも…!」



「二人とも下がって!」



優と由良葉が前に出てきた。



「優…それに由良葉君…」


「選手交代よ!私はもう回復した。

 霊力も全然まだいける!あとは私達に任せて」


「オイラ、銀に変身するのは禁止されてるけど、霊撃は出来るし…やっちゃうもんね!」



「司…どうやら意地を張っていても仕方なさそうだ…。

 俺達はあのフワモコに回復してもらったほうが…今はベストだ」


「…ですわね…。

 その代わり…ちゃんと倒すのよ!優!」



「もちのロンよ!…任せな」



司は片桐に肩を貸して後方に下がっていった。



「さて…由良葉君……さっきの作戦…期待していいのよね?」


「うん!…ただ時間が掛かるから…その間一人で頑張ってね…お姉ちゃん。

 さっきからずっとチャージしてるんだけど、オイラ自身"コレ"あんま使ったこと無くて難しいんだ」



時間稼ぎか…。

ごめん、私アイツぶっ倒すつもりでやるからね…!



「OK!…んじゃ万が一の時は頼んだよ!」



優は傀儡ちゃんに向かって突進した。


霊気を最大限に高める!



「はぁぁぁッ!」



ボッ!!


優の両手に淡い紫色の炎が包み込んだ。



「な、なんだあれ!?」


「片桐先輩にも見えるのね…

 あれは優の狐火…!緒斗の森でシロちゃんに使った技ね…!」



「ほう…!優め防御を完全に捨てたか」



今の私じゃ瞬時に高めた霊気の性質を変化させれない。

常に−の霊気を纏っていれば、恐らく攻撃を受けてもダメージは少量!

でもそれじゃこちらの攻撃力も0…これでは勝ち目はない!


だったら、攻撃は全て避ける!

それを前提に全ての霊気を両手の狐火に集め…この最大級の攻撃力をぶつけ続ければ!

勝機はある!



多分だけど…。

正直、この狐火がどれほどの威力なのか…自分自身わからないからね…!



「はぁッ!!」


傀儡ちゃん目掛けて放った、優の勢いをつけた右ストレートは空を切った!



流石に正面…そう簡単に受けてはくれないか!


傀儡ちゃんのカウンターの蹴りが跳んでくる!


それを一瞬で見切って、身をかがめ避ける優。



蛙飛びの要領でアッパーを放つものの、これも避けられてしまった。

先ほどより更に動きがいい!


人形とは思えぬ動きに翻弄される優。



一旦距離を置き、呼吸を整える。



こちらは無防備…。

私は霊力が人並みはずれて高いから、一撃で持ってかれることはないと思うけど…。

霊撃力だけじゃなくて、物理的なダメージもヤバイのよね…。


むしろそっちでダウンさせられる可能性もあるから…やっぱ攻撃を食らったらまずい!



「…」


ドッ!


傀儡ちゃんは霊気の巨大な弾を放ってきた!



「な…!」



ドッガーーーン!!



なんとか間一髪でかわしたものの、態勢を崩してしまった。



「あっぶな…!

 そうだった…アレがあるんだ…目に見えるからなんとか、かわせるけど…

 あれ見えなかったらめちゃくちゃ危険ね…」



ザッ!ザッ!!



「しまっ!」


すでに態勢を崩していた優に迫っていた傀儡ちゃん。

勢いよく優の腹を蹴り上げた!



「ぐはっ…!!!」



宙に舞う優。

だが容赦なく追い討ちをかける!


今度は舞い上がった優を両拳で叩き付けた!



「ッ……!!!」



声にならない激痛が腹部、そして背中に走る!


今にも意識を失いそうだ!




「優ーーッ!!」


「おい!由良葉!!今助けにいけるのはお前しかいないんだぞ!」


「わかってるよ!…でもまだ…まだ力がッ…!」





「ふふ…優や…お主はこの程度かのう」



「く…なめん…じゃ…ない………わよッ…!」


優はなんとかその場に立ち上がった。


傀儡ちゃんにとって、今はトドメをさすには十分すぎるチャンスだった。

だが、茜はあえてその選択をやめた。



「はぁ…はぁ……」



傀儡ちゃんは手を広げ大の字をしてみせる。


まるで"撃って来い"といわんばかりだ。



プチッ!



「ふーん……どうなってもしんないんだから」



優はその態度に完全に頭に血が上ってしまった。

霊気を両手ではなく、右一点に集中しはじめた。


さきほどの狐火がより一層力強く燃え盛る。



「はぁぁぁああッ!!!喰らえぇえええッ!!!!」



優の全力の右ストレート!

それが傀儡ちゃんの丁度中央部分に撃ち放たれた!!


インパクトの瞬間!

物凄い衝撃と光が一瞬その場を包んだ!


傀儡ちゃんはその巨体を数メートルにわたって吹き飛んだ。




「ふむ…狐火だけでは…ないな。体外の狐火・そして体内の肉体強化…

 外部・内部の同時強化か…。

 怒りに我を忘れてそんな器用なことまでやるとはのぅ。

 センスがあるのかないのか…わからんやっちゃ」



「はぁ…はぁ………くそッ…」


「…」



傀儡ちゃんは立ち上がった。

腹部に燃えたと思われる焦げ痕…そして貫通痕まである。



「じゃあ…何度でも喰らわせてやるわよッ!!」


「無理じゃな。

 確かに優の霊力はまだまだ余裕がある。

 じゃがあれだけ強力な一撃を放った直後に、同量の霊気を練り上げ、高めるのは時間が掛かる。

 悪いがその時間はくれてやれん…終わりじゃ」



傀儡ちゃんが優に攻撃をしようとした瞬間、何かがソレを阻止するかのように

優と傀儡ちゃんの間を飛翔した。



「!…由良葉君!」


「おまたせお姉ちゃん!

 ゆっくり休んでていいよ!」



全身を白い狐火の炎が包み込んでいるような…そんな見たことのない霊気を放っている。



「すごい…!」


「狐火モード…いっくよおおおッ!!」



由良葉は軽快に駆け出した。


と同時に両手に作った"炎弾"を投げ出した!

これは先ほど優と傀儡ちゃんの間を飛んでいったものに他ならない。



ドガッ!ドガッ!!


弾は傀儡ちゃんに見事に命中!

右足に左肩に焦げ痕が残る!



「まだまだ行くよ!!」



由良葉の炎弾にタメはなかった。

次から次へと放っては作り、放っては作り…。


一定の距離を保ちつつ、動き回り、攻撃を放つ!



「すごい…!」



傀儡ちゃんも黙ってはいない。

由良葉の攻撃をかわしつつ、その動きを追っている。


だがすばしっこさでは由良葉が一枚上手だ。


追いつけるようでなかなか追いつけない。


だが、このまま倒せない状況は明らかにまずい。

なぜなら、由良葉は動けば動くほど体力を消耗する。


しかし、傀儡ちゃんは人形…疲れなどない!


ちなみにダメージだが…実のところあまり効いてはいなかった。

由良葉は霊力こそタフだが、霊気がさほど強くはない。


それゆえ手数は多くても、一撃一撃に決定的な威力が無いのだ。



優はそれを察知したのか、自身の気を再び高め始めた。




「はぁっ…はっ………くそっ!全然倒せない!なんで…!?」



「遠距離攻撃の弱点はガードが容易な点にある。

 早さも今ひとつじゃからな。着弾する前に霊気を−に切り替えれば、ほぼダメージはない。

 威力あっての使える手札じゃな…残念ながらその速さ、その威力では、何にもならん」



由良葉の動きが落ちてきた。


と、思った矢先に突進してきた傀儡ちゃんに捕まってしまった!



「しまった!」


「…」



ドッ!!


近距離からの霊気砲を喰らった由良葉!



「…うぅ…」



「ほう…すぐさまに性質を−に変えて攻撃を防いだか。

 由良葉は霊気の性質操作が得意なのかもしれんな…じゃが」



ドッ!!


容赦のない、近距離からの2発目。

無論避ける術なく、直撃してしまった。



「…」


「終わりじゃな」



由良葉は気を失ってしまった。



「お祖母ちゃん…ラスト一発よ!」


「む!?」



優は先ほどと同様の狐火を携え、現れた。



「これで終われぇぇぇええッ!!!」



優の全力の狐火を纏った右ストレートが今度は傀儡ちゃんの顔面を貫いた。


勢い良く吹き飛ぶ傀儡ちゃん。



「はぁ…はぁ……ッ…もうこれで…スッカラカンよ…こっちは」



「見事じゃな……じゃが…」



「う…そ……」



傀儡ちゃんは立ち上がった。



「まだまだ爪が甘いのぅ」



―――

――



……



あれ?



「気がついた…?優」


「司…あれ?…ここ…私の部屋…」



ってことは…そっか…



「全滅ですわ…あなたが倒れて、私と片桐先輩とシロで挑んでは見たものの…

 結果は惨敗。シロもあのナリじゃ蹴散らされて戦力にならなかった…」


「そっか…。全滅しちゃったんだね…。

 それからどうなったの?皆倒れちゃったでしょ?」



「うん。でも午後6時くらいには各自目を覚ましてね。

 あなただけ疲労困憊で起きなくて、皆で運んできたってわけ」

 

「そっか…悪かったわね…迷惑かけました」



「お礼なら運んでくれた天城君に言うのね!

 まぁもうこんな時間だし、明日にすることね」


「…ってもう夜9時!?そっかぁ……天城君が…」



私の力…全然通用しなかったのかな…。



第35話 完   NEXT SIGN…

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