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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第34話 夏休み編/修行13

SIGN 序章


第34話 夏休み編/修行13



直立不動のワラ人形傀儡ちゃん壱号。

頭にあたる部分に顔を描いた紙が張られている。



傀儡ちゃんとの距離は5mほど。

片桐亮、須藤彰、瀬那稔の3人を前列に、

その後ろに白凪優、夕見司、天城勇の3人がつける。

そして後列に岡島大樹、日下部新二、椎名一、神楽由良葉…そしてついでにシロが構えている。



「それでは始めるかの…」


茜は霊気を集中し始めた。

すると、傀儡ちゃんがググッと動きを見せた。


その瞬間緊張が走る。


前衛の3人は喧嘩慣れしているものの、霊術戦となると恐らく初めて。

殻を破ったばかりの三人では霊撃力も何もありはしないだろう。


皆で考えた作戦は、3人がかりで押さえ込んだ所を"攻"の修行に入っている後方の

優、勇、司の三名が攻撃するという算段だ。



「…」


スッ!


一瞬の出来事だった。

傀儡ちゃんとの距離は確かにあったはずが、一瞬に間合いを詰められた。


前衛が反応した頃には、すでに傀儡ちゃんは攻撃態勢に入っていた。



「須藤さんッ!!」


勇の呼びかけも空しく、須藤は傀儡ちゃんの右拳の一撃を顔面に食らった。



「須藤ッ!てめぇッ!」


瀬那が顔面狙いの跳び蹴りを繰り出すも、空振りに終わる。


尋常ではない速さ。

否…そうではなかった。


優だけがそれに気づいていた。



「!…やば…」



攻撃後の瀬那は隙だらけだった。

そこに間髪居れず傀儡ちゃんの攻撃が迫る!


またしても顔面狙いの拳打が襲い掛かる!



ガシッ!!



「くッ…!」


「白凪さん…!?」



間一髪で優が割って入って攻撃を受け止めたのだ。



「皆しっかりして!

 これはこの人形の術によるものよ…。

 でしょ!?お祖母ちゃん!」


「ふふ…やるのう。

 その通り…強い霊には相手の意識を奪う術があるのじゃ。

 この術中にはまると意識を奪われ、あたかも瞬間的に移動しているような錯覚を起こす。

 防ぐにはある程度の霊気をもって防ぐほかない」



やはり…。

私の目にはあの人形の動きが大したものでないように映った。

にも拘らず前方の三人はまるで反応することもなく黙って間合いに入られていた。



というか…今攻撃をガードしてみたけど…さほどの威力じゃないわね。


優は吹き飛ばされた須藤の方を見た。

何故か立ち上がってきていない。



「須藤先輩!大丈夫なの!?」


「…」


優の呼び声に返事がない。


いかに不意打ちとはいえ、打たれ強さに定評のある須藤彰が一撃で沈むのは解せなかった。



「攻撃力は最小限に抑えておいておる。

 "物理的"にはじゃがな…ふふふ」


「それって…」



ビュッ!

傀儡ちゃんが優に追い討ちをかける!



「ほれ!喋ってる場合じゃなかろう!

 もう意識は奪わんでおいてやるぞ!」



ドガッ!!


「きゃあっ!!」


優はガード越しに吹き飛ばされた!



何よ…!

これっ!さっきの一撃より全然早いし…重いッ!



「ふふふ!意識を奪わぬ変わりに少々戦闘力をアップさせてみた。

 ちなみに須藤彰が一撃の元に葬られた理由…わかるかの?」


「…霊撃…ッ!」



「正解!」



これが霊気の篭った一撃なの…?

霊力が減少…いや奪われる感覚がした…。



「優ならわかるな?霊力が底をつき…さらなる負荷がかかればどうなるか…」



以前の狐戦で霊力を使い果たした私は3日も寝たきりになった…。

てことは…須藤先輩も霊力を奪われて…!?



「安心しなさい…彼には一応手加減はしたからな…まぁ数時間は目を覚まさんじゃろうがな」



「みんな!下手にあの人形の攻撃を受けないで!

 霊撃の防御じゃなきゃ意味が無いわ!ガードをしても多分無駄よ!」



戦いながら瞬時に霊気の性質を変化させる…。

そんな高等技術…まだ会得してないわよ…!?



「優…守ることばかり考えていてはダメみたいですわね」


「司…。

 そうね…攻めに転じなきゃどちらにしても勝機はないわ」



「ハァッ!!」


「せいやぁっ!!」



優と司が話してる間に前衛の片桐と瀬那が傀儡ちゃんに攻撃をしかける。

流石喧嘩慣れしているのか、上手いこと攻撃がヒットしている。


しかし相手は人形。


急所などない上、痛みも恐怖も感じない。


つまり一撃に耐えれば…!



「…」


「やばッ!!」



ドガッ!!


瀬那は傀儡ちゃんの右アッパーを顎に食らってしまった。


瞬時に狙いを察知し、自ら首を後ろに下げ、打点をずらしたのは賞賛に値するものだが、

霊撃という意味ではかすってしまえばアウトだ。


瀬那もその場で倒れてしまった。



「んのッ!!」



片桐が怒りの鉄拳を傀儡の顔面に食らわせた。

相当の威力がこもっていたのか、人形は態勢を崩し、その場に倒れ込んだ。



「おお!…片桐君…今の攻撃……マグレとはいえ、霊気を纏った…紛れも無い霊撃じゃ」



「優今がチャンスよ!」


「ええ!」



優と司が走り出した!



「はぁッ!!」


先に攻撃したのは司だ。

自慢の武器・鞭に霊力を込め打ち込んだのだ。


続いて優は得意の右ストレートを倒れ込む傀儡ちゃんのドテッ腹に打ち込んだ。


もちろん拳は霊気を集中させた霊撃だ。



「…」


表情がないからダメージがあるのかわかりづらッ!



優は馬乗り状態でここぞとばかりに霊撃を打ち込み続けた。



「すげぇ…効いてるのか…!?」


「片桐先輩!一旦態勢を整えましょう!倒れた二人を端っこへ移動させますわ!」



司の指示の元、倒れた二人を邪魔にならない場所へ移動させる仲間達。




「はぁッ…はぁッ……」


ピクリともしない…。

私の攻撃が予想以上に効いてる…?


それとも何か狙って…


優は一瞬祖母、茜の顔を確認してしまった。



ニヤリ…



「しまっ…」



一瞬の隙が命取り…。


優は一瞬目をそらしたその隙を傀儡ちゃんに狙われた。

顔面に一撃。


強烈な拳打を浴びて吹き飛んだ。



「かはッ…」



なに…え…空!?


優は一瞬何が起きたのかわからなかった。

気づいたら目前には青い空が広がっていたのだ。


"ああ、私は殴り飛ばされたんだ"


そう気づいた瞬間にはすでに次の攻撃が襲い掛かろうとしていた。



倒れる優に追い討ちをかけるように傀儡ちゃんが駆け出したのだ。



「優ッ!!」


司の鞭が傀儡ちゃんの腕に絡まり、すんでのところで動きを止めた!


同時に攻撃を仕掛けている者がいた。



「ハァッ!!!」


天城勇だ。


霊気を纏った木刀を全力で振り抜いた!



バシッ!!

っと、傀儡ちゃんの顔の紙がひん曲がった。



「ふむ…すばらしい一撃じゃな。

 じゃが天城君の弱点は霊力のなさ…。

 今の一撃でほとんど消費したのう」



痛みがない以上、攻撃に耐えてしまえば、インターバルなしにカウンターが放てる。


右手は司の鞭が巻きつき、使えないものの、左手は生きている。

すぐさまその腕を降りぬき勇の顔面を貫いた!



「ぐはっ…!」


「あ…天城……く…ん」


宙を舞う勇。

そのまま受身も取れぬまま地面に激突した。


「霊気がいかに強くても、攻撃を防ぐ術を知らねば一撃でこの様じゃな」




強い…!



「…俺は行くぞ…!」


「大樹…お、俺も行くよ!」



岡島大樹、日下部新二の両名は倒されていく仲間を見て、

恐怖と怒りの感情がせめぎあっていた。


目の前で殴られ、吹っ飛ばされ、気を失っていく。

こんな光景を見て、喧嘩慣れしてない二人は恐怖を覚えない理由がなかった。


しかし、同時に仲間がやられる事に対する怒りも込みあがっていた。

そしてついにその感情が恐怖を乗り越えた。



「うわぁあああッ!!」


「てやああ!!」



二人は自分で何も出来ない事はわかっていた。

それでも戦いに参加した以上、何もせず指をくわえて見ているだけの自分には耐えれなかった。



「部長ッ!!俺等が捕まえておきます!!白凪さんを見てやってください!」


「まかせろぁああッ!!」




二人は傀儡ちゃんに飛び掛り、押し倒した!



「大樹君!新二君!」



二人の気持ちを察したのか、司は鞭を解いて、優に駆け寄った。



「司…私はいいから…!二人を!」


「おだまりなさいッ…!二人は覚悟の上よ……シロちゃん!」



司はシロを呼びつけた。


「なんじゃ?」


「優を治してあげて!」



「ふむ…まぁわらわには今それくらいしか出来んからの」


シロは治癒術を得意としているため、この戦いには治癒役として参加している。



「ぎゃッ!!」


「ぐああああッ…!!」



岡島大樹と日下部新二の叫び声に振り返る司。

無残にも倒されてしまったようだ。



「く…!よくもッ!!」



司は立ち上がったばかりの傀儡ちゃん目掛けて跳び膝蹴りを繰り出した!

見事にヒットしたが、残念ながら霊力はその部位に集中はしてなかった。

それゆえダメージはない。



「はぁッ!!」


先ほどの優同様馬乗り状態で拳打を打ち続ける司。


ある程度打ち込んだあと、司はすぐにどいて距離をとった。

そして中距離からの鞭攻撃にシフトし、連打を浴びせる!



「はっ!はっ!!」



「…」


だがしかし、それを物ともせず立ち上がる傀儡ちゃん。



「なに…よ!」



傀儡ちゃんは距離をとったまま、司に向けて右手を突き出した。


警戒する司。



「はっ…!司ぁ!!逃げてぇええッ!!」



「え?」



優がそう叫ぶ前に、彼は飛び出していた。



ドッガーーーン!!


突如として響き渡る轟音と砂煙。


何かが司目掛けて飛ばされたのだ。



「けほ…けほ……はっ!!」



砂煙の中目にしたのは椎名一の仁王立ちだった。



「…」


ドサッ!

そのまま前のめりに倒れる一。


どうやら、何かしらの危機を察知し、司の前に飛び出したようだ。



「一…」


司はすぐさま駆け寄って、一の状態を確認する。

全身に渡って擦り傷がある…それに気を失っているようだ。



「くっ…!よくも…!」


「…」


煙で司を確認できないのか、立ち尽くす傀儡ちゃん。




「よくも一を…皆を…ッ!うわあああああッ!!」



司は砂煙の中から飛び出し全力で傀儡ちゃんを攻撃した。

不意をつかれた傀儡ちゃんにかわすことは出来ず、そのまま一撃を腹部に受け、吹っ飛んだ。


今までにない強烈な一撃だった。


司の右手を纏う霊気…いや全身に、今までに無い輝きを放っている。

限界を超えた霊気…!


しかし、それは幻のようにすぐに消え去った。



「はぁっ…はぁ……お願い…今ので終わって…」




第34話 完   NEXT SIGN…

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