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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第33話 夏休み編/修行12

SIGN 序章


第33話 夏休み編/修行12



8月3日(月)―――

PM9:31――



天城勇、神楽由良葉の"視る"ための修行に付き合う和馬、勇、司の三名。

コツを教えてもらってから毎日のように続けている夜の修行。


司はコツを知って初日に、優は4日目に習得した。



「…く…やはり今日もダメみたいですね…」


「オイラも…見えないや」



"焦るな"…そう言葉をかけてあげたい所だが、果たして自分が同じ立場で、

それを言われて気休めになるのかどうか…。


むしろそれが、かえって焦らせてしまう結果になるかもしれない。

そう思って優は言葉をかけるのをやめた。



「とりあえず今日はもう遅いし、休もうか由良葉君」


「そうだね。出来ない時はもう出来ないって思うしかないし!

 焦ってもしょうがないしね!」



あの子が自然と言ってくれたな。

ありがとう由良葉君。



「優?何処にいくの?部屋に戻らないの?」


「うん。ちょっとお祖母ちゃんに話があるんだ。

 先に休んでて」



そういって優は司と別れ、茜の部屋へ向かった。



―――

――


茜の私室―――


「お祖母ちゃん、入ってもいい?」


「ん?どうしたんじゃ?入りなさい」



優は襖を開け茜の部屋へ入った。


「実はお祖母ちゃんに見せたいモノがあるんだ」



そういって優は右手を突き出した。


ズッ!


右手に霊気が集中していく。



「はぁ…ッ!」


「おぉ…!」



優の右手を淡い紫色の炎が包み込んでいる。



「最初はなかなか自分の意思で出せなかったんだけど、

 こっそり練習して出せるようになったんだぁ!」


「そうかそうか。狐火を使えるまでに成長しておったか」



あれ?あんまり驚いてない。



「まるで私がこれを使えるようになるのを知ってたみたいな反応ね」


「うむ。わかっておったさ。

 なんせそれを見越してお主に狐様を倒すように仕向けたんだからの」



!!



「どういう…こと?」


「ふむ…この際じゃから教えておこうかの…

 霊王眼の特性について…」



霊王眼の特性…?



「うむ。霊王眼は単に"霊による死の刻印"を見るだけの能力だけにあらず…

 霊王眼には本来5つの能力を持っておるのじゃ」



「5つの能力…!?」



初めて聞いた…。

霊王眼は"霊による死"を報せるだけの能力じゃないの…?



「1つ…霊による死の刻印を視る能力…

 2つ…霊の能力を吸収し…自分のものにする能力…

 3つ…霊を封印する霊気の刃を操る能力…

 4つ…他人の霊力を回復させる能力…

 最後に筋力・霊力・霊気・動体視力に至るまで、全ての能力を一時的だが飛躍的に上昇させる能力。

 この5つがあるのじゃ」


「もしかして私の狐火は2つ目の"霊の能力を吸収し、自分のものにする"って能力で

 習得した能力ってこと!?」



「うむ。修行や成長に伴い、この5つの能力は全て使えるようになる…いずれはな。

 だが全てを自在に使えるわけではない」


「どういうこと?」



「私ら白凪家のように日本各地に霊と深い関わりを持つ一族…

 私達の住む東部・久木の白凪家。

 西部・飛鳥の緋土家。中央部・暁の草馬家。

 北部・奥里の九鬼家。南部・天玖の相良家。

 これは知っておるの?」


「うん…。私達同様、霊王眼を持ってるんだよね」



私はあの男を思い出していた。

霊王眼を持つ者…天城君を一瞬にして倒した…。


あの冷酷で悲しい眼をした男…。



「うむ。5家はその昔は一つの一族じゃったそうじゃ。

 一族を束ねる長…霊王と呼ばれる男は先に述べた能力を自在に使っていたそうじゃ。

 だが、大妖魔"闇星"との戦で相打ちとなり…死して、それ以降の子孫は力の一部に特化し、

 他の能力は3割程度しか発揮できなかったという」


「それが現在でも引き継がれてるってこと…?」



でもこの5つのうち…白凪家はどれに特化してるのかしら?



「うむ。ちなみに私達白凪家の特化能力は、先ほど説明した1つ目…

 霊による死の刻印を視る能力じゃ。

 つまり他の4つの能力は動頑張っても、特化する他の能力の3割程度しか発揮できん」


「そうなんだ…でも、霊による死のサインの能力って

 割合とかそういうもので測れる能力なのかしら?」



見えるか見えないか…それだけな気がするけど。



「優はまだ知らぬだけで、この霊による死の刻印はまだまだ能力発展があるのじゃ。

 それについてはまたいずれ説明してやろう。

 ちなみに先ほど言った他4つの能力も特化していれば、それぞれ発展系の能力を持つ」



そうだったんだ…見えるだけじゃなく…他に発展するんだ…。

一体どんな能力に…。



「ついでだから5家のどれがどの能力に特化しているか教えてやろう。

 西部・飛鳥の緋土家…これは5つ目の"身体能力、霊能力を大幅に上昇させる能力"に特化しておる。

 中央部・暁の草馬家…これは4つ目の"他人の霊力を回復させる能力"に特化しておる。

 北部・奥里の九鬼家…これは3つ目の"霊を封印する霊気の刃を操る能力"に特化しておる。

 南部・天玖の相良家…これは2つ目の"霊の能力を吸収し…自分のものにする能力"に特化しておる」



あの男は…もしかしたら緋土家の人間だったのかもしれない…。

あの身体能力…多分間違いない…。



「優の狐火に関してはこれでわかったじゃろ?」


「なんでこんな能力が身についたかはわかったけど…。

 これって知らずに使ってたけどさ、+に霊気を上昇して出してるんだよね?」



茜はニヤリと笑った。



「それは違うぞ優…。

 狐火は+でも−でも放出の意思と最低限必要霊気まで高めれば出せる。

 つまり攻撃用だけではなく防御用の狐火にも使えるというわけじゃ。

 これは全ての霊術にいえる事じゃ。良く覚えておきなさい」



そうなんだ…。

じゃあ−方向に高めても"放出の意思"があれば…出せるってことなんだ。



「さ、もう夜も遅い。

 話はまた明日すればよかろう」


「そうだね。夜遅くごめんねお祖母ちゃん」



優はお礼を言って茜の部屋をあとにした。


自分の能力について少し知れたことはとても勉強になった。



「っし!明日からも頑張るぞ!」



―――

――


そんな決意から1週間が経過した。



8月10日(月)―――



体力面から見て、正直劇的な変化は見られなくなった。

毎日ほぼ同じペースでメニューがこなされていく。


いわゆる倦怠期なのか…。


だが、そんな中でも皆真面目に修行を続けていた。

それぞれが思いを抱いて取り組んでいる。


人間覚悟を決め、努力を始めればそう簡単に諦めたりしないものなんだな。



ちなみに霊術の修行の方では変化が現れた。


Aグループではつい先日と一昨日に天城君と由良葉君が霊気を見れるようになった。


私と司は"攻"の修行の肉体強化と霊気を集中し攻撃部位に纏わせる術を習い、

今は霊気を飛ばす修行をしている。


これがなかなか難しく、司も苦労しているようだ。

霊気を切り離すという行為がこれほどまでに難しいとは思わなかった。


石動和馬は相変わらず、私達に口出すばっかで特に何もしてないようだ。



Bグループも瀬那先輩と片桐先輩と岡島先輩が殻を破ったようで、今霊気を見る修行をしているそうだ。

日下部先輩と須藤先輩、椎名一はまだ殻が破れていないそうだが、お祖母ちゃんいわく、あと少しだそうだ。


見て解る変化があるのは霊気が見えた人たちだろう。

他はまだ成長に実感がわからないようだ。


まぁ…無理はないかもしれない。



―――

――



今日の修行も終わり今から帰るところだ。

いつもなら特に言葉はないが、今日は皆の顔を見て一言言った。



「お主等も修行を開始した頃より大分たくましく成長したの。

 そろそろランクを上げようと思う」


「ええ!?…ランクって…これ以上何しようっていうのよ…」



「オーバーワークは肉体的にも精神的にも辛いじゃろう。

 だから、メニューは変えぬ。ただ毎週土曜日にちょっとしたお楽しみをしてもらう」



お、お楽しみ!?


嫌な予感しかしないんだけど…。



「まぁ皆察するが如し…楽しむのは私だけじゃ。ひょっひょ!」


「な、何をすんだよ…バァさん…」



「ふふ…実戦じゃよ」



実戦…?


霊と戦うってこと…?



「悪霊狩りでもよいのじゃが…もうそこら辺の奴らじゃ優や司ちゃんじゃ物足りないと思うからの。

 ちぃと強い奴とやってもらう」


「ちぃと強い奴って…誰よ」



そんな奴がいるの…?



「私じゃ」



『へ?』



一同唖然とした。



「私自身ではない…が、私の霊力全てをつぎ込んで作った傀儡(くぐつ)人形…

 その名も傀儡ちゃん壱号じゃ!」



まんまじゃん…。



「まぁお披露目は土曜日まで待つんじゃな。

 楽しみにまっておれ」



た、楽しくない…。



「あ…一応両グループ混合でやってもらうからの。

 和馬は別じゃがな」



全員掛かりってことか…。

でもなんで和馬さんだけ別なんだろ?



「なんで俺は別なんだよ」


「正直和馬一人でも倒せてしまうかもしれんからな…外したのじゃ。

 じゃが怠けられると思うでないぞ?

 主の相手は傀儡ちゃん弐号が相手じゃからな」



ニヤリと笑うお祖母ちゃん。

この笑いはきっと相当危険なんだろうな…。



「詳しくは土曜日に話すが…一つ先に言っておく。

 一丸となって…互いを支えあいながら戦うこと…」


「うん…」



茜は真面目な表情になった。



「下手をすれば怪我では済まん…最悪死ぬぞ…。

 くれぐれも仲たがいはせんことじゃ…」



…あの顔…マジね…。



優たちを久々に緊張感が包んだ。



―――

――



それから月日はあっという間に経ち…。

約束の土曜日がやってきた。


先週に比べて変化があったのはBチームの殻を破れていなかった、

日下部新二、須藤彰が完全に開花したぐらい。



他のメンバーに特別な変化は見られなかった。



今は午後2時…場所は朝霞山頂上。



「よし…ではお楽しみを始めようか」



片桐先輩と須藤先輩が担いできたこのワラ人形。


普通のサイズじゃない。

人間サイズのワラ人形…。


間接が人間みたく別れているようで、良く出来ている。

顔の部分には紙が張られ、顔が描いてある。


なんとも間のぬけた顔だ…。

お祖母ちゃんが描いたのだろうか…。


傀儡ちゃん壱号も傀儡ちゃん弐号もあの微妙な笑顔が逆に怖い気もする。



「和馬はあとでやるでの。

 まずはこの子等を遊ばせてやってくれ」


「けっ!俺は人形遊びなんかする気なんかねぇってのに…」



「それじゃぁ…皆よいな?

 修行の成果特と試すがよい!」



こうして傀儡ちゃんとの死闘が幕を開けた。



第33話 完   NEXT SIGN…

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