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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第3話 白凪家の人々

SIGN 序章


第3話 白凪家の人々



パトカーが容疑者の男と彼女達の亡骸を運び、雨の降る闇に消えていく。




そう…。

あれからすぐに警察へ連絡し…ものの15分で到着。

男の逮捕、死体の回収。


逮捕時、男はブツブツと何かをつぶやくだけで、完全に精神が壊れていたかに見えた。



「んで…君達はなんでこんな所へ?」


「えっと…それはですね……」



倉庫内で若い刑事に尋問される天城勇と白凪優。

勇はなんと言ったらいいかわからずで、笑顔でごまかしているようだ。


優のほうはというと、まだ先ほどのことから立ち直れないでいるようだ。

俯いたまま黙っている。



「君達ね!ちゃんと説明してくれなきゃわかんないだろ!?」


「まぁまぁ…鈴木。もういいから、お前先ぃ署に戻ってろ」



「えぇ!?シンさん!でも…」



白髪交じりの老練の刑事が現れ、若い刑事に指示をする。



「でもも、ヘチマもねぇ!言うとおりにしろ!」


「は、はい!」


そう言うと急いで外に出て行った。




「…ったく…。

 んでぇ…君は白凪優…さん…。

 ほぉ…もしかして雪さんの娘さんかね?」



!…何故私の名を…それよりも…



「…母を…知ってるんですか?」



「あぁしっとるよ。

 まぁあれだ…話は後々ってことで…いつまでもここには居たくないだろう?外に出ようや。

 それと…一応調書とか書かないといけないし、悪いけど署まで来てもらえるかな?

 もちろん今日じゃなくていい。明日にでもそこの彼氏と一緒に来てくれゃ。

 聖ヶ丘5丁目の朝霞警察署だから」


「か、彼氏だなんて、僕そんな…ははは」


ポカンッ!

優は拳骨で勇の頭を思い切り殴った。


「彼氏じゃないですからッ!」


「…殴らなくても」



はしゃぐからよ!

もぉ!



「あはは!やっと笑顔になったな!

 雪さんに良く似てる…」


「刑事さんはお母さんをよく知ってるんですね…

 どうしてですか…?」



そう尋ねるとシン刑事は頭をボリボリとかきながら倉庫の出口へ向かいつつ応えた。



「とりあえず、家に送ろう。

 話は向かいながらでもできるしなぁ」



―――

――



そういって三人はパトカーに乗った。



「彼氏のほうは家は何処なんだぃ?」


「えーっと」


「彼氏じゃないですからッ!

 それと天城君も家によってもらうんで…うちにお願いします」



「ええ!?いいんですか!?」



く…予想通りはしゃぎおって…この天然男めっ!



「色々と話したいことあるし…」



君の怪我もどうにかしないとだしね。

私に気を使って言わないでいるのかしれないけど…あちこち傷だらけじゃない…。


素直に言いなさいよ…馬鹿!



「わくわく!」


「一応親御さんには連絡入れたほうがいいんじゃないかぁ?

 もう21時回ってるからなぁ」



ええ!?

もうそんな時間なの!?



雨も強いし…。


なんだかとんでもない一日だったな…。



「親にはさっきメールしときましたから…大丈夫です!」


優は笑顔で携帯を見せた。




パトカーはゆっくりと白凪神社を目指して走り始める。



―――

――



「いやはや…それにしても思い出すよ!

 君のお母さん…雪さんと、お父さんの蓮次さんもなぁ、こうして乗せたことがあるんだよ」



えええええ!?



「お、お母さんとお父さん…パトカーに乗るだなんて…。

 いったい何をやらかしたのよ…。前科持ちだったんだ…なんかショック…」


「いやいや!そうじゃなくてだね。

 君達のように事件に巻き込まれて、乗せたって意味だよ」



な、なんだ…。



「年も君達と同じ頃だったかなぁ…」



「そうなんだぁ…親子そろって……なんかすみません」



「いやいや…。

 …………今回の件も…霊がらみの事件なんだろ?」



え!?




「はは。その顔を見るとやっぱりそうか」


「刑事さん…なんで…」



シン刑事は驚く優の顔を見てニヤリと笑った。



「どうしてかって?

 それは、もうこういうのには慣れっこだからさ。

 ワシに霊感なんぞはないが、さっきの現場の死体や…あの犯人の男を見れば察しはつく。

 そして決め手は君!」



「慣れっこって…」



どういうことなの!?



「君のご両親も昔何度も殺人事件を解決したり、我々警察に秘密裏に協力してくれてたんだよ。

 こういった一般常識の通じない不可解な事件なんかにな」



!…もしや…あれのことか…。



「…ゴーストバスターズ…」


「あはは!そうそう!

 彼らはそういって活動してたっけなぁ…懐かしい!」



私はどうみてもダサいネーミングセンスだと思って育ってきましたが…。



「君達も2代目ゴーストバスターズ目指して活動してるんだろ?」


「違います!断じて!

 私はそんなダサいことはしません!

 それに彼は無関係です」



うぅ〜っと少しなみだ目でこちらを見る天城勇。

子供かっ!



「まぁまぁ!とにもかくにも…

 あまり無茶だけはしないでくれな。ご両親は…まだ見つかってはいないんだろう?」




…。


優は俯いてしまった。



「っと…余計なことだったかね…」


「…いえ。大丈夫です。

 それに両親は死んでません…絶対に」



「…(優さん…)」



それからしばらく、無言の時間が流れた。

何か気まずい空気が流れ、外の雨音だけがやたら耳についた。



そうしてるうちに白凪神社へと到着した。



「っと…ここだな。お疲れさん!二人とも」


「刑事さんありがとうございました!」



「ワシは八坂(やさか) (しん)

 こいつはワシの携帯番号とメールアドレスだ。

 何かあればワシに言ってくれ。

 署のモンはああいう事件には全く慣れてない…というか理解も出来ないと思うからな」



二人は名刺を受け取った。



まぁそうだろう。

この人が異例だといえる。


普通の人に言ったところで理解できない話だからね。



「じゃあな!明日、忘れずに署に来てくれな。

 なぁに…形式だけのもんだから心配しなくていい」



そう言うとシン刑事は行ってしまった。



「なんだかすごいね…白凪さん」


「何が?…というか濡れるわ。

 話は中でしましょ?」



優は門をくぐり、駆け足で玄関先へ向かった。

後を追う様に勇も急ぐ。



「いつみても…なんかいいですね…白凪神社」



そういうものかしら…。

私は住んでるから…そういう風に感じたことないなぁ。



ガラガラッ!


「ただいまぁ!…さ、入って」


「お、お邪魔します」



ドタドタドタ!


祖母・茜が走ってきた。


かと思ったらポカンと頭を小突かれる優。



「いっ………たぁぁいッ!!何するのさ!」


「何するじゃない!

 連絡もよこさんと!こんな夜更けまで!

 しかも男連れとはどういうことじゃ!

 この不良孫め!」


「な…!

 私にだって理由があるんだからッ!

 何よ頭ごなしに!」



二人の言い合いになって口を挟めない勇。


「えぇーっと…」


『なに!?』



二人してハモらなくても…そう思う勇であった。




―――

――



ようやく落ち着き、3人は客間で腰を落ち着かせる。



「なるほど…そういう事があったのかぇ」


茜は勇の傷を治療しながら言った。



「す、すごい…!痛みが消えた…」


「もう大丈夫じゃろ?次は優…お主を見ようか」



勇と入れ替わりに優が祖母の前に座った。



「お祖母ちゃんの治癒術はすごいでしょ!

 切り傷、打ち身、その他骨折とかも完治はしないまでも回復の促進とか、ほんとすごいの!」



自慢げに笑顔で語る優。



「これッ!

 自慢することではないわっ!

 第一無関係の人間に使ってよいものでもないというに…

 今回は優を救ってくれた事に対する礼!特別じゃ!」


「まったくケチケチして!そんだけの力なんだもん、もっとオープンにすればいいのに」




「はぁ……。

 よいか?優…何度も言うが、ワシらの力は一般的には異端じゃ…。

 いかに便利で有能であれ…普通の人間からすればワシらは化け物じゃ」



「…」



「人はの…人知を超えた物事を畏怖し…、存在を否定し…拒絶する。

 色々な人間に知られれば、ワシらは化け物扱いされ…迫害の対象となる…」


「わかってる…わかってるわよ」




そうだった…。

この人…天城勇…。


この人のリアクションが全然引かないっていうか…拒絶をしないから…。

こちら側の人間のように接してしまっていた。



人は最初だけ有難がり…次第に妬みに変わり……そして最後には非難の対象にする。

悲しいかな、それが人の性…。


忘れてはいけないことだ…。



「僕にも…なんとなくその気持ちがわかります…。

 祖父も同じように剣術の世界から迫害を受けていました…。

 お前の剣はペテンだとかなんとか…。

 ちょっと人より秀でて…出来ないことをやってのけるものだから…。

 でもそれは血の滲む様な努力の先に手にした力で…

 そういう事を出来ない人間に祖父が馬鹿にされるのが…たまらなく嫌でした」


「天城君…」



「だから僕は…祖父と同じ道を行こうと思ってます。

 人からどんなにさげすまれようが、馬鹿にされようが…

 自分の道を貫きます!祖父と同じように。

 死に際に祖父はとても清清しい顔をしていました。

 僕はそんな祖父を尊敬してるし…それに…何より剣が好きだから」



満面の笑みを浮かべてそう語る勇。



「お主、なかなかいい男であるな。見直したぞ」


「あ、ありがとうございます!

 僕!天城勇と申します!よろしくお願いします!」



治療が終わった優は立ち上がって勇を見た。



「お祖母ちゃん、ちょっと見て欲しいの」


「見る?」




優は勇に木刀を構えるように言った。




「こ、こんな客間で振るんですか!?」


「振らなくてもいいの。

 ただ、あの精神統一モードになってほしいの」



「は、はぁ…。

 よくわかりませんが…わかりました」



勇は木刀を構えて目を閉じ…精神統一を始めた。



ザワッ…!


…ッ…!

来た…ッ!



「な…!?」



祖母、茜も驚きの表情を見せる。



「ね…すごい霊気なの…!この人」


茜と優には天城勇の放つ、巨大な霊気を感じていた。



タタタタ…!


何処からか足音が近づいてきた。

と、同時にガラッとふすまが開けられた!



「なに!?どうしたの!?この霊気!?」



現れたのは優の姉。

長女・白凪亜子。



「あ、亜子姉ちゃん」


「…優のお友達…?

 びっくりするじゃない!

 急に感じたことのない、すごい霊気が家の中からするんだもん」



「あはは…ごめんなさい!天城君!もういいわよ!」



そういうとゆっくり目を開ける、同時に霊気が静まっていく。



「こんなんでよかったんですかね…って…あれ!?

 あ、あわわ!えーっと…お姉さま?…ですか?」


「あ、…はい。

 姉の亜子と言います。はじめまして」



「うわぁぁっ!お姉さまも美人だ!

 は、はじめまして!ぼ、僕!天城勇っていいます!」



こ、こいつ…。

なんだろ、なんか今ものすごく殴りたくなった。



「あっは!美人だなんて…上手いこというわね!

 それに妹と同じ名前なんだ!すごい偶然ね!」


「漢字は違うんですけどね!僕のは勇ましいの勇です!

 いあいあ!ホントのことですよ!自分嘘がつけませんからっ!」



姉と勇が和気藹々と話している最中、祖母と優は話しを始めた。




「驚いたのぉ…霊気の強さで言えばお前よりも上だよ…優」


「そう…だと思う。

 彼、今朝も今と同じように精神統一してたんだけど…その時はまるで何も感じなかったのに…

 恐らくさっきの戦いで私の霊力に反応して覚醒したんだと思うけど…」



「それにしてもじゃ…

 内にこれだけの霊気を秘めていたとなると…血かのう?

 霊術師の血筋の者かもしれんぞ?」





「ねぇ、勇君晩御飯はまだなんでしょ?

 うちで食べていったら?」


っていつの間にそんな話になってるのよ!



「え…でも…」



チラッと優を見る勇。



「なんで私の顔を見るのよ!

 お祖母ちゃん別に構わないよね?」



「あぁ。ワシと亜子はもう食べたから…お主等の分をこさえてくるとするかね」


「あ!お祖母ちゃん!私も少しだけ!」



亜子が手を上げて言った。



「そう言うと思ったわ。3人分用意してくる。

 まっとれい」




そう言うと茜は客間を跡にした。





「そうだ!優…あなたまた危ない事したの?

 その制服!ボロボロじゃない!」


「あぁ…うん。ちょっとね…あは」



「あは!じゃない!

 みっともないから着替えてらっしゃい!」


「むぅ!亜子ねぇはいっつも口うるさいったらありゃしない!

 お祖母ちゃんそっくりね!」



「なんですってぇ!」


スタコラと優は部屋を出て行った。



「まったく…いつまでも子供なんだから」


「はは…!いいですね姉妹って」



勇が羨ましそうに亜子を見た。



「勇君は兄弟は?」


「いえ…僕は一人っ子です。

 だから兄弟とか姉妹とか…なんかいいなって」



「そっか…」



ドタドタ!



「おまたぁ!」


優が戻ってきた。


普通に白いTシャツに体操着のズボンだ。



「…あんたねぇ…

 彼がいるのに、よくそんな恰好でいれるわね…」


「か、彼ってなによ!

 天城君はただのクラスメイト!

 それ以上でも以下でもないわ!」



うぅ…と涙目になる天城勇。



「おぉぉよしよし…

 こらッ!勇君をいじめるんじゃない!」


「な…!私は何も!」



この天然男…きぃぃいッ!!



「こりゃ!お主等客間でドタバタするでない!」



茜が戻ってきた。

いい匂いが部屋を包み込む。



「白凪家特製カレーじゃ!」



「うわぁぁ!やったぁ!今日カレーなんだ!」


「はは!すごいや!うずらの卵が入ってる!

 (こうやって見ると、優さんも普通の女の子なんだなって思うな…。さっきの優さんとは…ううん

 どっちも僕の好きな彼女だよ…うん)」



今日という日は本当に色んなことがあったけど…。


でもこうして4人で楽しい時間を味わえるのは生きてるからなんだって…すごく実感できた。



『いっただきまあーーーす!』




第3話 完   NEXT SIGN…

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