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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第29話 夏休み編/修行8

SIGN 序章


第29話 夏休み編/修行8



朝霞山頂上に向かったBチームと茜は聖岩のある頂上まで到着した。


「さて…お主等はまだ殻を破りきってはおらん。

 まずはそれを完全に破ることじゃな…」


「殻を破るって…具体的に何をすればいいんスか?」



瀬那稔が質問を投げかけた。



「うむ。これがまた口で説明するには難しい。

 まぁ…ここでずっと座禅かの」


「な…ちょっと待ってくれよ婆さん…

 こんな所で夕方まで座禅しろってのかよ!?」


片桐亮がつっかかった。

気持ちは他の三名も同じだったようだ。

便乗して食いつく岡島、日下部、瀬那。



「お、落ち着けい!

 よいか…殻を完全に破るにはより多く霊気に触れる事じゃ。

 だからこの霊山で特に霊気の集まるこの場所で座禅しておれば

 いつかは殻が完全に破れる」


「いつかっていつだよ…!」


「殻が破れたかどうかなんてどうやって確認すればいいんスか!」


「ずっと座禅はキツイっす…」


「俺、まったく殻が破れてないんですけど…それでもちゃんとできるんですか!?」



一度に4人いっぺんに喋りだした。



「えぇい!おだまりッ!!」



茜の一喝で4人は黙った。



『…』


「いつかはわからぬ。

 個人差もある以上なんとも言えん。

 殻が破れたかどうかは私が見れば解る…自身を包む霊気の流れでな。

 日下部君に関しては皆より時間は掛かるかもしれんが…

 まぁこればかりは仕方あるまい。

 以上!何か質問は!?」


「ざ、座禅の件は…」


「ん!?」



茜は岡島を睨みつけた。



「い、いえ…何でもないっす…」


「よろしい。じゃあ始めよ!」



4人は嫌々そうに座禅を組んだ。



―――

――



PM5:00―――


全員は言いつけ通り、朝霞山の入り口に集合した。


皆、何かを掴んだ顔ではなく…沈んだ暗い顔をしている。



「その顔じゃと…皆成果は得られんかったようじゃな」



あれから散々山の中を歩いてみたけど…結局何の成果もなかった。


"見える"…これを念頭に気合を入れてみたり、目を瞑ってみたり…

色々試してはみたけど、一向に見える気配がなかった。



「お祖母ちゃん!なんかこう…もっとコツみたいなのないの!?」


「コツか…ふむ。

 もうちょいやってみて出来ねば教えようかの」



ひょっひょっと…まるで出来ない優たちを弄ぶように笑う茜。



「お祖母ちゃんこの通り性格悪いから…期待しても無駄ね…。

 瀬那先輩たちはどうだったの?」


「まったく成果なしッスよ…。

 つうか…もう足が限界ッス…座禅ってあんなシンドイんスね…」


Bチームは全員限界を察っするには十分な表情をしている。


ま、まだ私達のほうが楽そうね…。



「とりあえず戻るかの。

 皆相当へばっとるみたいじゃし」



た、確かに。


何だかんだで厳しいかも。

これを一ヶ月…か。


でも強くなれるなら…やれるわ!



帰りは皆歩きで帰った。

体力バカの天城君も流石に疲れたようだ。


顔色が曇っている。



「大丈夫…?顔色悪いわよ?」


「あ…いえ。大丈夫ですよ」



「なんかあった?」


「いえ。初めての分野で…ちょっと疲れてしまって……。

 難しいですよね…なかなかイメージ出来ないです…」



「皆一緒よ。あなただけじゃないわ」


「ですね…はい!お家に帰ったら宿題ですね!」



ゲッ…そうだった。



「もう!なんでそんな事思い出すのよ!」


「ご、ごめんなさい」



―――

――


10人は帰宅し…着替えを持って門前に集合した。



「んじゃ行くわよ!」



修行終わりに銭湯に行くことにしたのだ。

流石にこの大人数では…とのことだ。


まぁ一応私も年頃の女の子だし…ね。



お祖母ちゃんと亜子ねぇ以外を引きつれ、近くの銭湯へ向かった。



「銭湯なんて久々だわ」


「ですわね…昔はお母さんたちとよく来てたわよね…」



優は切ない表情をした。



「…」


「あ!……ごめんなさい。私…」



「ううん。なんでもないわ!

 ほらっ!さっさといきましょ!」



優と司は女風呂へ、他のメンバーは当然男風呂へ向かった。



「んじゃコインランドリーっと…」



皆は着ている服をコインランドリーへぶち込んだ。

洗濯はここで済ませるようだ。



「にしても…なんか恥ずかしいな…」


「片桐照れてんのか?」



瀬那がニヤニヤと照れる片桐を見て笑っている。



「るせぇよっ…!べ、別にそんなんじゃない…」


「瀬那先輩が帽子とったとこ初めてみました…。

 普通ですね」



「ちょ…天城君…キミ何を想像してたんだい」


「い、いえ特には…」



和気藹々と風呂場へ向かう。



すると女子風呂の方から優達の声がする。



『…無駄に大きいわね!』


『あぁらごめんなさい。とても同い年には思えないですわね』




「お、おい!テメェら!向こうで刺激的な会話してるぞ!」



"このオッサンは…"


和馬を見てその他全員がそう思った瞬間だった。



「お前ら大好きなくせに何大人ぶってやがる!

 あれか!ムッツリスケベか!ったく!

 由良葉!オメェはこんなつまんねぇ男になっちゃいかんぞ!」


「和馬兄みたいにもなりたくないよ…。

 そんなんだから葵ちゃんに愛想つかされるんだよ!」



「ま、またお前はそんな事を…」


「オッサ…和馬さんの恋人ッスか?

 スミに置けないっすねぇ!このこの!」


瀬那がここぞとばかりにチャカす。



「そ、そんなんじゃねぇよ…」



『うわぁ何これ…柔らかい…』


『そ、そんなに揉んじゃ…だめ…あ』



「!!」


これには男全員が食いついた。


この見えない中の怪しい会話がなんとも想像力を膨らませる。

特に思春期の男供には刺激が強いようだ。



『もう!そんなにしたらシロが可哀想でしょ!』


『だって…すごく柔らかいんだもん!』



全員が一瞬にしてしらけてしまった。

ありきたりな展開だが、彼らにとってはとても残念だったようだ。


しろは流石に大衆の面前でしゃべるのは禁止。

どうやらウォッシュタオル代わりに持ち込んでいるようだ。



7人は無言のまま体を荒い、湯船に浸かった。



「…男って…空しい生き物だな…」



全員静かに頷いた。




―――

――



「ふわぁーいいお風呂だったぁ!」


「ですわね」



優たちが上がった頃には全員が休憩所で待っていた。



「オセェよ!ったく女って奴は無駄に風呂が長いぜ!」


「っるさいわねぇ!和馬さん…あなたのスケベな会話……

 こっちまでダダ聞こえでしたから」



和馬は青ざめながら司の方を見た。


"フンッ!"


と、そっぽをむかれてしまう始末だ。



「そ…そんな……」



「哀れなオッサンッスね…」


「俺はああいう大人には絶対にならんぞ…絶対にな…」



あっという間の1時間。

でもこれが本当に癒しになる。


さっきまで死にそうな表情を浮かべていた皆だが、まるで生き返ったかのように明るい表情を見せている。



「さ!帰って晩御飯ね!んでもって…宿題…か…」



それを考えるとなんだかちょっぴり悲しくなるわね。



「まぁまぁ。優さん…そんなあからさまに落ち込まないでくださいよ!

 皆で宿題楽しいじゃないですか!それに一応学生の本分ですし…ね!」



このポジティブ天然男め!


はぁ…楽天家っていいわね…気楽で。



9人はそのまま銭湯をあとにし帰宅した。



―――

――



「ただいまぁあ!」


「おかえりぃ!晩御飯出来てるわよ!

 今日は亜子特製コロッケ!その他諸々よ!」


『おお!』


テンションが上がる皆。



「ガキだなガキ!飯の一つでよくもまぁそんなテンション上がるぜ…」


「あら。ご飯は大切ですよ?和馬さん」



亜子がニコっと微笑みかける。


ポッ…


和馬は顔を赤らめた。



「亜子さん…あなたは俺の心のオアシスです」


「えぇ?」



今度は亜子ねぇをナンパしよる…。

ダメな大人の代名詞だけじゃなくて…ダメな"男"も加えなくちゃね…。



そんなこんなで楽しい食卓を囲み、その後皆で宿題を片付けた。



―――

――



PM9:16―――



「さて…お主等、明日も早いしそろそろ休みなさい」


『はーい』



ふぅ…何だかんだでやっぱ疲れるな…。

今日はぐっすり寝れそうだ…。



男子達は御堂へ、優と司は優の部屋へ向かった。



―――

――


御堂―――



「さてと…ガキ…やるぞ」


「え…うん…」



何やら内緒話をする和馬と由良葉。

他の皆は疲れからか、寝静まっているようだ。



「視えるための修行のコツ…おしえてやんよ」



二人はこっそりと御堂をあとにして裏庭に移動した。



「まぁここでいいだろ。

 別に御堂の中でもよかったんだが喋って連中を起こすのも可哀想だしな」


「和馬兄…昼間も言ってたけど…コツってほんとにあるの?」



「ある!俺もそれで見えるようになった」


「じゃあ何で皆に教えてあげないの!?

 和馬兄は口悪いし、女ったらしだしスケベだけど、いい人だと思ってたのに!」



「おいおい!…あのばぁさんも恐らくは知ってるんだ。

 あえて言わずにいるようだから黙ってるだけだっての!」


「じゃあなんでオイラには教えるのさ!

 なんか卑怯じゃん!」



「むぅ…お前なぁ…せっかく教えてやるって言ってんのに!

 素直に聞かないならいいぜ!もう教えん!」


「いいもんね!お姉ちゃん達に教えないならオイラもいい!ふんだ!

 和馬兄見損なったよ!」



完全に怒ってしまった由良葉。



「わ、わぁったよ!俺が悪かったよ!

 明日!明日あいつらにも教えるよ…流石にこの時間に起こすのは悪いだろ!?」


「ほんとに教える?

 まぁ教えなかったらオイラが教えるけど」



「ああ!いいよ!じゃあ大人しく聞くんだぞ?」


「うん!」



「1番のコツは自然体だ…何も力まず自然と一体になるんだ。

 頭も空っぽにする…"見える"って思い込むのも大事だが、それ以上に何も考えない…

 自然と一体化するイメージのほうが俄然いい」


「そうなんだ…自然と一体化…」



「そしてポイントはもう一つある…それが"夜"ってことだ」


「…夜!?」



月を指差して得意げに喋る和馬。



「夜は昼と何が違う?」


「んー…太陽の代わりに月が出てる」



「ま、まぁそれもそうだが…俺が今月を指差したのは特に意味はねぇからよ。

 ほら…もっと根本的に違うのがあんだろ!」


「…んー…」



由良葉は腕組をして考え始めた。



「ガキのクセに想像力がない奴だな!」


「だって眠いんだもん…お子様は寝てる時間だよ!!」



「ぎゃ、逆ギレすんなよ…えぇい!もういいや!

 明るさだよ!夜は暗いだろ!」


「そんなの当たり前じゃん!」



"このガキ"…そう思う和馬だった。



「とにかくポイントは夜だ。

 この闇がもってこいなのよ…霊気ってのは輝くからな」


「そっか!…確かに昼間より確認がしやすいかも!」



「だろ!ひひ!これで見えるようになるのも時間の問題よ!」


「うん!ありがとう和馬兄!」



お礼を言って由良葉は御堂の方へ駆け出した。



「お、おい!何処行くんだよ!修行はやんねぇのか!?」


「やんないよ!眠いし!

 てか抜け駆けはやだっていったでしょ!んじゃおやすみ!」



由良葉は行ってしまった。



「なんか…納得いかねぇ…」



第29話 完   NEXT SIGN…

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