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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第28話 夏休み編/修行7

SIGN 序章


第28話 夏休み編/修行7



PM2:15―――


午前中の修行を終え、昼食のカレーを食べて休憩していた所へ茜がやってきた。



「さて…遅れたが午後からの霊術の修行に入るかの」



いよいよだ。

私個人としては、こっちの修行を重点的にしたかった。


いくら霊による死を知れた所で、それを止める力がなければなんの意味もない…。

私は強くなるんだ!



「修行に入る前に言っておく…。

 私が教えることはあくまで基本的なことじゃ…。

 たかだかひと月では学ぶにも時間が足りないからの」



確かに当然といえば当然か…。

そんなに簡単に全てを出来るようになれるはずもないわよね…。



「だが基礎をしっかり学んでおけば、応用は利くようになる。

 今後継続して修行をするにしても、基礎がしっかりしておけば、進歩も早い」


「それで…基礎って…何をやるの?お祖母ちゃん」



「慌てるでない優。

 最低限…霊と渡り合うために重要な4点…

 "視""攻""守""治"」


「シコウシュチ…?」



()…すなわち視覚じゃ…。

 霊はもちろんじゃが、自身の霊気も見えなければ話にならん」


「霊感がある人は…自然に見えるものじゃないんですか?」



「天城君。見えるかの?」



茜が勇に向けて拳を差し出した。



「?…い、いえ?」


「私には自身の霊気の流れが見えておる」


「それって…もしかして昨日、由良葉君が変身したときの…

 あの光みたいなもの!?」



「うむ。ではこれでどうじゃ?」


茜は更に気合を込めた。


ビリッ!ビリッ!!

空気が張り詰める。



「ああ!!」



茜の拳から光がほとばしっている。


「見えたじゃろ?」


「うん!」


「僕も見えました…すごい」



どうやら日下部新二以外は全員見えているようだ。



「つまり、こうして強力な霊気であれば感じることが出来るということじゃ。

 優や司ちゃん、天城君は恐らく普通のレベルなら霊視できるじゃろ。

 じゃが岡島君、片桐君…君らは恐らく弱い霊は感じれないし、

 強い霊でもうっすらとしかまだ見えないはずじゃ。殻が完全に破れてないからの。

 日下部君に至っては私の霊気どころか霊も見えぬ…」



なるほど…。



「さらに強い霊であれば、自身の霊気を完全に隠すことも出来る。

 これがやっかいでの…自身を纏う霊気だけでなく、攻撃として使う霊気まで見えなくできる者もおる」


「透明の霊撃ってこと…か」



見えない攻撃じゃ…避けようもない。



「うむ。霊撃…こいつは私ら人間が霊に放てばダメージを与える事が出来る。

 じゃあ逆に霊からの霊撃を人が食らうとどうなるかわかるかの?」


「んー…どうなるんだろ」



今まで散々食らってきたのは霊にとり憑かれた人間からの物理攻撃。

霊的な攻撃って…どうなんだろう。



「怨霊の類の霊撃は主に恨みなどの怨念…。

 食らえば心身に異常をきたす…。

 他に軽い場合で眩暈や気絶…重ければ意識不明に陥る場合もある。

 よほど強力なものであれば即、命を落とす場合もある」



そんなに恐ろしい事だったの…。



「優には昔教えた気がしたんじゃがな…気のせいじゃったか?」


ギクッ…。

そう…だっけ?



「他にも精霊や妖魔のように力のある者は属性をもつ霊撃を使う者もおるでの」


「属性…はっ!そうだ!朔夜…じゃなかったシロの水球攻撃!」



あれも霊撃だったんだ!



「わらわもこの姿になって力は落ちてしまったが…使えないことはないからの…ふふ」


得意げにシロが不敵な笑みを浮かべている。

でもその顔には説得力が欠けているようにみえる。



「とにかく致命傷になりうる攻撃を受けるのはマズイでの。

 避けるにしろ見えねば話にならんというわけじゃ」


「でも…見るって…ちょっと修行しただけでも見えるようになるの?」



「完全には無理じゃろ。

 じゃが意識することでこれからの戦いの運びが随分と変わってくる。

 最優先で習得を目指したほうがよいの」



確かに…そんな話を聞いちゃったら、すぐにでも覚えたいところだわね…。



「まぁ詳細については修行に入ってから説明しよう。

 まずは4つ全て軽く説明するでの。

 じゃあ次は視・攻・守・治の"攻"について語ろう。

 字が如く攻撃を意味する…」



霊を攻撃…か。

私の霊力を込めた札で攻撃なんかがそうよね。



「霊に攻撃を行う際には道具を用いる方法や、己の霊力を使い攻撃する方法がある。

 道具の場合、一番ポピュラーなのが札じゃな」


「ほら!こんな感じで札に呪印を書いて、そこに霊力を注ぎ込むの。

 呪印の効果で霊力が消えることもないから、いつでも使えるのが利点ね」



札を皆に見せて回る優。



「うむ。他にも霊気を使えぬ者でも使える点が大きい。

 これをもっておれば、霊が見えぬ者でも退治は出来るからの。

 じゃが気をつけてもらわねばならんのが威力じゃ。

 霊力を込めた者の霊気が弱ければ威力は当然弱い。

 その辺りも要注意じゃ」


「呪印は札だけじゃなくてもそれを書ければ霊具になるのよ!」



「呪印にも色々とあって、札などに書いてある物は一発用…

 つまり一度使ったら終わりという代物じゃ。

 一度霊力を込め、それを放ったら、もう霊力は込めれない。

 他にも術者専用呪や、何度も上書きできる高等呪など様々にある…。

 まぁこれは今は知らんでもええじゃろう」


「それで攻撃の修行って何を学ぶの?

 札の投げ方とか?」



「いや…霊具は使わんやり方…。

 つまり自分の霊力で攻撃する術を学んでもらう」



それって霊気を纏って殴るって奴か!



「直で身に纏い攻撃する…これは第一ステップ。

 これが出来たら、"飛ばす"ことを学んでもらうからの」



霊気を飛ばす…か。

確かに遠近中で言えば近距離攻撃が主になってしまうものね。


幅を持った攻撃を考えれば必然的に飛ばす発想になるわね。



「視・攻・守・治の"守"に関しては攻に通ずるものがある。

 ようは自身の霊気の壁で敵の霊撃を防ぐのじゃ。

 その方法を学んでもらう。まぁ基本的には"攻"と一緒じゃな」


「最後の治って…もしかして治癒術?」



「察しがいいの。

 その通り。治癒術を学んでもらう。

 これは戦いの際、自分はもちろん他人の怪我も癒せて大変に重宝する能力じゃ。

 じゃがそれだけに非常に難しいといっていい。

 恐らくこの習得は時間がかかるじゃろ…跳びぬけたセンスでもない限りの」



治癒術は長期戦には必須だろう。

だけど、お祖母ちゃんの言うとおり治癒術は難しい。


口で説明は難しいけど、独特な力の練り込みやイメージが大切。

体を静止し、集中し…ようやく少しの回復が見込める程度の私だけど、

実戦ではほとんど使えないレベルだろう。



「とにかくこの4点を午後の修行では学んでもらう。

 とりあえず裏庭に行こうかの」



全員は居間から裏庭へと移動した。



―――

――



「これから修行にあたり、チーム別けを行う。

 優、司ちゃん、天城君、和馬に由良葉がAチーム。

 瀬那君、日下部君、岡島君、片桐君がBチームじゃ。

 Aチームがすでに殻を破ったもの…視の修行に入る。

 Bチームがまだ殻を破っていないもの…まずは殻を破ることから始める」


「具体的には何をするの?」



「ふむ。とりあえず朝霞山へ行くぞよ。

 食後の運動をかねて、やや駆け足じゃ!」



ま、また走るのか…。


茜に続いて皆は軽めに走りながら朝霞山へ向かった。



―――

――



「さて…では修行の説明に入るかの。

 なんじゃ?もうバテたのかの?」



う…お祖母ちゃん…時間厳守できなかったことの罰のつもりね…。

やっぱ根に持ってたよ…鬼ばぁちゃん…。



「Aチームは散歩じゃ。

 この山を"意識"して歩いてみるんじゃ」


「歩く…だけですか?」



意識して歩く…。

そうか。



「ここが霊山だから…辺りの霊気を意識して歩くって意味ね?」


「うむ。まずは"見える"を前提にイメージして歩くことじゃ。

 頭の何処かで見えないと思っていると、見えるものも見えなくなる。

 よいな。"見える"…このイメージを忘れるでないぞ」



「わかったわ。じゃあ適当に歩いてくる」


「17時に入り口に集合!よいな」



和馬は由良葉と、優は勇と司と同じ方向へ歩いていった。



「主らは私と一緒に頂上の聖岩までいくぞ。

 修行はそこで行う」


「ま、また登るんすか…」



茜と4人は頂上を目指して歩き始めた。



―――

――



「意識して歩く…見える…」


「口で言うのは簡単だけど…難しいですわね」


「見える…見える……」



3人は適当に山道を歩きながらブツブツ言っていた。



木々を揺らす風…鳥のさえずり…。

微かに感じる霊気…。



優は自分の手を見てみた。



「…見えないか…」



霊気を纏うイメージで手に集中…。



「これでもダメか…」


「優さんでもダメですか…」



「なぁに…まだ始まったばかりですもの。

 私自身すぐに出来るなんて思ってないわ。

 気を楽にして望みましょ!」


「ですわね…こういうのは焦ってもダメですわ。

 まずは平常心が大事!ですわ」



ヒョコ!

司のポシェットからシロが顔を出した。



「霊気を見ることも出来ぬのか。

 くく…これは笑いものじゃの」


「しーーろ!あんた蹴飛ばすわよ」



まったく憎ったらしいフワモコあざらしめ。



「優!乱暴はやめてくださる!?

 こんなんでも可愛いシロなんですからね!」


「おお司!たまにはよいことをいう!

 流石わらわの主じゃ!」



「調子いい事いっちゃって!

 あなた何かしらないんですの?霊気を見るコツとか」


「さぁの…わらわは人間じゃないんじゃ!わかるものか!」



だよね…。

まぁ言って出来るようになるなら、お祖母ちゃんがとっくに教えてくれてるわよね…。



「自分達で掴むしかないってわけだ」


「頑張りましょう!

 まっあなたには負けないんですからねっ!優!」



「望むところよ!」



二人は手のひらをパチンと合わせて決意を立てた。



第28話 完   NEXT SIGN…

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