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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第27話 夏休み編/修行6

SIGN 序章


第27話 夏休み編/修行6



「お前ら、そろそろ時間だ…筋トレはそんくらいにしとくぞ」


和馬が皆に声をかけた。


午前中の修行は徹底した肉体強化。

腹筋・背筋・腕立て伏せ…回数は決められてはいないが、自身の限界まで続ける。


これが終わり次第、走り込み。

河川敷を通り、そのまま朝霞山を登り、下り…河川敷を通って神社へ戻ってくる。


距離はさほどでもないが、やはり山登りが曲者で体力を想像以上に消耗する。

昨日走ってみてわかったけど大体1時間はかかる。


それも筋トレ抜きでそれぐらい掛かったから、多分もう少し掛かるだろう。


今が10時を少し回ったくらいだから…

万が一を考えて余裕を持って行こうと言うことだろう。



"12時までに戻って来い"


そう言われたからには守らねば…。

お祖母ちゃんのことだから破れば何かしらのペナルティがあるかもしれない。


お昼抜きとか絶対に避けたいところである。



「そうね…行きましょう」



流石に肉体派の男子ね…まだ余裕あるみたい。


私も司も…結構キテるわね…。



「大丈夫…司?」


「はぁ…はぁ……」



『大丈夫』って手でサインをしたが…どう考えても大丈夫そうにない。


やはり想像以上にハードだ。



石動和馬、片桐亮、瀬那稔、天城勇、神楽由良葉、夕見司…そして白凪優の7人は先に行った

岡島大樹と日下部新二の後を追って走り出した。



―――

――


しばらくして各自スピードにバラつきが出始めた。

和馬・勇の両名は安定した走りで、先頭を切っている。


そこから少し遅れて、片桐・瀬那の二名がついて、その後ろを由良葉が一生懸命ついていっている感じだ。



優と司はそこから大分後ろを、スローペースで走っていた。




「はぁ…はぁ………」


「司…少し休憩する?」



「大丈夫よ…あなたこそ余裕があるなら私を置いて先に進みなさいッ…」


「出来てるならとっくにしてるわ…はぁ…はぁ……

 正直…いっぱいいっぱいよ…やっぱ男子はすごいわね」



でもあの子…由良葉君はどうなってるのよ…。

いくら元気な子供とはいえ…小学生が高校生に食らいついていってるって…。



「優…見て…朝霞山よ」



そうだ…多分本当の意味でキツいのはここからだ。



「頑張るわよっ司!ここはそんな高い山じゃないし…いけるわ」


「あなたに励まして貰わなくっても…はぁ……はぁ…ノープロブレムよ!」



司は気合を入れて優を抜き去っていった。



「ちんたらしてたら…置いていくわよ!優!」


「ふん…負けないんだからね!」



二人は不敵な笑みを浮かべ、さっきよりもハイペースで山に入った。




―――

――



「はっ…はっ……!

 流石だね…片桐…俺についてこれてる」


「っせぇよ…!あの野郎に勝つために…鍛えてたんだ」



山道を駆け上がりながら、瀬那と片桐が話をしていた。



「あいつ…?あぁ…もしかして須藤彰か?」


「あぁ…あいつはいつだって俺の一歩前をいきやがる…。

 だったら俺はあいつ以上に鍛えるしかねぇんだよ」



「…そうか。それにしても…あの石動って人と天城君には驚かされる…」


「だな…。オッサンのクセになんて体力してやがんだ…。

 それにあの1年……天城っていったっけか…すげぇ奴だぜ。

 俺的には後ろのガキも怖いけどな…」



チラッと後ろを見ると、まだ一生懸命に食らい付いて来る由良葉の姿があった。



「だな…。末恐ろしい子供だよ…俺達負けないようにしないとな…」


「はは…負けたら流石に立場がねぇわな」



二人は苦笑いをしながら走っている。



「はぁ…はぁ……兄ちゃんたち何笑ってんだ…!?

 にしても…きっつい……奥里の山の中を遊び場にしてたオイラだから、

 こういった足元がデコボコな道は慣れてるんだけどな…やっぱ大人には勝てないのかな…」



「ん…あれ…?おい瀬那!」


「どうした?…!…あれは?」



前方で和馬と勇が足を止めている。


片桐と瀬那は二人に駆け寄った。



「はぁ…はぁ…どうしたんだ…?」


「!…お前ら!」



瀬那は目の前で倒れ込んでる岡島大樹と日下部新二に駆け寄った。



「大丈夫かよ!二人とも…」


「あ、ああ…平気だ。少し…無理しすぎたかも…」


「瀬那…皆……俺達は少し休んでいくから先に行ってくれ…」




「どう見ても大丈夫ってツラじゃねぇだろ…!」


「おい瀬那…そいつらも覚悟の上でやってんだろ?

 だったら置いて進むべきだろ。いくぞ」



行くぞと先頭だって立ち止まる瀬那たちを煽る片桐。



「あぁ!?てめぇ…!」


「片桐の言うとおりだよ…俺達は覚悟を決めてやってるんだ…」


「先に行ってくれ…」



二人は死にそうな顔で先に行くように頼む。



「ざけんな!だからって、そんな死にそうな顔してるお前らを置いていけるかよ!

 俺達仲間だろう!」


「ふん…!俺は先にいくぜ!」



片桐は先に行ってしまった。



「ボウシ…お前の気持ちはわかるが、こいつ等の気持ちもくんでやれ…。

 自分でやるって言ってんだろ?」


「瀬那先輩…」



「二人は先に行ってくれ…。こいつ等は俺が連れて行くんで」



「………はぁ。ほら行くぞ天城!」


「先輩…先で待ってますからね!」



和馬と勇は三人を置いて先に進んだ。



「少し休もう。そっからゆっくり行けばいいさ」


「瀬那…ありがとう……でも…いいんだ。お前も行ってくれ」



ドンッ!

岡島は瀬那の胸をはね押した。



「な、何すんだよ…大樹…。

 お前ら…意地張ってたってどうにもなんないだろが…!」


「俺達、ほんと瀬那には感謝してるよ。

 いつだってお前が後ろから背中を押してくれるし…いつだって助けてくれた」


「だけど…それに甘えてた自分もいたんだ…。

 いつもお前や部長がどうにかしてくれるって…だからそれをいい事に俺達は努力してこなかった」



「新二…お前まで…」



「俺と新二で決めたんだ…。

 もう甘えてばかりの自分に別れを告げようってな…」


「あぁ…だから行ってくれ…。

 俺達はもう…自分の足で歩けっからよ…」



二人はふらふらと立ち上がった。



「お前ら…」


「お前が先に行かないから…俺らが先に行かせてもらうぜ…」



「二人ともすげぇカッコイイよ!

 オイラなんか感動しちゃったね!」


「由良葉…見てたのか…」



こっそり後ろで一部始終を見ていた由良葉。

さらに後ろから優と司も追いついてきたようだ。



「みんなー!休憩中?」


「うん!そんなとこ!ほら、ボウシの兄ちゃん行こうよ!

 二人のためにも…ね!」


「…」



瀬那は大樹と新二の顔を見て、そっと頷いた。

二人も答えるように親指を立ててそれに答える。



「うっし!行くぞ由良葉!」


「うん!お姉ちゃん達も行こう!」



司は何も言葉を交わさず由良葉に次いで走りぬいていった。



「え…!?でも先輩達は!?ほっとくの!?」


「優!!」



「な、何よ司!あんただって…」


「いいから来るの!振り返ってはだめ…」



司…あんた…。



優も二人を置いて先を急いだ。




「行ってくれたな…新二」


「だね…。ありがとう部長…!

 っしゃ!頑張ろうぜ大樹!もうすぐ頂上だ!」



―――

――



AM11時57分―――


「はぁ…はぁ………」


「やっと…やっと山降りたぞ……」



大樹と新二はようやく山を降りたようだ。

ここからどんなに頑張って走っても12時には間に合いそうもない。



「時間…間に合わないな」


「だな…。

 まぁでもいいさ…最後まで諦めずに頑張ろうぜ!」



二人は腕を合わせていった。



「なぁに青春してるんですの?」


「ったく男同士で気持ち悪いぜ?」



出口で瀬那と司が待っていたようだ。



「瀬那…部長……なんで!?」


「先に行ってって言ったじゃないっすか!」



「あーら!私達別にあなた達を待ってたわけじゃなくってよ?」


「そうそう!俺らもちょっと疲れちまってな…休憩してたっての!

 そこんとこ勘違いしてもらっちゃ困るぜ?」



「部長…瀬那ぁ……」


「嘘が下手なんだよ!…ったく…わざとらしいったらないぜ…」



二人は泣いているように見えたがそれには触れず瀬那は一言


「行こうぜ」


といって笑ってみせた。



大樹も新二も本心では『ありがとう』と言いたかった。

でもそこは照れ臭くもあり…それを瀬那も司もわかってあげたようだ。


4人は何も言わずにラストスパートをかけて走った。




―――

――



「ほら…あと少しよ!頑張ろう!」


「ん…!?ありゃ…あいつら…」



4人は神社を目の前に、人影が集まってるのを確認した。



「おそぉーいぞ!」


「ったくクソガキども!今何時かわかってんのか!?

 13時だよ!ったく!」



優たち全員が門前で待っているようだ。



「なんで…もしかして…待ってたのか……お前ら?」


「この色男がなーんか知らないけど、ゴールしてなかったそうよ!

 このオッサンも、お人よし天然小僧もね!」



「う、煩い…俺は別に何も言ってない」


「ふん!なんでもいいよ!俺ぁもう腹が減ってしゃあねぇんだよ!」


「よかったです。皆でゴールできて……なんか感動的ですね!優さん!」



ま、みんなお人よしってことだわね。



「ふん…主ら何を笑っておる…時間厳守!

 忘れたとはいわさぬぞ…?」


「げ…お祖母ちゃん…」



マジな顔…やっぱ飯抜きかしら…。



「ふん…まぁ今回は見逃してやるわ。

 じゃが今回だけじゃぞ!?わかったら手を洗って居間に集合じゃ!」



ええ!?

ってことは…


「お、お咎めなし…!?よっしゃあああ!!」



こうして午前中の修行はなんとか全員クリアできた。

だが、午後からも厳しい修行が待ち受けている…。


そうとも知らずに食事に夢中になる優たちであった。



第27話 完   NEXT SIGN…

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