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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第23話 夏休み編/修行2

SIGN 序章


第23話 夏休み編/修行2



昼食のカレーを皆で平らげ、各自軽く自己紹介などしながら休憩を1時間ほど挟んだ。

お祖母ちゃん曰く"休息も大事"だそうだ。


PM1:00―――



「そろそろ修行を再開するかの…。

 というか…今日は勉強会と主らの実力を確認しようかの。

 皆玄関から靴を持ってくるようにな」



そう言うと茜は9人を連れて地下室へと案内した。



―――

――



「すごい…こんな大きい地下室があるんですね…」


「地下室っていうか…地下の洞窟みてぇだな。

 なんでまんま地面なんだよ…靴を持って来いってこういうわけか」


「地面だけではないですわ。壁も土の壁…」



勇を筆頭に皆驚いているようだ。

確かに一般家庭にはない物珍しいものではある。


さらに地下室と呼べるかも怪しいものであるから尚更である。



「ええ。ここは修行するのにうってつけの場所よ」



ここに降りてくるのはどれくらいぶりだろう。

真面目に修行なんて思い立ったこと自体本当に久しぶりな気がする。



「薄暗いとは思うが我慢しておくれ。

 さて…修行をつける前に色々と知ってもらう事がある」


9人は地べたに座らされた。



「まず…私や優のような力を得るということは…

 より人並み外れた存在になるということじゃ…。

 何も知らない者からすれば理解し難い異端と呼ばれるじゃろう」



そうだろうね…普通じゃなくなる…ってことだものね。




「簡単に言えば化け物扱いされるし、嘘吐き呼ばわりもされる。

 時には非難の対象にもなるやもしれん…何もしてなくてもな…。

 それが人間というものじゃ…」


「たとえ人のために行動しても…感謝されることはないかもしれない。

 逆に畏怖され…中傷されるかもしれない…。

 でも、それで人間を恨んではいけない……でしょ?お祖母ちゃん」



「うむ。その辺りは学ぶ前に覚悟してもらいたい…。

 とはいえ口で言うのは簡単じゃが…なかなか割り切れない事もある…。

 じゃから極力目立った行動は避けるべきじゃな…それが一番いいのかもしれん」



何も知らない人間を巻き込んで、その結果いい事ってあまりないように思う。

感謝してくれる人間もいる。


でも、そうでない者もいることもまた事実…。



色んな意味で強い心が必要なんだ。

それは力を得た者が背負っていく運命。



「助けてほしい時だけペコペコ頭下げて、助かったと思ったら今度は手のひらを反して化け物扱い…。

 そんな救いようがねぇ奴は五万といるさ。

 だが俺は"助けるんじゃなかった"…とかそんな後悔はないね。

 恨むなんてのは、もってのほかだと思うぜ?

 てめぇが助けると決めて助けたんだ。どう思われようが関係ねぇ!

 そうだろ?動くも動かないも決めるのは自分自身なんだからな。

 相手のリアクションに期待して動くのはやめたほうがいいぜ?

 てめぇがどうしたいか!そこが重要だと俺は思う」



全員あっけに取られている。



「な、なんだよ…おめぇら!」



「いや…なんかすごい尤もらしい事を言うから…」



正直驚いた。



「ふむ。たまには良いことを言うじゃないか…和馬。

 まぁそういう事じゃな。

 "誰かのために動く"…それを決めるのは他でもない自分自身…。

 そこで期待値と違う反応をされて恨むのはやはりおかしいのかもしれん」



皆頷いて納得しているようだ。



「うむ。では心得はこの辺りでいいじゃろう…。

 ここからは霊について少し説明しよう」


「お祖母ちゃん!私が説明してもいいかな!

 おさらいを兼ねてね!」



「いいじゃろう」



「ごほん!じゃあ優先生が説明しましょう!

 幽霊は主に動物霊・人間霊に分けられます!

 精霊や妖魔と呼ばれる上位の霊もいますが、滅多にお目にかかるものではないです!」


「動物霊って…前から気になってたのですが、人の言葉をしゃべってましたよね?

 あれって…今にして思うとすごくないですか?」



「天城君!その通り!動物霊は誰もが人語を操るわけではないわよ!

 あの時の狐のように人語を操るものは特殊でね、長らくこの世をさ迷って成せる業なの!」


「ほう…そうなんですね」



「ちなみに更に年月を重ねていけば精霊、もしくは妖魔に変化することになるわ。

 その分かれ道はその霊魂の性格や、周りの環境によってかわってくるの。

 負の感情が多い場所に居続ければ妖魔に…逆に自然豊かな場所や人々に祀られてるような霊は精霊になるわ」


「この子は精霊になるか妖魔になるかの瀬戸際にいたのですわね…」


司はポーチからシロを取り出した。


「失敬な!わらわを妖魔のような穢れと一緒にするでない!」



「ぬいぐるみがしゃべったぁぁああ!?」



初見の片桐と和馬は驚いたようだ。



「ふむ…何か感じてはいたが、まさか式神を連れておるとは…。

 司ちゃんも成長したのう」


「うちのシロは水面の精霊崩れですわ。

 私の不慣れな契約の封呪で大幅に力を削られてしまったようで、

 今はまだ治癒術程度しか使えませんけどね」



「わらわをこのようなふわもこの姿にしおって…いずれ力を取り戻して喰ろうてくれるわ!

 夕見司とその一味め!」



その一味って…。



「ごほん!話を戻しますよ!

 他にも様々な霊がごっちゃになって一つになった霊や、

 物に霊魂が憑依する付喪神と呼ばれるものもあるの!」


「へぇ…」



皆、ポカーン顔ね…。

まぁ実際見てみないと実感ない…か。


というか、シロのせいで注目を奪われた気がする…。


あのふわもこめ…!



「な、なんじゃ!わらわをいじめるのか!この凶暴小娘!」



しばきてぇ…。




「まぁ優の説明程度で今はよかろう。

 では続いて私達人間に宿る霊気の話をしよう」


「それ気になってました!」



日下部先輩だ。



「俺、いや俺だけじゃなくて大樹もなんですが…霊感がないんです」


「ふむ。普通多くの者がその状態じゃな。

 人は誰しも霊気を内に秘めておる。

 だがそれを押さえ込む殻で覆われておるんじゃ」



「殻…ですか?」


「うむ。殻は人それぞれ厚みも違う…。

 殻が薄ければ、ちょっとしたきっかけで破れ…霊能力に目覚める。

 だが分厚い者は普通に生活していて殻が破れることはない。

 私や優…司ちゃんのように殻が薄い血筋もあれば、逆に君のようにガチガチに分厚い者もいる」



「じゃ、じゃあ…俺達に希望はないんですかね…?」


大樹を見て悲しげに呟いた。


「新二…」



「いやいや…殻を破ればいいだけの事…。

 修行次第で誰もが破ることは出来るさ。

 ただ、それにどれくらいの時間がかかるか…じゃな。

 それにそっちのずんぐりむっくりの君はもうすでに殻を破り始めておるぞ?」


「え!?…俺が…ですか?」



大樹は自身で驚いた。

どうやら自覚はしていないようだ。



「うむ…。まだ殻の一部が欠けた程度じゃが…霊気が漏れておるのを確かに感じるぞ。

 一部が欠ければ、後は修行次第ですぐに全て破れるさ」


「そうなんだ!よっしゃ!」


「大樹いいなぁ…」



そうか…岡島先輩は緒斗の森で…朔夜の攻撃をモロに受けてたもんね。

あれがきっかけで殻が破れたんだ。



「まぁそう悲観しなさんな…。

 時間はどのくらい掛かるかわからんが、やってみる価値はあるじゃろうて」


「はい…」



「話を戻すかの。

 霊気は霊に干渉する上で非常に重要なものじゃ。

 己の霊気が強ければ、霊をよりはっきり見ることもできる。

 また霊からの攻撃から身を守ったり、また霊を滅する力にもなる。

 "霊気"は力強さを意味し"霊力"は霊気を操る上で必要な力を意味する」


「簡単に言えば、霊気は霊に対する攻撃力・防御力!霊力は、技を使うための…

 んーゲームのRPGとかのMPみたいなものよ!

 霊力が空になったら霊気を扱えないから、攻撃も防御も何も出来ないの!

 つまり無力化しちゃうわけ」



一同凄く納得しているようだった。



「むぅ…若い者には優の説明のほうがしっくりくるのか…。

 逆に私にはさっぱりじゃな…」



「んでじゃ。

 午後からの修行はこの霊気・霊力・霊術をひっくるめて学んでもらう。

 霊と戦う術もそうじゃが、己を守る術を重点的に教えるのでそのつもりで」



私的には、守る術より…倒す術を学びたい…。

あの力…"狐火"…実戦で使えるようにもなりたいしね。



「まずは主らの霊気と霊力を測ろうかの。

 今日の修行はそれでおしまいじゃ。それをやると修行出来なくなるからのう」



測定か…久々だな。

どれくらい自分の力が成長してるか…ドキドキしてきたな。



茜は皆を奥に連れて行った。



円形上に札が並べてある陣がある。



「これから皆の霊気を測る。この陣は霊気に反応して動作するものでな。

 端にある小さな円に手をつき、霊力を集中する。

 そうすれば、左回りに霊気は円を辿るように循環していく。

 何処まで霊気が伝わっていくかで、その者の霊気がどの程度かを測るわけじゃ」


「札は全部で2000枚だっけ?ちなみに札一枚につき霊力10として換算してるわ。

 この計測形式はあくまで私達の家系(5家)に伝わる形式だから

 もしかしたら別の計測形式があるかもしれないけどね」



「まぁとりあえずやってみるのが早いじゃろう…私がやってみせるかの」



茜は円の端にある小さい円に右手をついて集中を始めた。


ザワッ!


お祖母ちゃんの本気…どの位なんだろう…?



「はッ!!」


茜が気合を入れた瞬間、左回りに札がザワザワと"立ち上がった"!



「ふむ…暫くは霊気に反応して立ち上がった状態になる。

 これで最後に立っている札にかかれた数字が私の霊力というわけじゃ」



円を何週かして中央を目指して札が立ち上がっている。

とはいえ、中央まではまだまだ余裕があるようだ。


最後尾の札…223…。



「223か…ふむ。私の霊気の強さは数値化すれば、大体2230といったところじゃ」


「…これはすごいんですかね…?」



「まぁ2000枚あって、これだけしか立たねば、凄くないように感じるじゃろうな」



この形式は昔から伝わるもの…。

大昔の私の先祖はこれ以上の力を持っていたということなんだろうな…。



「じゃあ続けて皆もやってみるがいいさ。そろそろ札も寝る頃じゃ」



そういうと今まで立ち上がってた札が元通り地面に張り付いた。



「じゃあ…誰から行く?行きたい人いる?」


「私がやってあげるわ!」



やっぱり出てきたか。

この目立ちたがりやめ!



「うっほ…いい胸だな…ふへへ…」


和馬がスケベそうな顔をして司を見つめていた。

その瞬間だった。


シュッ!


「うぁ!?」


稔の右足がだらしない和馬の顔面まで飛んできていた。


「いやらしい眼で部長を見ないでくれないッスか?

 年上でも容赦しないッスよ?」


稔の目がめずらしくガチになっていた。



「わ、悪かったよ…そんな怖い顔すんなよ…」


「みのりん!あなたすぐに暴力的になるのダメって言ってるでしょ!」


「す、すみませんっす…」



「やぁい!やぁい!怒られてんの!あっはっは!」



この男も大概大人げがない。


「煩いですわ!ハゲッ!!」



あぁ…言っちゃったよ。

ドストレートに…。


和馬はショックを受けたようで、地面に手をついている。



「ふん…気を取り直していきますわよ…!はっ!」


ザワッ!


札が一斉に立ち上がった。



「…いくつ…ですこと?」



司が立てた札の最後尾は…57。



「あんたの霊気値は570ってとこね」



すごい…。

正直この子がここまで強い霊気だったなんて予想外だ。

私が以前計測したのは中学3年…1年くらい前か…。


その時は確か28枚程度…つまり280くらいだった。

今どの位になってるかわからないけど…


もしかしたら…私より上なのかもしれないな…。



「ふふ!さぁ優…あなたの実力を見せてもらおうかしら?」


「ふん…望むところよ!」




第23話 完   NEXT SIGN…

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