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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第21話 夏休み編/緋色の髪留め3

SIGN 序章


第21話 夏休み編/緋色の髪留め3



須藤に向かって歩みよってくる男二人…。

周りの連中とは一つ飛びぬけた存在感だ。


竹谷をリーダーとして、その側近に当る二人なのか?



「邪魔するってんなら容赦しねぇぞ…!

 今の俺に加減は無理だ…怪我したくなかったらすっこんでろ」


「プッ!」


ガムの男が自分で噛んでいたガムを須藤目掛けて吐き出した!


「!…」



ガムは避けたものの、一緒に飛び出た唾液が須藤の顔面にかかった。



「ひひ…!どうなるのかやってみてよ。須藤ちゃん?」


挑発するガム男。


「ッ!!」


須藤の射程内に踏み込んだや否やすぐさま蹴りを放つ。


だが、蹴りは男の鼻先をかすめるだけでヒットはしなかった!



「ひゅう〜♪あっぶねぇ!」


「!…(あれを避けたか…)」



「おーいカズオー!こいつ俺にくれね?」


「金子ちゃん気に入っちゃったわけ?まぁいいけど」



そういうとカズオと呼ばれたニヤつき男は後ろに下がっていった。



「まぁ、ゆっくり遊ぼうじゃないの須藤ちゃん」


「何度も言わせるな…俺が用のあるのはてめぇ等じゃねぇってんだよ!!」



須藤は自ら突進して行った。

間合いに入るや否や、パンチを繰り出す!


長身の須藤の攻撃はどうしても打点が高くなるため、中背相手では全て顔面狙いになる。



「ぶな…っ!」



またしても絶妙なタイミングで攻撃をかわす金子。



「…てめぇ…ボクシングか…!」


「ふふ…楽しもうよ」



凄まじい速さの攻撃を見切る動体視力。

瞬時にどの方向へも退避できるフットワーク。



「…はぁ…」


「何?…どうしたのよ須藤ちゃん。やる気なくなっちゃった?

 それともビビッちゃったっかな?」


足さばきを続けながらボクシングの構えをする金子。


須藤はゆっくり金子に向かって歩き始めた。



「何だぁ?」


そして金子の間合いに足を踏み入れた。


バシッ!!



「!…ぐ…」


金子の右ストレートが須藤の腹部をえぐる。



「はは!何これ!?サンドバッグになりたいっての?いいよ?」



ドスドスドスドス!!


金子の連打が須藤を襲う。

腹、わき腹そしてアッパーで顎…。

見事なコンビネーションだ。


だが…



「はぁ…はぁ……どうなってやがる…」


「…」



「なんで倒れねぇッ!!」


「ふん!」



もはや避けれる間合いではなかった。


一閃。


須藤の拳が金子の顔面をえぐっていた。

そのまま気を失い、地面に倒れこんだ。



「悪いな。打たれ強さは人一倍なんだよ」



グサッ


「!」


突如須藤の背中に激痛が走った。



「やるねぇ君ぃ…。金子ちゃん倒すなんて大したもんだよ」



カズオが背後から近づき、ナイフで須藤を刺したようだ。

右のわき腹辺りを刺されたようだ。

血が流れている。


すぐさま間合いを取るカズオ。



「ふふ…いいねぇその眼。化け物の眼だよ…怖いねぇ…」



カズオを睨みつける須藤であったが、ナイフを抜き捨てると、黙って向きを変えて竹谷のほうへ歩みを進めた。



「へぇ…俺を無視しちゃうわけね。おいお前等!!」


カズオは周りで見ていた7人ほどの不良たちに向けて叫んだ。


「相手は手負いが一人…。なぁに、もう立ってるのもやっとさ…。

 袋叩きといこうぜ?」


『おーーーッ!!』



さっきまでびびっていたギャラリーがいきり立ち、須藤を囲み始めた。


同時に竹谷は"任せた"といわんばかりに後ろに下がった。



「…奴等を呼ぶか…くく」


竹谷は何処かに電話をしているようだ。



「竹谷ァァッ!!お前等もどけやッ!!」


「るせぇ!!ぶっ潰してやる!!」




ドガバキッ!!


一瞬にして男二人が宙を舞った。



「人が加減してりゃ図に乗りやがって…」


「ひぃ…!」



須藤と眼があったものは体が硬直した。

まるでライオンに睨まれたような…恐怖に縛られる感覚。



だが、そうなったらもう遅い。

須藤はターゲットを逃さない。


次々襲い、倒していく。



「ぐ…冗談だろ……そいつ怪我してるんだぞ…

 ナイフで刺されて…あんなに血が出てるんだぞ……

 なんで、なんで動けるんだよぉおおおおッ!!!!」


「っせぇんだよ…。さっきのニヤつきは何処に行ったんだてめぇ…。

 周りが居なきゃ余裕もでねぇってか?あぁ!!?」



すでに他のメンバーは全員気を失っていた。

残るはカズオ、そして竹谷のみ。



「カズオォ…ちゃんとやれよ?」


「竹谷…お、俺は…」



「やんなきゃ俺がお前をやっちゃうからね」



ガクガクとカズオが震えだす。



「う、ううう…うわああああああああああ!!」



半ばヤケクソに須藤に突っ込んでいった。

須藤は須藤で、実のところ慢心相違だった。


10人にも及ぶ相手との戦闘、加えて刺し傷に多量の出血。

もはや気合だけで立っている状態だ。



そんな状況ではあるが単純に真っ向から向かって来る相手に遅れを取るほど弱くもなく。

須藤はカズオを一蹴した。



「ち…使えない雑魚ばっか」


「さぁ…これで一対一だ…。話をさせてもらおうか」



「いいよ?…というか、2年ぶりだっていうのになんなの?」


「三嶋…咲……覚えているか?」



「三嶋ぁ?誰だっけ…。悪いね覚えてないや。女の子ならおぼ…!?」



一瞬にして須藤は間合いをつめた。

と同時に竹谷の顔面目掛けて蹴りを放った!



ドガッ!



「…いっつッ…何するの?いきなり」



須藤の蹴りを片腕でガードしている。

怪我のせいもあり、力が入りきらなかったようだ。



「三嶋咲…お前が2年前殺した同級生だ」


「!………なんでお前そんなこと知ってんの…?」



竹谷の顔色が変わった。



「やっぱりお前…」


「あぁそうさ…彼女が俺を拒絶するからね…。

 まぁ勝手に足を滑らせて死んじゃったんだ。俺のせいじゃない」



「てめぇ…何処まで腐ってやがるんだ…ッ!!」


「はは。さぁねぇ…。

 てか、なに?それを言いにわざわざ来たっての?

 相変わらず馬鹿だねぇ君は」



ブンッ!


須藤は拳を振るうが、かわされてしまった。



「だからさぁッ!すぐに殴りかかるのやめなよ!たく野蛮人め…!」


「その口を閉じやがれ!」


再び攻撃をしかける須藤だったが、動きに精彩を欠いている。

竹谷はなんなく攻撃をかわして、逆に須藤の顔面を殴りつけた。



「ぐはっ…」


「気持ちいいね。殴るのって。君だから特にかな須藤君」



須藤は倒れこんでしまった。

流石に疲れもダメージもピークに達したようだ。



「はぁ…はぁ……謝れ…」


「はぁ?なんだって?」



「謝れって言ったんだよ!!三嶋に謝れ…墓前で手をついて謝れ…。

 両親に…頭を…下げろッ……はぁ…はぁ…」



「…ッチ!くだらねぇこと言ってんじゃねぇよ…!!あぁ!?」



ドガッドガッ!!

竹谷は須藤を滅多蹴りにした。



「はぁ!はぁッ!!このカスがッ!」



「よう!」


入り口のほうから声が聞こえた。



「あぁ!?おせぇんだよてめぇら!何してやがった!

 …あぁ!?」



現れたのは片桐亮・石動和馬・白凪優の三名だった。



「誰だ…てめぇら…」


「アンタに名乗る名前なんてないわよ」



ドサッ!


片桐と石動は両手に引きずっていた男達を放り投げた。



「おせぇって…こいつ等の事か?

 悪いけど倒させてもらったぜ?」



「お前……片桐亮か…?」


「覚えてくれてたようだな…竹谷」



そう。

竹谷と同中だったのは須藤だけではなく、片桐も一緒。



須藤が出て行ってからしばらくして、心配そうな咲を見て


"行こう"


と言い出したのだ。


片桐は地元・生馬にも詳しく案内してやるとの事で今に至る。

和馬は気分でついてきたみたいだけど、来てくれて助かった。



入り口付近で4人の不良と鉢合わせしたのだが、その時に戦ってくれたのだ。

ただの口の悪いハゲだと思ってたけど、案外いい人なのかもしれない。



「まさか、お前とこいつが仲良くつるんでるとはな。

 仲直りしたのか?」


「まさか。そいつとは何でもねぇよ…だけどな。

 借りは返さないと俺の気がすまないんでね」



「うぅ…おめぇら……なんで来たんだよ……。

 ダセェとこ…見られちまったぜ…」



竹谷の足元で声を振り絞る須藤。



「まずいわね…酷い怪我をしてる!」


「ありゃ相当やべぇな…とっととブチかまして病院につれてかねぇと…!」



和馬が走り出そうとした瞬間、片桐が肩を掴んで静止させた。



「んだよ!?」


「…手出し無用だ」



「あぁ!?」


見てみろと、須藤の方を指さす片桐。



「…あいつ…」



なんと須藤が立ち上がった。



「サンキュ…片桐」


「ふん…とっとと終わらせろ」



「終わらせる…?だぁ…?

 なめてんのか!?てめぇら!!この怪我見えるよな!?

 この出血量!!今の今まで転がってた奴だぞ!?何が出来るってんだ!?ああ!?」



ヒュッ!


「え…」



バキッ!!

須藤の渾身の蹴りが竹谷の首にヒットした。

吹き飛びはしなかったものの、ふらつかせた。



「ぐ…ぐ……何処にそんな力…」


「わりぃな…さっきとは状況が変わった…」



「あぁ!?」


「惚れてた女が見てるんだ…無様に寝てられんのよ」



ニコッと笑う須藤。



「ぁに言ってんだよこいつ!!気味わりぃんだよぉぉおおおッ!!」


いきり立って襲い掛かってくる竹谷!



「…終わりだッ!!」


クロスカウンター…。

竹谷の右ストレートに対して右ストレートを放った。


勝負はリーチの差で須藤に軍配は上がった。



気を失い倒れこむ竹谷。



「…」


須藤は無言で優の方へ向けてガッツポーズをした。


無論優にではなく…優に憑依していた咲に対して…。


咲は満面の笑顔でそれに応えた。



―――

――


数分後―――



「…」


「気がついたか」



須藤は竹谷を見下ろしながら言った。



「…俺の負けだよ…好きにしろ」


「彼女がわかるか…?」



須藤はゆっくりと竹谷を起こした。


「……三嶋…さん……」



竹谷の目の前には優が立っていた。

しかし彼の目に映る姿は三嶋咲の姿だった。



「…」


「…うぅ……うわぁぁ…俺は…俺は………」


泣き崩れる竹谷。



「…あなたも…辛かったのね…竹谷君……」


「!……うぅ…ごめんなさい…。

 三嶋さん…ごめんよ…本当にごめんなさい…」


スッ

咲はそっと泣き崩れる竹谷に手を差し伸べた。



「…もうわかったから……私はもうあなたを恨んではいないわ…」


「うぅ…うわぁぁああぁぁ」



それから数分間…竹谷が泣き止むことはなかった。

そんな姿を見て、須藤の怒りも消えていた。



―――

――



「俺…君の両親に謝りにいくよ…。

 それで君が戻ってくるわけじゃないけど…。

 俺は一生かけて償っていくつもりだよ…」


「ありがとう…っていうのも変かもしれないけど…

 でもありがとう…竹谷君…これからは人のために生きてほしい…私の分まで…」


「あぁ…そうする…」



「うぅうぅう…えぇ子や…なんてええ子や…」


石動和馬はとなりで号泣していた。

涙もろい性格のようだ。



ふわぁ…


咲の体を淡い光が包みだした。



「!咲…ッ」


「須藤君…ありがとう…。

 どうやら時間みたい…」



「…ごめんな…最後の最後まで…俺は何もしてあげれなかった…」


「そんなことないよ…私は幸せでした。

 あなたをずっと好きでよかった…。

 ありがとう…須藤君」



須藤は涙が止まらなかった。

咲もまた…涙が溢れていた。



「さよならは…言わないぞ…。

 ずっと俺のここ(心)で咲は生き続ける」


「うん…ありがとう…」


フワサッ


咲は自分の身に着けていた髪留めを外した。

淡い髪の毛が綺麗に咲いた花のように美しかった。



「これを受け取ってほしい…」


「いいのか…?」



「私はいつもあなたを見守っているからね…」


「咲ッ!行くな…行くなッ!!」




三嶋咲はそのまま天に昇るように消えていった。


その緋色の髪留めを残して…。



第21話 完   NEXT SIGN…

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