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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第15話 夏休み編/緒斗の森3

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第15話 夏休み編/緒斗の森3



「いない…!何処にもいない…優さん一体何処にいってしまったんですか…」


辺りを探す勇だったが、優の飛ばされた痕跡は見つかったものの、辺りに優らしき人はいなかった。



その頃…瀬那稔は激戦の中にいた!



「ハァッ!!」



瀬那はスーツの腐乱死体と戦っていた。

この死体、瞬発力が並ではない上、優を一蹴りのもとに吹き飛ばすほどの力を持っている。


理性を失うわけでもなく、冷静に相手の動きを読み、攻撃をかわしつつ反撃してくる。


瀬那も十分に対抗はしているものの、決定打どころか一打も浴びせられないでいた。

そこで嫌々ながらも、相手を掴んで接近戦にもっていこうという作戦だ。



作戦通り死体の胸倉を掴むことに成功した瀬那稔。

その勢いのまま頭突きを顔面に食らわせる。


効果があったのか否か、それはわからないが一瞬よろめいた隙を瀬那は見逃さなかった。


拳打、蹴りの見事なコンビネーションが次々と決まる。



「これでラストだッ!!」



トドメの蹴りを側頭部に放った。

死体は勢いよく地面に叩きつけられた。



「はぁッ…はぁッ……やったか…?」



しかし、死体は何事もなかったように起き上がってきた。



「ま…そうでしょうね…。ゾンビだもんな…

(いくらなんでも体力が持たないぞ…)」


「瀬那先輩!」



勇が戻ってきたようだ。



「天城君か…彼女は見つかったかい?っと!」



話をしようにも死体が再び瀬那に襲い掛かる!



「瀬那先輩!

(動きにキレがないように感じる!相当に疲れてるんだ…!)」



勇は懐中電灯を二人を照らすように足元に置いた。

そして木刀を構えて目を閉じた。

いつもの精神統一だ。


「瀬那先輩!そのままそいつを"そこ"に留まらせておいてください!」



「はぁッ…はぁッ…

(何かする気なのか…?もう避け続けるのも限界だ!)

 や、やるなら早くしてくれッ!もうげんかっ!いっ!」



勇は深く深呼吸をした。

次の瞬間!


「はっ!!」


勇は勢い良く木刀を振り下ろした!


もちろん死体との距離は随分とあったため、空を斬っただけだ。

だが死体は攻める事を止め、急に立ち止まったようだ。



「…?なにを…したんだ?」


「天城流剣術…風刃剣…。

 未完成ですけどね…。どうやら成功したようでよかった」



死体は足元から崩れるように落ちていった。

同時に物凄い腐臭があたりに漂った。



「…これは…君が倒したのか?」


「ってことになるんですかね…正直本当に倒せるなんて思ってなかったんです。

 一人で今の試したの初めてだったんで」



勇は以前に優の力を借りて悪霊を一網打尽にした話を聞かせた。



「なるほどね…。

 でもよかったよ…君がやってなかったら危なかった」


「…」



勇は浮かない顔をしている。



「…?そうだ。彼女は…白凪さんは?」


「いなかったんです…何処を探しても…」



「なんだって…!?そうだ…彼女確か一に発信機を渡されていただろ?

 受信機モニターは俺が持っているから…」



そういってカバンの中からモニターを取り出した。



「よし…これで見れば、今何処にいるかがわかるはずだ」



ピピッ



「!…出たぞ…この左の点が恐らく部長たちだ…。そしてこっちが白凪さんになるな」


「何かおかしくないですか…?

 この点が夕見さんたちなら…同じ時間歩いてきたとしても

 これをみると優さんはかなり遠くにいますよね…?というか移動してる」



「みたいだな…。一人で…しかも全力で走っているような感じだな…」


「彼女…懐中電灯落としてるんですよ…?

 こんな暗闇の中…こんなスピードで走れるはずがない…!」



勇は優の懐中電灯をつけて見せた。



「ってことは…やっぱり誰かが連れ去ったってことか?」


「く…!こんな所でじっとしてられない!

 僕追いかけます!」




「落ち着いて!冷静さを欠いて闇雲につっこんでも、この闇の中だ…

 下手すると怪我じゃすまない!」


「放して下さい!彼女は…ッ…!…いえ…すみません」



勇は落ち着きを取り戻したようだ。



「気持ちはわかるがここは部長と合流したほうがいい。

 あの人ならきっと最善策を見出してくれるさ」



そうこうしていると優の発信機の動きが止まった。



「瀬那先輩!動きが止まりました!」


「って…あれ!?」



突然優の反応が消えた。



「…消えた……」


勇はその場にへたり込んでしまった。


「…とにかくだ!動かないことには始まらないさ!

 連れ去ったって事は、何かしらの意図があるんだろうさ!

 彼女はきっと無事だ!」



勇を励ましてなんとか立ち上がらせた。



「行こう。部長たちと合流するんだ」



司のほうでも発信機の異常に気づき、こちらに向かい始めたようだった。



両者は合流のため歩き始めた。




―――

――



15分後…


二組は合流し、詳しい話を司グループに説明した。



「話はわかったわ。優の反応が消えた場所に向かいましょう」


「く…こいつは最新式だよ!?

 反応が消えるってなんだよ!きっと踏み潰したりしたに決まってる!」



一が一人ぶつくさ言っていた。



「あんた、機械の心配より今は優の心配でしょう!しばくよ!?」


「す、すみません…部長…」



一の胸倉を掴んで一括する司の姿は怖かったようだ。



「…やっぱり二手に別れるんじゃなかったわね…うかつだった」


「あなたのせいじゃないですよ…僕が…僕がついていながらッ!」



勇は未だに自分を責めているようだ。



「天城君。気持ちはわかるけど、切り替えていきましょう。

 きっと無事よ。あの子あれで悪運つよいからね」


「夕見さん…」


「くよくよするなよ…な?皆で助けにいこう」

「そうだぜ!俺達なんも役に立てないかもだけど、頑張るからさ!」

「さっさといこう。助けるんだろ?」


大樹、新二、一も励ましの言葉をかける。


「みんな…すみません。

 …ですね!優さんならきっと無事ですよね!

 よし!いきましょう!」



勇はなんとか立ち直り優の消えた場所に向けて歩みを進めた。




―――

――



「うぅ…」



ここは何処…?

私…どうしたんだっけ…?



優が目覚めた場所は暗闇をうっすらと照らしたかのような岩壁に囲まれた場所だ。

どうやら辺りの岩壁にこびりついているコケが発光しているようだ。



「!?…ここは…って…え?」


体が動かない…!?


良く見ると両手首、両足首、胴回りと…得体のしれない紐状のものに巻かれて壁につながれているようだ。




「くっ…外れない…ッ!

 一体なんだってのよ!…はぁ」


落ち着くのよ…優。

状況をよくみて…落ち着いて。



首筋に痛みがある…。

やっぱりあの時何かが私を攻撃したんだ。


それできっと気を失って…。



この空間はどう考えても外じゃないな…。

壁に囲まれてるし…。

というか、かなり広い空間だわね。


目の前に揺らいでるのは…あれは湖?


もしかして司が言っていた洞窟なのかな?



霊的な波動は感じるけど、悪意はないわね…一体なにがどういうことなの?


とにかくこの縛ってるのをなんとかしないと始まらないか…。


ググッ!


「くぬううううううう!!」



優は霊力を使い腕力を強化して全力で引き剥がそうとした!



ブチッ!ブチッ!!


両手首を縛っていた紐状のものが千切れた。



「ふぅ…よし!」



同じ要領で両足、胴回りを千切った。



「よっと…!これで自由だ…。

ちゃっちゃと出口探さないとな」




―――

――



一方司たちは優の反応が消えた場所に到着した。



「はぁ…はぁ…!ここか…!?

 白凪さーーーぁんッ!聞こえたら返事をくださいッ!」


「…」


「部長?どうしたんすか…そんな神妙な顔して?」



「みのりん感じない?

 何か変な感じがするんだけど…」


「変な感じ…ッすか…?

 俺には何も感じないですけど…」



司は反応が消えた辺りを調べ始めた。



「…?

 なんだろ…こっから先…なんか変だ」


「変だって…そっちは道じゃないっすよ?茂みも鬱蒼としてるし…危ないっすよ」



「…ここじゃない…。ここでもない…」


司は瀬那の言葉を聴かずに茂みや木々を触れながらブツブツ独り言をいっている。



「ダメです…優さんいないですよ……何処に行ったんだ…」



「反対側も見てきたけどダメだった…天城…そんなに落ち込むな。

 部長が一生懸命探してる…きっと見つけてくれるさ」


「岡島先輩…」


「普段は無理難題ぶつけてくるわがまま部長だけど、

 あれでもここぞって時にはしっかりやってくれるんだ。

 今回だってきっと大丈夫さ」


「日下部先輩…」


「ふん…鬼部長だよ!まったく」


「はは…みんなありがとうございます…」




「!…ここだ…!

 ここが更に違和感が大きい…私の読みが正しければ…」



司は、ある一箇所の茂みに目をつけて手を伸ばした。



「感触がないわ…茂みに触れた時のガサガサといった感じがない…!

 間違いないですわ!この先に優はいる!」


ズズッ!


そう言うと司は茂みに溶け込むように入っていった。

茂みの物音一つ立てずに。



「ええ!?…おいみんなー!こっちに来てくれ!」


瀬那は皆を呼び集めた。



「部長がここに入っていったんだけど…なんかスーっていうか…

 ズブズブっていうか…」



ダッ!


勇が思い切って飛び込んだ!


「え!?ちょ!おいッ…!」


勇も同じように茂みに溶け込むように消えた。



「…つーわけですわ…。俺達も続くぞ…気味悪いけど」



4人も勇に続いて飛び込んだ。




―――

――



「いてて…て…て!?えええ!?」


瀬那は自分の眼を疑った。

目前にあった木々は消え、広い原っぱが広がっている。



鬱蒼とした木々もなく月明かりが辺りを照らしている。


「これは…」


「みんなも来たようね。

 すごいわ…ある種の結界か何かで守られた空間…。

 それに見て。まっすぐ行った先にある"あれ"…洞窟じゃなくって?」



司が指差す方に確かに洞窟らしき入り口がある。



「優はきっとあの中に連れ込まれたんだと思うわ…。

 皆覚悟はいいわね?こんな場所だからね…何が出てくるかわかったものじゃないわ」


「お、脅かさないでくださいよ部長…」



6人は洞窟に向かった。



第15話 完   NEXT SIGN…

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