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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第14話 夏休み編/緒斗の森2

SIGN 序章


第14話 夏休み編/緒斗の森2



緒斗の森にまず足を踏み込んだのは優だった。


「!」


一歩踏み込んだ…その瞬間に、明らかな違和感を感じた。



続いて司、瀬那たちミス研一同、最後に勇が入った。



「…優…。感じる?」


「ええ…。明らかに雰囲気が違う…。全身鳥肌が立ったみたい…」



どうやらこの違和感に気づいたのは夕見司、瀬那稔、天城勇…そして白凪優の4人のようだ。

他の3名は特に何も感じていないようだ。



「かなり強い霊気がこの森全体を包み込んでいるような感じだわ…」


「強いだけじゃないわね。この重苦しくて暗い感じ…嫌な感じだわ。皆大丈夫?」



司が振り返ると岡島大樹、日下部新二と椎名一の三人の顔色が悪いように感じた。



「な、なんか息苦しいっすね…」


「お、俺なんか気持ち悪い…」


「ぼ、僕もなんだか眩暈が…」



まずいわね…。

霊に対する抵抗力がない普通の人間が悪霊の気に当てられた時の症状だ。


これが悪化するとネガティブ思考になったり、気絶したり…憑依されることだって十分にある。


このまま連れて中に入っても大丈夫かしら…。



「優、ここは私に任せて頂戴!」



司が意気込んで申し出てきた。

顔を見る限り自信がありそうだ。


司は目を閉じて集中を始めた。



「…?」


これは…司の霊気…?


司を包む霊気が広域に広がり始めた。

暖かい、優しい感じがする。



「ふぅ…守護霊壁よ…。

 範囲も威力も弱い簡易版しか出来ないけどね。

 どう?3人とも!さっきよりかは楽になったんじゃなくって?」



「流石部長っす!全然楽になったよ!」


「俺も!部長すげぇ!!」


「ま、まぁ…たまには役に立ってもらわないと困るからね」



三人の苦痛に歪む顔が笑顔になった。

今の力…私には出来ない芸当だ。


この子はこの子なりに努力を積み重ねてきたんだね…。

ちょっと見直したわよ司。



「ふん!どう?あなたにこんな事できて?優ちゃん」



カチーーン!



「あんたって奴は…ちょっち見直したと思ったらすぐそれかい!」



あぁ損した!



「まぁまぁ…それよりも、始めるならとっとと始めましょうよ。探索」


「みのりんの言うとおりね。さぁみんな進むわよ!」



司、稔、新二、大樹、勇、一、優の順で進むことに。


暗闇を懐中電灯で照らしながらゆっくりと進む。

足場はそれほど悪くないにしろ、ほとんどが闇に包まれている森の中だ。


一歩一歩確かめながら歩いていく。


それにしても、この闇の中…妙な静けさが相まって、より一層恐怖を感じる。




「点呼いくわよ!1!」


「2!」


「3!」


「4!」


「5!」


「6!」


「7!」



全員いるようだ。

まぁ歩き始めてまだ10分といったところだ。

今の所一本道で迷う要素はない…。



「みんなちょっとストップ!」



急に司が静止するように声をかけてきた。



「どうしたんすか?…あ!」


「どうやら分かれ道のようですわ…」


左右に別れている。



「本来の目的からすれば二手に別れるのが得策だと思うけど…

 正直危険だと私はおもうわ!迷う可能性もあるし」


「その点は心配しないでいいよ」



椎名一が自信満々にいう。



「これを見てくれ」


一が持っているのは小さなモニターのついた機械のようだ。



「これは?」


「受信機モニターさ。こっちに光ってる点が入り口。

 僕が発信機を木につけておいたんだ。

 このモニターはもう一つあるから、二組に分かれて持てばいい。

 これだったら迷っても発信機の信号場所がわかるから迷うこともないでしょ?」



確かに。

今現在こうやって使えてるってことは電波とかも大丈夫だと思って問題ないだろう。




「ちなみに発信機はあと2個。今光ってるここは現在地。

 つまり僕が持ってる2個の発信機を表している。

 この二つもそれぞれ持ってれば二組が合流も出来る!

 どうですか?すばらしいでしょう!」


メガネをくいっとする一。

確かに無能ではないようだ。



「仕方ないわね。じゃあ私とあなた達3人で左に行く」


司は新二、大樹、一を指して言った。



「え?俺は…?部長」


「みのりんは優についてあげて。

 流石に二人では危ないかもしれないし…。

 こっちはこっちで、この3人は私の守護霊壁がなきゃ動けないんでね」




「なるほど…3人とも部長を頼むよ」



「任せといてくれや!部長は俺らが絶対守るからよ!」

「大樹…」


「うんうん!俺達普段あんま役に立てないからな…たまにはいいかっこさせてくれよ。な?」

「新二…」


「まぁ…あれでも一応女の子だからね…守ってやるさ」

「一…」



いい…仲間たちなんだね。



「大丈夫よ!私は皆に守られるほどやわじゃないですことよ!

 気持ちだけありがたく受け取っておくわ!」


「あんたも素直じゃないわね司」



「あ、あなたに言われたくないわ!優!

 その…えっと…みのりんを…よろしく頼むわよっ」


照れながら優に頼む司。


「言われなくても、任せておいて」


「優さんよろしくお願いするっす…」



深々と頭を下げる瀬那稔。



「え!?ちょ…瀬那先輩やめてくださいよ!私一応後輩なんですけど…」


「はは…。君もよろしくな…天城君」


「ええ!よろしくお願い致します!瀬那先輩!」



こうして二手にわかれて捜索することになった。



左の道を司たちが、右の道を優たちが進むことに。



「優ー!もし洞窟を見つけても入らないで私達を待ってね!

 私達も同じようにあなたたちを待つから!」



少し離れた場所から司が叫んだ。




「はーーいっ!了解よー!」



大声で返事を返す優。



両グループはお互いの道を進み始めた。





―――

――




「部長…このまま道なりに歩いていて洞窟にたどり着くのかな…」


「新二君は相変わらず心配性ね。まぁ確かにこのまま進んで見つかるかはわからないけど、

 だからといって道を外れて歩けば危険も多いわ。

 私が思うに洞窟は普通の人には見えない…ある種の結界の先にあると考えているわ。

 だからそれらしい反応を私が感知できればと思うんだけどね…」


「一…大丈夫か?」



大樹は後ろを歩く一が心配で振り返ると、少し遅れ始めているようだ。



「大樹先輩…ちょ、ちょっとだけしんどいかも…」


「部長ー!少し休みませんか?一の奴が疲れたみたいで」



「ふぅ…やれやれね。

 確かに暗闇の中、不安な気持ちで歩き続けるのはしんどいものね。

 いいわ。少し休憩しましょう」



司たちは休憩することにした。



その頃優たちは…。




―――

――



「2人ともいるよね?」


「いますよ!」


「いるぜー」



よし…はぐれてないわね。

それにしても…中に入り込めば入り込むほど霊気の強さが増していく感じだ。




ガサッ!!



茂みのほうで物音がする。

三人は同時に足を止めた。



「…白凪さん…」


「しっ…」



3人に緊張が走る。



ガサッ!!


勢い良く何かが飛び出した。


どうやら野うさぎだったようだ。



「ほっ…ウサギか…」



スゥッ

何かが瀬那稔の横を通りすぎた。


「!…危ない!!」


瀬那稔の叫び声と同時に優は首筋に激しい痛みを感じた。

そして優の体はあらぬ方向へ飛ばされたようだ。



スタッ…


「…」


無言の人影が不気味に立っている。



「…く!誰だ!」


すかさず稔は人影に光を当てる。


『!!』



稔と勇は驚いた!



「…死体…」


スーツを着た腐乱死体がそこにはいた。

顔面は腐食が激しく、目玉が飛び出ている。



「白凪さん!大丈夫ですか!?」



返事がない。

どうやら先ほどの不意打ちで気を失ったようだ。



「天城君…こいつはどうすればいいんだ…?」


「戦うしかないでしょうね…。

 こいつが優さんを攻撃したってことは…敵ですから」



「コォォォオォォ…」



「天城君…君は彼女を見に行ってくれ…。

 こいつは俺がどうにかしてみるわ…無理かもだけど」



瀬那は空手のような構えをとった。



「…任せても大丈夫ですか?先輩」


「ああ…。いってくれぃ」



勇は優が飛ばされた方向へ駆け出した。


同時に瀬那もゾンビに向かって駆け出していた。



稔は顔面を狙い、右の拳を放った。


スカッ…!



「!」



華麗なフットワークでそれをかわす死体の男。

かわすと同時にカウンターは放たれていた。


勢いのある蹴りは稔の首筋を狙ったものである。



「っぶねッ!」



それを紙一重でかわす稔。



「おいおいおいおい…!

 想像してたよりずっと俊敏じゃないか…ゾンビちゃん…

(今の蹴りも直撃はやばい感じだった。…クソ…暗闇のハンデつきじゃ分が悪いぜ…)」




―――

――



「優さん!!どこです!!

(いない…!そんな馬鹿な…)」


勇は辺りを手当たり次第照らすものの、形跡すらみつからないようだ。



「!…この茂み…不自然にへこんでる…。

 何かが衝突したような感じだ…まさか…白凪さんはここにぶつかった…?

(この辺りにいるのか!?)」



勇は重点的にその付近を捜し始めた。



―――

――



「はぁ…はぁ…」



稔は苦戦していた。

どちらも攻撃を放つものの、一打として当たることが出来ないでいる。



「にゃろう…絶対やりたくなかったんだけどな…

(掴んで頭突きとかボコボコ殴りつけるのは…なんていうか気持ち悪いしね…)」



「コォォォオオオォオオ…」



「はは…俺を食う気まんまんって感じなのかな…。

 いっちょやりますか…」



第14話 完   NEXT SIGN…

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