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SIGN 序章  作者: WhiteEight
12/40

第12話 圧倒的な差

SIGN 序章


第12話 圧倒的な差




「…聞くまでもないか。

 この仕業…あなたね……」


「くっく!

 早く喰いたいなぁ…」



タッ!

片桐は物凄い跳躍で優を飛び越えて、


"こちらへ来い"



と言わんばかりに手招きをする。



どうやら、周りに倒れている連中が邪魔になったようだ。


優は誘いに乗って場所を少しずらした。




「あなたの目的はなに?

 本当は係わり合いになることは避けたいところだけど…

 ここまで巻き込まれてしまっては仕方ないわ」


「目的?

 単なる殺戮だよ…それ以外に何がある?」




「器にしてるその人間には恨みはないの?」


「ないね。

 コイツは力を欲していた…だから力を貸してやったのさ!」




「そう…。

 ただの快楽のために人を傷つけるというのならば、話は簡単ね。

 遠慮なく叩き潰す!」


「いいねぇ…どうせ殺るなら威勢のいいほうが殺り甲斐があるってもんだ」



連日のように凶悪な霊が現れる。


この異常な事態の原因はわからない…だが、放っておけば大変な事になる…。

それは間違いない。



倉庫の狂気化した悪霊…そして狐の霊…。

昨日の女性に憑いた霊…。


今目前にしている霊の力は狐を上回るものではない。


それに相手は一人…。


やれない事はない…!



だが、先ほどの動き…油断は出来ない。

最大限に注意を払え…!




「…女ぁ……

(この女何者だ…?

 隙がねぇ…実戦慣れしていやがる。

 それにさっきとは雰囲気が違うな…臨戦態勢ってやつか。

 あの霊気の強さ…下手をすれば喰われかねない…。

 ここで殺り合うには割に合わないか…?)」



タッ!


優は構える片桐に正面から向かっていった。

両手には札を構えている。




「ちぃッ…!

(破邪の札か…!

 かなり大きな霊気を感じる…!

 あれを喰らうのはまずいな)」



ヒュッ!

片桐は素早く後ろに跳んだ。



…。

札に警戒しているか。

狂気化してないが、冷静な分こちらのほうが厄介かもしれないな。



優は足を止めた。




「くく…やるなぁ。

(このままではラチがあかないか…。

 ならば一気に攻め落とすのみ…死ね)」



「!」



雰囲気が変わった…?

来るか!?



サラッ…


!?…何か感じたような…?



「はぁッ!!」



片桐が正面から突っ込んでくる。



「?」



「死ねッ!!」


片桐の勢いに乗せた左ストレートが優の顔面を狙う!



スカッ!!


しかし、攻撃は空を切った。

優は余裕で攻撃を見切ったようだ。



「何!?」


「何意外そうな顔してるの?

 そんな見え見えなパンチ、私じゃなくてもかわせるわよ。

 ハッ!」



優は攻撃後の隙だらけの側頭部へ思い切り跳び蹴りを食らわせた!



「がはっ!」


片桐は吹き飛んで地面に叩き付けられた。

大男に対して普通の華奢な女子高生が蹴ったくらいでは、あれほどの衝撃を与えることは出来ない。


優は攻撃に移る時に霊力で筋力を増強して攻撃をしている。


このコントロールは簡単ではない。

それを即座に出来るのは、天性の才能といえる。




「…?」


こいつ…登場時のような速さがなかった…。

一体何なの?


今のは計算でわざとやられたの?




「…こいつ…

(霊気は強いが…今の蹴りに霊的な力は込められてなかった…。

 こいつ…自分自身ではまだコントロールしきれていないのか?)」



ダッ!


再び突進してくる片桐!



「何度来ても無駄だってわかんないの!?

 今度は"コレ"をくらわせてやるッ!」



優は札を構えた。


「はぁッ!!」


先ほどと全く同じ要領で左ストレートを顔面目掛けて放つ!


今度は優は素早くかがんで攻撃をかわした!



「な、なぜ当たらんのだ!?」


「?…単純にッ!遅いからッ!よッ!!」



優はカエル跳びアッパーの要領で札を持った右の掌底を顔面に放った!



バチバチッ!!

凄まじい衝撃が片桐を襲う!



「ぎゃああああッ!!」



片桐は顔面を押さえながら悶絶する!



「…はぁ…はぁ…ッ!

 なぜ"奪えない"ッ!!」



「奪う…?」



「…く…!そんな事も知らない小娘に…俺は…ッ!」



何を言ってるんだ…?



「うああああああ!!」



片桐は半ばヤケクソ気味に突っ込んできた。


だが、先ほど同様に攻撃はかわされ、優の札を受ける!




「…ぐぐ…はぁ…はぁ…」



もはや虫の息…。

あと一度の攻撃で終わる。



「ち…悔しいぜ…。

 勝てると…喰えると踏んだんだがなぁ…」



「観念するのね…。

 私はあなたに同情はしない…祓うわよ」



優は札を構えて一歩ずつゆっくり歩み寄る。



「教えてやるよ…。

 俺に勝った褒美だ…」





「奪う…とは…"意識"のこと…。

 俺のような闇の力に堕ちた霊魂は当たり前のように使う…」



!!


意識を奪う…!


何か色々と合点がいった。

今までも幾度と無く動きを見失うほどの速さの相手を見てきた。


だがそれは"速さ"ではなく意識を奪っていたから…。


その間に移動していたら、一瞬にして移動したかのように錯覚するわ。



こいつらそんな裏技を使っていたのね…!



「なるほど…。

 で、私の意識は奪えなかったの?」


「ご覧の通り…そのようだ…。

 全く…こんな人間がいるなら他の場所で暴れるんだった…」




「あなたがどういう経緯でそのように歪んでしまったのか…。

 それはわからないけど…一つ言えるのは人の幸せを…生を奪ってまで得られる幸せなんてない。

 あなたがいくら人を殺めても…満たされることも楽になることもない」


「…かもな…。

 くく……あんたにもう一つ教えておこう…近いうちにこの街は戦場になるだろうな…。

 俺よりも、もっと深く…もっと黒き闇が…喰らいにくる…。

 意識を奪えなかったのはあんたが俺より格上だっただけのこと…次もうまくいくとは思わぬことだ」




戦場にって…。

一体何を知ってるの?



「あなたが知ってる事…全て話して!」



その瞬間だった。


片桐を物凄い波動が襲った。



「な、何!?」



光に包まれる片桐!



「あ…あ………」




片桐の中から感じる悪しき霊気が完全に沈黙した。




「今の光は一体…」



遠くから何者かが放った…破邪の波動…。


あんな真似が出来る人間がいるの…?




こうして夜の死闘は幕を下ろした。


優は慣れない治癒術で勇と須藤彰を回復させた。



といっても応急処置程度だ。



―――

――




「天城君…体のほうは大丈夫?」


「…ええ。大丈夫です…」



勇はかなり辛そうな表情をしていた。

怪我の痛みじゃない。


もう何度目になるか…自分自身の不甲斐なさ。



「…片桐をやったのはお前さんなのか…?」



須藤が質問を投げかけてきた。

優は一瞬ためらった。


どう答えるべきか…。



普通に考えて、この普通の女子高生がこの男を倒したなんて考えられない。

非常識も甚だしい。



「えっと…それはですね…」


「いや…いいさ。

 とりあえず、面倒になるし…ここから消えたほうがいい」



た、確かにそのほうがよさそうだ…。



優たち三人は立ち上がった。



「須藤先輩…?」


「俺はいい。お前達だけでいってくれ」



どうやらこの須藤って人は全て自分が責任を取るらしい。



「まってください…!

 彼らは僕がやりました…!先輩は関係ないでしょう!

 それに絡んできたのは彼らからです!一人相手にこの人数ですよ!?

 正当防衛って言えば…通じる話ですよ」


「まぁな…」



「だったら…!」


「天城…頼む。

 俺のわがままだ…何も聞かずにここは俺に任せてくれや…」



「先輩…」


「天城君行こう…。

 先輩の顔を立ててあげましょう」



この人はこの人なりに決着をつけたいんでしょうね…。




優と勇は去っていった。



―――

――



「うぅ…」



片桐が目を覚ました。



「目が覚めたか、片桐…」


「須藤…。

 俺はいったい…」



須藤は記憶がなかった。




「こいつらとは話し合った。

 もう馬鹿な争いはやめるってことで納得した…なぁッ!」


「あ、あぁ…。

 片桐さん…すんません…。

 俺らも片桐さんもやられちまって…もうこいつには関わるだけ無駄って…。

 もしまだやりたいならアンタだけでやってくれ…俺達はもうやめる…」



「織田…。

 わかったよ…俺の個人的な恨みからテメェらを巻き込んじまったのはすまなかったな…」


「片桐さん…」




「須藤…今度からは俺一人で挑むつもりだ…正々堂々な…。

 俺はこいつらを従えてお山の大将気取りで強くなったと勘違いしていたんだな…。

 次はこうはいかねぇ…覚悟しておけよ」



片桐はニヤっと笑った。



「あぁ。いつでもきやがれ!

 ただし学校外でだぞ…停学はもう勘弁だ」



須藤もニヤっと笑って返した。




―――

――



「…ふん…やはりあの程度ではあの女には勝てなかったか…」


男は呟いた。



この男こそが…近い未来、東部久木を戦場へと変える事となる。


「もう少しだ…。

 あと少しで計画は本格始動する…。

 それまではひと時の平穏を味わうがいい…白凪優…」




第12話 完   NEXT SIGN…

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