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SIGN 序章  作者: WhiteEight
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第11話 死闘

SIGN 序章


第11話 死闘



勇たちは河川敷にやってきていた。

さらに人通りが少ない場所へと移動し、不良達は勇を取り囲んだ。



「…で…。

 先輩達…こんな場所で何をしようっていうんです?」



「んなこたぁ、てめぇが一番わかってんだろ?

 あぁ!?」



「…。

 (今朝の男か。他の面子を見る限りリーダー格…)」



勇は相手との間合いなどを見つつ、常に警戒態勢をとっていた。

彼にとって一人一人は格下といえど、やはり一対多となれば油断は出来ない。


おまけに勇の性格からして丸腰の相手に木刀を使う気もない。



「おいおめぇら!

 やれ…!病院送り程度は問題ない!くく!」



男は輪から外れ、後ろに下がった。



「…7人…か。やれやれ…」



正面の男が突進してきた。

大柄の男だ。


捕まったら少し厄介だと判断した勇は、身を屈め男を足払いでこかした。



それを見て他の者も追い討ちをかけようと一斉に飛び掛ってくる。

だが、勇はつかまらんと、男をこかして出来た"輪の穴"から飛び出した。



これで囲まれていない状態。


こうなれば、後ろを取られないように動けばグッと戦いやすくなる。



「こいつ…ちょこまかと!」


不良達は頭にきたのか突進するばかりだ。

だが勇にとってはこの上ない好都合。


血が上って動きが直線的になりすぎている。


ほら。

足を払うことがこれほどまでに容易。



次から次へと襲い来る相手を、軽快な体さばきで交わしつつ、攻撃を加える。


勇の拳は途轍もなく速く…重い!

それは日々、あの特製仕様の木刀を振るっていることが起因している。



勇は剣道の経験はあれど格闘技の経験はなかった。

しかし、鍛え抜かれた肉体と、類まれなる動体視力。


並みの人間程度の動きは手に取るようにわかった。



気づけば7人は全員地に伏せていた。



「…終わりましたけど?

 まだやりますか?先輩」


「やっぱ…つぇえはお前。

 まぁ安心しろや…そいつらは前座だ。

 そろそろ…本命が着てくれる…くくく」



男は余裕の笑みを浮かべる。

今の勇を見てなお、勝てる自信があるということなのか?



「先輩…約束してください。

 僕が勝ったら、もうこれっきりにすると」


「いいだろう…勝てたらな!

 まぁ無理だろうがな!くくく」



それから10分…

一人の男がやってきた。



「…あなたが相手か…。

(身長は180cmといったところか…。

 割と筋肉質…。

 須藤さんよりは小さいけど、明らかに他と違う雰囲気だな)」



「片桐さん…こいつです…生意気な一年は!」


「…ふーん。

 見た感じ、そんな強そうじゃないけど…。

 ま、遊んでやるか。メインディッシュが到着するまでな」



男はゆっくりと勇の間合いに入る。



「…はっ!」


勇は向かってくる男に渾身の右ストレートを腹部目掛けて放った。

しかし当たった感触はない!


「外した…!?

(あの距離で!?)」



一瞬速く片桐は避けていた。



「渾身の一撃ってのは撃ったあとが隙だらけなんだぜ?」



ドスッ!!


片桐の膝蹴りが勇の腹部を貫く。



「ガハッ…!」



「ふん…この程度かよ」



勇はなんとか踏みとどまった。


「はぁ…はぁ…

(まさかあの距離でかわされるなんて…予想外だった。

 あの体で割と俊敏なんだ…)」



勇は距離をとって、息を整えた。



「へぇ…あんま効いてなかったか。

 普通、立ってられないんだけどな」



「もう…油断はしない…!」



勇は集中をはじめた。

それにより雰囲気がかわった。



「!」



片桐もそれを感じたのか、勇の間合いに入ろうとする足を止めた。



二人はどちらも動き出せぬまま、微動だにしない。


そんな中、先にしびれをきらせたのは片桐だった。


正面!顔面狙いの右ストレート!



勇は頭部、いや体ごとそらして攻撃を紙一重でかわす。

だが間合いは詰まった!


男はそのまま、膝蹴りをそのまま繰り出す!


だが、それを読んでいた勇は

すかさず膝蹴りを繰り出した右ももへ肘鉄を振り下ろす!



「グッ…!」



片桐は一瞬よろめいた。

もちろん勇はそのチャンスを逃さなかった。



渾身の右ストレートが片桐の顔面を抉る!!

見事にクリーンヒットし、片桐は勢い良く吹き飛んだ。



「はぁ…はぁ…」



常人なら今の一撃で終了だった。



「ペッ!」



片桐は何かを噴出した。

どうやら今の一撃で奥歯が折れたようだ。


だがしかし、気絶どころか立ち上がった。



「…なかなかどうして…くく」



片桐の雰囲気が何か変わったような気がした。


ゾクッ!



勇は瞬間的に後ろへ数歩下がった。




「…

(気圧された…?

 なんだろう…この変な感覚…。

 あの男から妙な違和感を感じる…)」



勇の体から冷や汗がにじみ出る。



「…血が見たいな…。

 お前のような粋のいい奴の血が…」




!!


片桐が一瞬にして勇の目前へ現れた。

確かな間合いがあったはず!


勇は咄嗟に両腕を顔面の前に持ってきた!


ドガンッ!!



勇は吹き飛んだ。


腕でガードしたにも関わらず物凄い力で吹き飛ばされたのだ。



ポタ…ポタ……。


勇は鼻血を垂らしている。



「く…

(ガードした腕越しに打たれて思い切り鼻打ったな…。

 それに今の一撃で頭打ったみたいだ…くそ…)」



勇は眩暈を覚えていた。


その隙を片桐は逃すはずがなかった。



ビュッ!


またしても反応が追いつかない程の迅さ…!


片桐の蹴りで、倒れかけていた勇は宙を舞う。



「…がは…」



勇は意識が飛びそうになっていた。

もの凄い衝撃…一打一打が決定打だ!



ドサッ!


勇は受身を取る力も残っていなかった。

背中からもろに地面に打ち付けられた。



「ひひ…!

 もう終わりか?」



倒れた勇に迫る片桐。

先ほどとは打って変わって表情に危なさを感じる。




片桐は急に足を止め振り返った。



「きたか…」



「…片桐…お前!」



そこには須藤彰が立っていた。



「て、てめぇ須藤…!

 ま、まぁ丁度いい!片桐さん!こいつもやっちゃいましょう!」


「織田ぁ…黙ってろ。

 お前に言われんでも最初から"こいつ"の狙いはこいつだぁ」




「…?

 お前久々に見たら、なんか完全にキマッちまってるな…。

 薬でもやってんのか…てめぇ」


「くくく!!

 薬より、もっといいもんだぜ…"俺"という強壮剤だ!」



意味不明の言葉を発する片桐。



「う…うう……」


勇は立ち上がった。



「天城…!

 お前はもう寝てろ。

 あとは俺がやる…。元々は俺の問題だ」



「先輩…逃げてください……!

 こいつ…普通じゃない…!」



息も絶え絶え、足もフラフラ。

すでに立つのもやっとといったところか。



「お前も後で食うんだから今はそこで大人しくしてろ。

 まずはメインだ…ひひ」



ダッ!

片桐は凄まじい勢いで須藤に向かって突進した。



「!」


「遅いッ!」



ドカッッ!!


咄嗟にガードの態勢を作ろうとした須藤だったが、わずかに間に合わなかった。

片桐の渾身の右ストレートは須藤の顔面に突き刺さっていた。



「…!?」


「…ふん…確かに普通じゃねぇようだ…!」



ブンッ!!

須藤は油断した片桐目掛けて拳を振るった。

しかし、それを紙一重でかわす片桐。



「ち…!」


「…俺の全力で倒れない…どうやら頑強さは人並み以上というわけだな…」



そうは言っても須藤にダメージはあった。

額は切れ、血が流れている。



「…

(こいつは本当に俺の知る片桐かたぎり りょうなのか?

 確かに強かったが、せいぜい俺と同等か、それ以下…力も半端じゃない上に…

 なんださっきの動きは…?まるで見えなかった…)」




―――

――



その頃…


優は走っていた。


嫌な予感がしたからだ。


何処に勇がいるのか…それはわからなかった。


ただ走っていた。


彼がいそうな場所を走っていた。




「!」



そして彼女はたどり着いた。


偶然か否か…


だがそこは惨劇の場になっていた。



勇も須藤彰も倒れ、他にも複数倒れていた。




「一体これは…」



優はすぐに倒れている彼らに駆け寄った。




「天城君…!大丈夫?」



ダメだ…気を失っている。


この人…さっきの大男…!

偉そうなこといって、伸びてちゃ世話ないわね!


それにしても、皆すごい傷だらけじゃない…。

でも立ってる人が居ないところを見ると…やった奴は逃げたのかしら?




「やぁ」



!!

優は突然の呼びかけに振り返った。


しかし、誰も居ない。



「君が誰かは知らないけど…

 君の力には興味があるな」



!!

いつの間に後ろに…!


優は急いで距離をとった。



「ふふ…」


「あなた…誰?

 皆をやったのはあなたなの?」



何こいつ…

わからない…妙な違和感を感じる…。



「"お前"は寝てくれ…どうやら"俺"の獲物のようだ」



片桐は独り言をぶつぶつ言い出した。



ザワッ!


一瞬にして鳥肌が立つ。


この感じ…!間違いない…!

この男…とり憑かれている…怨霊に…ッ!


見渡せば、倒れている全員にサインが見える。




「くく…美味そうだ」




第11話 完   NEXT SIGN…

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