表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SIGN 序章  作者: WhiteEight
10/40

第10話 帰ってきた二人

SIGN 序章


第10話 帰ってきた二人



―――聖ヶ丘病院


「…」



あれから程なくして亜子姉ちゃんが着てくれた。

事の経緯を話し、痛んだギャルと天城君の応急処置をして、救急車を呼んだ。


ギャルは一命を取り留めたものの、体中の筋を痛め、骨折や内臓への損傷も激しく重症らしい。


天城君のほうは元々それほど大きな怪我ではなかったが、

念のため検査を受けた。


一本肋骨にヒビが入っているかもしれないそうだ。

現在詳しく検査をしている。



「…ありがとうございました」



勇が診察室から出てきた。




「大丈夫!?どう…だったの?」


「心配ありません。

 ちょっと肋骨にヒビが入ってる程度で一月もすれば大丈夫だそうです。

 まぁ激しい運動はなるべく控えるように言われましたけど」



ほっ…。



「心配したよ…」


「あなたの言葉を無視して、向かった結果ですから…

 自業自得です」




「二人とも…ごめんね…

 私がもっと早く来ていたら…こんな目に合わせなくて済んだのに…」



さっきから自分を責め続ける姉・亜子。



「お姉ちゃんのせいじゃないって…。

 もう元気出してよ!」



それよりもあの男…。



「霊王眼を知ってた…

 そして、自分のことを私と同じ眼を持つ者と言っていた…」


「恐らく五家の誰か…

 それは間違いないと思うわ。

 霊王眼のことを知ってるのは身内しか居ないもの」




「とにかく皆無事だったんだし…よかったじゃない」


優は姉の落ち込む肩を軽くなでて言った。



それからタクシーで地元まで帰り、姉は天城君を送っていった。




私はあの男の事を考えていた。


霊も人も…あいつは殺そうとした。

そこに迷いはなかった…。

霊と深く関わっている私達の中にあんな人がいるなんて…。



あの男の目…。

何処か物悲しさを感じたのは気のせいなのかな…。



なんだか楽しい日曜日が最悪の終わり方したな…。




翌日―――

――




ふう…今日も巫女様巫女様と…。

いい加減にしてほしいものだわ!



登校途中の優は不機嫌だった。


昨日の疲れからか、いつもより登校時間が遅れたため、

商店街の人たちに巫女様コールをうけてしまったためだ。



学校の校門をくぐる。

グラウンドに彼の姿は無かった。



「天城君…もう教室行ったのかな?」



と、その時だった。



「あぁら…巫女様じゃない?」



う…!

この嫌らしいイラっとくる声は…。


優はゆっくり後ろを振り返った。



「お久しぶりね…白凪優!」



「出たわね…。

 このオカルトマニア…」


「だ、誰がオカルトマニアですって!?

 そ、それのどこが悪いのよ!」



彼女は夕見(ゆうみ) (つかさ)

自称私のライバルで、オカルトマニア。


所属はミステリー研究会…。

個人でもネットのオカルトサイトを錐揉みしているようだ。


ちなみにこの子の両親とうちの両親は古くからの付き合いがあって、

子供の頃からの腐れ縁である。



「先週は学校休んでたようね。

 馬鹿でも風邪をひくんですわね!優」


「ふん…あなたこそ先々週は休んでたじゃない。

 あなたこそ風邪かしら?司!」



二人はいがみ合う。



「ふん…あなたにはわからないでしょうね!

 先々週はちょっとした遠征に行ってたのよ!

 もうあなたに負けないぐらい力をつけてるわ!」


「ふーん…あっそ。

 さぁて教室に行かなきゃ」



優はそそくさと教室に向かった。



「キーーーッ!!なんなのよ!あの態度!」





―――聖ヶ丘高等学校1−B組

――



「おはよー!」



皆に挨拶をしながら自席へ。

私が何日か休んでたこともあって、みんな心配そうに声をかけてくれた。



右斜め前の彼の席は空席だ。

教室を見回しても彼の姿がない。



「どうしたんだろう…?

 今日は休みなのかな?」




―――その頃・校舎裏で

――



「が、がはっ…」


不良4、5人を相手に一人で戦う男が一人。



「…す、須藤…。

 てめぇ…こんな真似して…タダですむと思うなよ…ッ!」


「…ふん。

 だったら口が利けないように…さらにやらせてもらうぞ?」



男は倒れる男の胸倉を掴んで拳を振り上げた!



「!…」



男は拳を振るうのを止めた。


そこには振るおうとした右腕の手首を掴む天城勇の姿があった。



「もう止めてください…。

 それ以上やれば、また停学処分になってしまいますよ」



男は力を緩め、男を下ろした。



「誰だ…お前?」


「僕は1年B組の天城勇といいます。

 いけないとは思いつつも、先ほどからこの人たちの会話聞かせてもらいました。

 この人たちのせいで濡れ衣を着て停学処分になった…。

 だから僕はあなたが怒るのも解ったし、黙ってみていました」



「…1年…天城…」


「でも、これ以上は流石に見逃すことは出来ない。

 怪我では済まなくなります…やめてください」



「ふん…。

 やめないといったらどうする気だ?」


「仕方ないですね…その時は僕が止めます」



勇の目は本気だった。



「ふん…1年のくせにいい目をしてやがる。

 安心しな。俺だって停学明けのその日に面倒を起こす気はねぇよ」


「…須藤さん…」



須藤はそのまま去っていった。



「け…!あの馬鹿野郎…ぜってぇ殺す!!」



不良が立ち上がり校舎の壁を蹴って言った。



「無理ですね。

 あなた達じゃ束になってもあの人には勝てない。

 今のでわかったでしょう?」



「あぁ!?

 てめぇ…誰に向かって口きいてんだ?あ?

 死にてぇのか?」


不良は勇の胸倉を掴んで迫ってきた。



「放して下さい…。

 それ以上やるなら僕も遠慮しませんよ?」


「遠慮だぁ!?

 1年のクセに…なんて生意気なガキだ!

 こいつぁ粛清してやらなきゃなぁ!」



不良は思い切り勇の顔面を殴りつけた。



「ハァッ!ひゃは!」


「…」


勇の口元から一筋の血が流れる。



「なんだぁ?その目は」


「…本当なら、あなたのような人間を相手にするのは嫌なんですがね…。

 ごめんなさい…最近負けっぱなしで、実は結構ストレス溜まってたんです」



「あぁ!?何の話だてめぇ!?

 シャブってんのかぁ!?あぁ!?」


ゾクッ!


不良は勇の目を見た瞬間、体が凍りついた。


その瞬間、男は視界が闇に包まれた。

一撃のもとに地面に叩き伏せられたようだ。



「ふぅ…。

 いけないな…こんな相手に本気を出してしまった…。

 これじゃあの人を止めた意味がないじゃないか…」


「くくく!

 お前、自分で俺を止めておいて、それはないんじゃないか!?えぇ?」



物陰から現れたのは先ほど去ったと思われた須藤だった。



「こ、これは!その…」


「いいよ。黙っといてやる!

 それよりもさっさと教室に向かうぜ?授業がはじまっちまう」



「で、でも…彼らは?」


「放っておけや!あいつらが悪い!」



そう言って須藤はニヤッと笑った。



「はは…」



「俺は2年C組…須藤(すどう) (あきら)だ!

 お前のさっきの一撃…なかなかやるじゃねぇか。

 お前気に入ったぜ」


「須藤先輩…

 さっきはなんか生意気言ったかもですみません」



「気にしてねぇーよ。だからそんな顔をするな。

 それよりもさっさといくぞ!鐘がなっちまう!」




二人は急いで教室へ向かった。




―――1−B

――



ガラガラッ!


「はぁッ!はぁッ!

 ふぅ…間に合った…セーフっ…」


「天城君!?

 どうしたの?寝坊?って…

 ほんとにどうしたの!?その頬の痣!それに…血の跡!?」



「あ!いっけな…!

 はは…ちょっとトラブルに巻き込まれちゃって…

 でも問題ないですから!」


そういうとニコっと笑って見せた。




―――放課後

――



帰宅途中。



「ふーん…そんな事があったんだ」



てかこの天然男でもキレるんだね…。

なんか意外な感じ。



「!…」



勇はふと足を止めた。


「どうしたの?」



勇の視線の先…校門の前に不良たちの姿がある。

朝よりも多い…8人ほどだ。



「…なに…あいつら」


「上級生の不良たちですね。

 今朝の件で仕返しってところですかね…」



「先生呼ぼうか…?」


「いえ…僕が行ってきます」


そう言って一人足を進める勇。



僕が…って…あなた怪我してるのよ!?



―――

――



「へっへ…!彼女とお別れはしたかい?」


「彼女じゃないですよ…

 そうなればいいなって思ってますけど…

 僕に話があるんでしょう?」




「察しがいいなぁ優等生!

 ちょっとツラかして貰うぜ」



そう言って不良たちは勇を取り囲むようにして何処かへ行ってしまった。



―――

――



「天城君…」


私を巻き込まないと…。


「くっ…!」


優が跡を追おうとしたその時。



「やめときな」


え?


振り返ると大柄の男が立っていた。



「誰…?」


「あいつはあんたを巻き込まんと…一人で行ったんだ。

 そこであんたがあいつを追えば、あいつの男気が無駄になる」



「そんな事関係ない!

 あいつは私の友達で…それに怪我だってしてるんだから…!」


「…。

 俺に任せてくれないか?」



「え?」


「元はといえば、俺があいつを巻き込んじまったのがいけなかった。

 責任は俺にもある…だからこいつぁ俺に任せてもらう」



この人…天城君が言ってた…

須藤…彰?



「じゃあな!」


そういって須藤は駆け出した。



優は黙って見送ることしか出来なかった。



「あの人からわずかに感じた霊気…」



なんだろう…大きくはない。

けど、何か他と違う感じがした…。




第10話 完   NEXT SIGN…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ