草いちご
悲しい詩なので、弱っているときにはお読みにならないでください。
また元気になってからお越しくださいね。
あれはもう昔のこと
わたしが白く花咲けば
子どもたちはそわそわと
紅い実りを待つのです
それはまるで昨日のよう
わたしがつやつや色づけば
子どもたちはうきうきと
笑顔でわたしを食べるのです
わたしはそれが嬉しくて
わたしはそれが邪魔くさく
わたしはそれが愛おしい
不思議な心地の春でした
ああでも今は草のかげ
子どもたちは目もくれず
わたしは一人朽ちていく
草いちご
草いちご
誰かに食べてもらおうと
紅く熟したはずなのに
今ではここにただひとり
甘さも量も何もかも
全てが足りぬとただひとり
食べてくりゃれと
露と泣く