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ギ家族  作者: 釧路太郎
編集者編

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48/49

編集者 その後

「谷村さんは裁判を傍聴出来なかったわけですけど、あれだけ取材して裁判を傍聴出来ないってどんな感情なんですか?」

「そうだね。正直に言えば、俺は傍聴したかったけど出来なくて良かったんじゃないかなって思うよ。花咲百合が最後に語ったことが真実なのかは知ったこっちゃないけれど、最後の最後でそんな事を言われてもどうしていいかわからなかっただろうしね。桔梗さんは傍聴しててどう感じたのかな?」

「私は終始何も起こらないんじゃないかって思ってたんですけど、花咲百合が言った事って本当なのか嘘なのかわからないのよね。こっちを見ていってくれればわかったかもしれないけど、表情を見ていないんだから判断のしようも無いわ。一番近くでその表情を見ていた花車弁護士はどう思ったんですか?」

「そうですね。私は何を言い出すんだこの人はって思いましたね。あのまま黙っていれば無罪とまではいかなくても有期刑で終わるんじゃないかなって空気はありましたからね。あのまま黙っていてくれれば超高額の報酬をもらえたと思うんですけど、最高裁まで行ったら死刑になってたかもしれないので今と変わらない状況かもしれないですよね」

「最高裁まで行ったとしたら、あと数年はあの事件にかかりっきりだったってことですもんね。こんな言い方はあれですけど、一審で死刑が確定してある意味良かったんじゃないですか?」

「たとえ死刑だったとしても、最後まで私は戦うつもりでしたよ。でも、百合さんが控訴せずに死刑を確定させてしまったんですから仕方ないですよね。私は最後まで戦いたかったんですけどね」

「花咲百合が死刑判決を受け入れたことで花車弁護士の評価が下がるのかと思ったら、花咲百合の心に寄り添って弁護していた事が判明して死刑判決なのに評判良くなってしまったんですよね。谷村さんにいたっては、テレビに出て怨霊だの呪いだの言ってたのに、花咲百合じゃなくて被害者の花咲撫子がその対象になっていたんじゃないかってことで評判は地に落ちちゃったもんね」

「俺も色々聞いてみておかしいなとは思っていたんですよ。花咲百合の同僚の人に簡単に話を聞くことが出来ていたし、警察も知らないような情報を桔梗さんからもらえたりしてたんですよね。今にして思えば、それって普通じゃないですよね。どうして桔梗さんはそんな情報を手に入れることが出来たんですか?」

「それはね、私の妹があの街で刑事をやっているからよ。これは偶然なんだけどね、妹が採用された地域で起きた事件なのよ。それで、他のマスコミが知らないことも知ることが出来たのよね。で、これは二人だけの秘密にしてもらいたいんだけど、誰にも言わないって誓ってもらえるかな?」


 谷村さんと花車弁護士は良くわからないけど頷いているようだった。

 私は口約束は信用しないようにしているので、二人にこれから話すことは一切他言しないという誓約書を書いてもらう事にした。

 この誓約書がどれほどの効力を持っているのかはわからないけれど、弁護士の連名があるのでそれなりに間違いないものになるだろう。


「これも偶然なんだけど、花咲百合の遠い親戚の人が私に連絡をしてきたのよ。編集部員ではなく私を名指しで指名してきたのよね。ちょっとおかしいなって思ったんだけど、これが嘘だとしてもネタになるんじゃないかなって気持ちで、電話をしてきた花咲百合の親戚に会うために北海道に行ってみたのよ。そうしたら、本当にその親戚の人がいたのよね。しかも、凄いお金持ちだったのよ。花車弁護士もあったことがあるからわかると思うけど、本当のお金持ちってこういう人の事を言うんだなって思ったわ。それから先はその人の指示通りに動いたのよね。谷村さんにはそれとなく伝えてみたんだけど、私達が思っているよりもしっかり動いてくれて助かったわ。谷村さんの記事が話題になり始めた時に弁護士を探そうってなったんだけど、花咲百合の性格を調べてみると男性よりも女性に心を開く傾向が見られたのよね。ま、色々あって花車弁護士に白羽の矢が立ったってわけなんだけど、二人とも想像以上に素晴らしい働きをしてくれたって言ってたわよ」

「そんな事があったなら俺には教えてくれてもよかったじゃないですか。でも、それがきっかけで話題になってテレビに出られるようになったのは収穫ですね」

「それなんだけどさ。谷村さんがテレビに出られるようになったのって、花咲百合の親戚の人の力なのよ。谷村さんの実力が無いって言ってるんじゃなくて、それだけ影響力の強い人なのよね。そんなわけだから、谷村さんは春からレギュラー卒業になっています」

「ちょっと待ってくださいよ。そんなのってあんまりです」

「まあまあ、これかも前みたいに地味な記事を地道に書いていきましょうね。花車弁護士はあれからどうなんですか?」

「私は以前よりは大口の案件は減ってしまったんですけど、たいしてお金にならないような依頼は増えましたね。結局、忙しさや収入はそれほど変化も無く対応する人が増えただけって感じですかね。依頼が増えたんで事務員さんを増やしたんで人件費は増えてしまっているんですけど、収入自体は変わってないみたいなもんなんで事務所の収入自体は増えているかもしれませんね」

「そう言えば、身元不明の首吊り死体って結局どうなったんですかね?」

「谷村さんは知らないかもしれないけど、あの人たちって数年前から行方不明になっていて疾走届が出ている人達だったみたいよ。訳アリの人だったみたいだけど、どうしてあの場で首を吊るようになったのか不明なのよね」

「お姉ちゃんには言っていなかったけど、それは解決したよ」


 約束の時間よりも遅れてやってきた妹のダリアが着いて早々話に割り込んできた。

 私の母は私が生まれて間もなく無くなってしまったのだが、父が再婚して出来た妹がダリアだった。

 新しい母はアメリカ人だったのだが、私は小さかった事もあってすぐに母に懐くことが出来た。

 母を亡くしてからずっと愛情に飢えていた私を新しい母は我が子のようにかわいがってくれたのだった。

 この点は花咲百合と花咲撫子の姉妹とは大きく違うところかもしれない。

 姉である花咲百合は実の母に虐げられ、同じ姉である私は血の繋がっていない母に大事に育てられたのだった。


「それでね、亡くなった人達の一人の身元が判明してからの警察の動きは尋常じゃないくらい早かったよ。世間では花咲百合の起こした事件の失態は警察の捜査が不十分だったと思われているってのもあったんだけど、真の黒幕が捜査をかく乱していたと判断した上層部が花咲百合の親族である花咲陽三に捜査のメスを入れたからね。警察は汚名を返上するために必死になって捕まえると思うし、花咲陽三に協力していた政治家やマスコミ関係者にもその手が及ぶんじゃないかって噂だよ。そうなったらお姉ちゃんはマズいことになっちゃうかもね」

「ちょっと、そんな笑えない冗談はやめてよね。でも、あれだけ影響力のある人が捕まったらありえない話でもないかもね」

「えっと、それって蚊帳の外に追いやられていた俺は問題ないってことですよね。桔梗さんも花車弁護士もこれから大変だと思いますけど頑張ってくださいね」

「私は山吹さんみたいに一緒に悪事は働いていないから大丈夫じゃないかな。そうとは知らずに依頼を受けただけだしね」

「ちょっと二人ともそんな意地悪なこと言わないでよ。捕まる時はみんな一緒じゃないと嫌だよ」

「お姉ちゃんの事は私が逮捕するから安心していいんだからね」

「そんなんじゃ安心出来ないよ」


 そんな事を言っている時に臨時ニュースが流れだした。

 全員無言のままテレビを見守っているのだが、そのニュースは法務大臣が死刑囚三人に対して執行命令書にサインをしていたというものだった。

 私達はそのニュースが流れている間、一言も話すことは無かったのだが、気持ちは同じだったと思った。

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