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ギ家族  作者: 釧路太郎
編集者編

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47/49

編集者 その四

 被告人の発言を聞いて傍聴席にいる人は泣いている人も少なくは無かった。

 事件の原因となった出来事は誰もが想像していなかったものだったのだ。

 被告人の言葉を聞いた陪審員の中にも涙を浮かべている者はいたのだけれど、誰も被告人から目を逸らすことが出来ないでいた。

 被告人の言葉には人の心を震わせるような力があったのだろう。

 一呼吸おいて、被告人はさらに言葉を続けた。


「この事は先ほど思い出したことなので、弁護士の先生もそちらにいる検察の方もご存じない事だと思います。というよりも、私の家族以外に知るものは誰もいなかったと思います。私を守ってくれる人がいない家族。私の味方が誰もいない家族。あの人たちにとって私は本当に家族だったのでしょうか。少なくとも、妹が生まれるまでの短い期間は大切にされていたと思います。皆さんが言うように、怨霊や悪霊が私たち家族に影響を与えているとしたのなら、それは私ではなく妹に憑りついていたんじゃないかと思います。少なくとも、妹の私に対する執着心は普通のモノではなく異常そのものだったと言えると思います。私のモノだけではなく私の好きなモノや欲しいものまで全てを奪おうとする妹の事が、私は怖くて怖くてたまりませんでした。何故か言っていないことも私のちょっとした変化で気付く妹が理由もわからずに怖かったのですが、悪魔がついていたのだとしたら言わなくてもわかっているのは当然の結果なんじゃないかと思いました。いつだったか忘れましたが、私は精神的に弱っていた時期があって、妹の勧めで精神科に通うようになっていました。私に付き添ってくれる妹は傍目から見れば姉思いの優しい妹に映ったのかもしれません。でも、実際は私を監視したいだけの執着心の塊でしかなかったのです。そんな状態の私にも職場には優しい人たちもいたのですが、なぜか休憩中に外でご飯を食べている時に妹と偶然出会うことが多く、そのたびに私よりも妹の方が職場の人達と仲良くなっていっているのだ怖かったです。たまに通っていた食堂やレストランに行くたびに、店員さんから妹さんによろしくねと言われることも怖かったです。私がどこかへ通うようになると、いつの間にか妹が常連になっているということが、たまらなく怖かったです。そんなことが出来る妹は本当に人間だったのでしょうか? それとも、悪魔か怨霊に憑りつかれたのでしょうか? 私にはそれがわからなかったのですが、妹は私に付きまとっていた時間が多かったのに、勉強も運動も私よりも格段に出来ていたのです。それも私には恐怖でしかありませんでした。学校に行っている間以外はずっと一緒にいるのに、何でもできる妹の事が同じ人間だとは思えませんでした。そんな妹が私と同じ人間だったんだということが理解できたのは、妹が私と同じように妊娠したという事実でした。私が妊娠した時とは違って、両親も彼も本当に嬉しそうにしていました。新しい命を宿した妹はそれまでの事が嘘だったかのように、とても穏やかで優しい人間になっていました。私にも優しくなって付きまとうことも無くなっていました。その時に私は思ったのです。あれだけ私に執着していた妹が変わったのは、妹の体に宿った命が妹からそれらを全て奪い取ったんだと。私はまだ見ぬ赤ちゃんが怖くて怖くてたまりませんでした。あれほど強い執着心を受け継いでしまっているとして、それが妹と彼の血と肉で出来ているのだとしたら、とても恐ろしいものになってしまうのではないかと考えてしまったのです。幸いなことに、家族のみんなは私の事なんかよりも生まれてくるであろう赤ちゃんに夢中で、私にかまうことなどなくなっていたのです。その事が嬉しかった私は、妹が生まれてから初めて家族になれたように思えました。私は本当にうれしくなってお祝いしたい気持ちになっていましたので、家族みんなに手料理をふるまうことにしました。料理は普段からしていたのでおかしいところは何もなかったと思うのですが、いつもと違ってコース料理を作ることにしたのです。コース料理にした理由ははっきりと覚えています。コース料理にしておけば、料理に混ぜた睡眠薬がちゃんと効くか時間をかけて確かめることが出来るからです。その後の事は検察の方が言った通りなのですが、これだけはハッキリ言わせていただきます」


 被告人がそう言って間を開けたのですが、多くの人からつばを飲み込む音が聞こえてきました。


「私の味方をしてくれた花車先生やマスコミの皆さん。私を応援してくださった多くの方や私を見守りに来てくれたこの場にいる皆さん。そして、陪審員と裁判官の方々。私はこれ以上ない明確な殺意をもって家族を殺しました。正確に言うと、家族を殺して妹の中に新しく生まれた私に対する執着心をこの世から消し去ることにしたのです。だって、両親や妹が生きていると、せっかく消した執着心が蘇ってくるかもしれませんからね」

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