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ギ家族  作者: 釧路太郎
弁護士編

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弁護士 その十

 記者会見が終わって控室に戻ったのだが、今まで感じたことも無いような疲れがどっと押し寄せてきた。

 携帯を見てみると、今までそんなにやり取りをしていなかった友人知人からたくさんの連絡がきていたのだ。中には名前は憶えているけれどどんな人だったか覚えていないような人からもきていたので、テレビは影響力が凄いのだと思ってしまった。

 帰り支度をしていると、ホテルの人から呼び止められた。

 なんでも、会見が終わった後にレストランで食事をしていくようにと陽三さんから言われているそうだ。

 緊張から解放された安堵感で空腹感を感じていた私はその誘いを受けてレストランへと向かうのだった。

 運ばれてきた食事はどれも美味しかったのだけれど、一人で食べるのにはもったいない雰囲気も感じていた。

 デザートも食べ終えて帰ろうとしていると、隣の席にいた女性が私に話しかけてきた。


「失礼ですが、弁護士の花車先生でよろしいでしょうか?」

「はい、そうですが。どちら様でしょうか?」

「よかった。私は先生に本日の会見で取り上げていた記事を書いたライターの担当編集をしている山吹桔梗というものです。月に一度のご褒美としてこのレストランを利用させていただく事があるのですが、先ほど編集長から連絡がありまして、先生に私どもの記事を取り上げていただいたおかげでアクセス数が急増してサーバーが落ちかけていたということを聞きまして、先生がホテルにまだいらっしゃるようでしたらお礼を申し上げたいと思っていたのですよ」

「そうだったのですか。此方こそ記事の利用を許可していただいてありがとうございます。あの記事のお陰で私の依頼者を見る世間の目も変わりそうだと思いますので」

「過去に実際にあった事件の影響が今の時代まで残っているなんて恐ろしい話だと思いますが、あの事件だけで影響が終わらないといいですよね」

「山吹さんは他にも事件が起こると思っているのですか?」

「それはどうなるかわかりませんが、あの土地一帯は何か起こりそうな予感がしているんですよ。私の担当しているライターにオカルト関係の者が数名いるんですが、霊媒師を連れて行ってみたところ、良くない反応が出ているという報告も上がってきているんですよね。このことも先生に取り上げていただけると助かるのですが、あまりにも現実離れした話ですので気になさらないでくださいね。ただ、そちらの記事もアクセス数が急増しているみたいですし、世間の声というのはどうなるかわかりませんよね」

「私は霊とかよくわからないのですが、実際に影響を与えたりすることってあるんですかね?」

「さあ、私も霊能力があるわけではないので話を聞くだけなんですが、自殺の名所みたいな場所は世界各地にあるわけですし、影響されないということも無いんじゃないかと思っていますよ。事件があった土地が本当にそうなのかはわからないですけど、これからそんな場所にならなければいいですよね」


 私は編集者の山吹さんと名刺の交換をして席を立った。

 山吹さんは食事の途中だったのだが、私がデザートを食べ終わるまで声をかけるのを待っていてくれたようだった。

 同じマスコミ関係者なのに、私の事務所に殺到していた人たちとは違う印象を持ったのだけれど、どこか安心してはいけないような気持になっていた。

 過去にあった事件が本当に存在するのか私はちゃんと調べたわけではないので信じているわけではないのだが、世の中にはテレビや新聞で報道されたことを真実だと思い込む人がいることも事実で、そういった人は意外と多くいるのだと私は知っていた。


 それから数日経って何度か会見を終えていたのだが、山吹さんと会うことも無かったし、向こうから連絡が来ることも無かった。

 私も知りたいことがあるのであの記事を書いている人と話をしてみたいと思っていたのだけれど、それはあの記事を書いている人にこちら側の有利になるような記事を書かせてしまうのではないかという思いもあって、連絡する一歩を踏み出せないでいたのだ。

 そんな記事くらいで世間の声は変わることは無いと思っていたのだけれど、今ではあの土地が呪われているということを知らない人はもういないのではないかと言うくらいに有名になっていた。

 私が記者会見であの記事を取り上げてからというもの、世間の関心はなぜ事件が起きたのかということからあの土地のせいで事件が起きたのは本当なのかと言う風に変わっていた。

 その理由はネット記事がテレビでも放送されたということもあるのだが、身元不明でどうして亡くなっていたのかわからない男性の遺体が見つかったということもあるのだろう。

 事件現場からそう遠くない場所であるのだけれど、その昔に鳳仙院と言う建物があったとされている場所の敷地内で首を吊って亡くなっていた人が見つかったということがあったのだ。

 自殺を助長すると言う事で報道はされていないのだけれど、日本各地から自殺志願者が集まり出していて、それに対応する事で警察などの人でも足りなくなっていたのだった。

 報道はしていなくてもあの土地に自殺志願者が集合しているという現実を知っているマスコミはその事を伏せて報道しているのだけれど、見る人が見れば自殺の名所のように人が集まっているのがわかってしまうだろう。


 凄惨な事件があったのは事実であるし、現場の近くで自殺があったのも事実である。

 世間ではあの土地に棲む怨霊の影響で自殺したのではないかという風潮になっていた。

 私の依頼者である百合さんが事件を起こしたのはその怨霊の影響なのではないかという世間の声は、私が想像していたよりもずっと大きくなっていて、今では警察関係者の一部でもそう言った声が上がっているそうだった。

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