ライター その四
ホテルで桐木さんの話をまとめていると、ちょうど桐木さんからメッセージが届いていた。
メッセージの内容はとてもシンプルなもので、「今日の夜なら舞島さんの予定空いてるそうです」とのことだった。
おそらくだが、今までで話を聞いた人間の中で一番容疑者の事をわかっている人物に話を聞くことが出来るのだ。
桐木さんだって容疑者の事は良く知っているだろう。
まだ俺は会ったことは無いが、容疑者の親友も容疑者の事は良く知っているだろう。
でも、その二人と違って舞島さんは容疑者と揉めたことがあるのだ。
それも、殺人事件を起こす少し前にだ。
もしかしたら、何も新しい情報は無いかもしれないが、それならそれで適当にでっち上げてしまえばいい事だ。
犯人は塀の中にぶち込まれているだろうし、生き残った肉親は一人もいないんだから俺がどんな記事を書こうが問題ないって事だろう。
それが編集部の方針なのだから俺には抗うことなんてできやしない。
そうは思っているけれど、出来ることなら俺も真実にたどり着きたいとは思っている。
犯人が誰かわかっているし、被害者は全員この世を去っているのだ。
では、読者が一番知りたいことは何なのだろう?
その答えは、犯人が家族を皆殺しにした理由なんじゃないか?
俺は警察官でも裁判官でもない。
それでも、どうしてあんな凄惨な事件が起こったのかは気になってしまう。
雑誌向けの記事を夜までに完成させておけば、あとは何とかなるだろう。
そう思いながらも、俺は彼女たちの職場から少し離れた個室付きの居酒屋の予約を入れておいた。
もし、彼女達の気が変わっても、この土地の名物を食べることが出来たならそれでいいと思っている。
グルメ情報誌向けのネタも必要になるかもしれない。
俺は一応、フリーランスで活動しているライターなのだから。




