ダークヒーロー6
「えっと、申し訳ないですが。おれの部屋に書類を共通袋に入れて置いといて下さい。」
「ええわかったわ。」
ドッペルさんが執務室から強奪した書類は、共通袋に入れられていたが、旅先で確認できる量ではなかった。
その為結局行き場を失いおれの部屋で、共通袋に入れ替えて保管して貰う事になったのだ。
やっべー、失敗したと思ったが何時までもくよくよするのは良くないと戒め気にしない事にした。
フライングボードを操舵し余裕を持って一日目の目的地である渓谷北の町サルビアに到着した。
そこで宿を確保すると町の様子を眺めていた。
やはり南北の連絡口に相応しく、物資を大量に載せた荷馬車の往来が激しく慌ただしい印象を受ける。
ただ慌ただしいのとは、対象的に宿場が多くどこだか寂しい一面も顔を覗かせる。
又、周辺の魔物の動きが活発ではないのか、歩いている者達は、のんびりと言った感じで武装してる者達も少ない。
そんな様子を眺めながら、カフェで紅茶を啜り優雅な時間を過ごしていた。
一夜明けて早速フライングボードに乗り、二日目の目的地である。騎士王国コロッサスを目指して出発した。
ルルビ大渓谷、アルガス山脈西に流れるボボア川が長い年月を掛けて山を浸食して出来た渓谷である。
南西に伸びるボボア川に沿って川の片側を荷馬車が4台以上並んで通れるくらい広い路が敷かれている。
また、その途中に国境検問所があり、行き交う荷馬車の入国を厳しく審査している。
実質マサルド領とコロッサス領の陸路はここしかなく、検問所付近はしばしば大渋滞が発生する場合もある。
渓谷南の町ガルビアを抜けた先には、遊牧民族が放牧をしながら暮らしている壮大な大草原が広がっている。
北の荒野と対象的に南部は肥沃で、家畜の飼育も盛んである。
コロッサスの南西部は比較的魔物が少ない。北西部のベヒーモ山脈に近付くにつれ多くなる。
そんな景色を眺めながら大草原を抜け。いよいよ騎士王国コロッサスが見えてきた。
空から見たコロッサスは中々圧巻の光景だった。
街の周囲を遠大な外壁が囲んでいて、この広さを全て囲うほどの外壁がそびえ立つ。
マサルドのメルヘンチックな雰囲気とは違い彩色兼備な雰囲気を醸し出している。
建物も、統一ではなく、煉瓦造りの建物や、木造の建物と種類も豊富であり、なおかつ5階建ての建物も所々見受けられる。
何より目立つのは、街の中心部に大きな城と東にあるコロッセウムが建てられている事だ。
また、城からは四方に道が伸び、機能的に敷かれた路は幾何学模様を思わせる。
それは、まるで国の国力を誇示するかのような、荘厳な造りとなっているのだ。
因みに、警備の面からも、街の要所要所に騎士が配置され、治安維持を行っている。
コロッサスに無事入国した俺は、ギルトカードの追加登録を終わらせコロッセウムへ向かっていた。
どうやら、この国の冒険者ギルトで仕事受ける場合、一回試験を受けなければいけないらしい。
まあ商人だから、あまり関係ない気もするが、やってみたい気もするのでとりあえず挑戦してみることにした。
露店でフランクフルトを買い食いしながらコロッセウムに向かう
しばらくすると4階建ての円形状の建物が姿を現した。
中では凄い歓声が聞こえる。
とりあえず俺は、中に入り受付に並んだ。
おっ順番が回ってきたな。
俺はギルトカードをみせながら
「あのーすみません。ギルトで試験を受ける必要があるって来たんですが。」
「かしこまりました。では手続きの為この用紙に記入を御願いします。」
そう言うと、受付嬢は登録手続きを進める。
俺は用紙に内容を記入していく。
名前、年齢、特技、出身地、その他。
判る内容だけでいいらしい。
名前と、特技に銃術とだけ記入した。
登録はこれで終了したが
ギルトに登録したてでFランクになるらしい。
ってよく見てみたら、カードにFって書いてある。
という事は、この前の討伐の仕事はFランクだったって事か。
マサルドで一切説明受けなかったがまあいっか。
とりあえず頑張ろう。
「よろしく御願いします。」
という訳で、試験を受ける事になった。
受付嬢は席を立ち、奥へと入って行き、一人の男を連れてくる。
試験官だろう。
「君が試験を受けるのかね? まあいい。ついてこい。」
そう言って、受け付けから闘技場の地下に案内された。
俺の様子を見ていた冒険者達が、何やら騒ぎ始めた。
「おいおい、タイミング悪い奴だな、試験受けるつもりみたいだぜ?
今日はイベントの日だぞ!」
「見たところ初試験っぽいし緊張してガチガチになるのが落ちだな」
歓声が凄くてあまりよく聞こえないが、タイミング悪いのはわかるかも。
試験は、闘技場で行われる。
「君はついでに前座として出て貰うから、今のうちに武器の準備をしたまえ。試験は何時でも受けれるから、偶々イベントと重なっただけだ。」
けっこう無茶苦茶な。
ついでって、見世物か。
「俺はここまでだ。なので試験内容を伝えよう。魔物達との一騎討ちになる。最初は弱い魔物だが、段々強くなる。一匹倒したら、次は連戦になる。ただし、武器を整えるとかのインターバルはあるのは伝えとく。因みに死んだ時点で終了になる。又倒した魔物の強さでランクが決まるからな。最後に御臨終したときは、安心したまえ、教会は今回無料になる。一度は体験させる決まりでな。ギルトの方針だから悪く思わないで欲しい。健闘を祈る。」
どういう決まりだがよく解らん。
まあそりゃそうだろう。
死んでも続けられる奴なんか見たことない。
一度御臨終しろってか中々の鬼畜ッぷりだ。
痛いよね。それって。
方針って、まあ方針なら仕方ないか。
「わかりました。」
「では、そろそろだな。このエレベーターに乗りたまえ。心の準備出来たら、合図しろ。」
俺が片手を軽く上げた瞬間エレベーターが動きだした。
上がっていくにつれ、更に歓声が高くなる。
エレベーターが上がり切ったその時木格子の門が静かに開きはじめ大歓声が轟く。
満員の観客、凄まじい歓声の中周りを見回すと所々に木格子の扉がある
その一つが開き始め、ゴブリンが出て来た
とりあえず近付かせて今だっ闇属性散弾銃
ゴブリンは爆発した。
まだ楽勝だな次は、オークね
こいつは倒した事あるな。
今だっ「デストロイヤー」
オークは、爆発した。
リロードして
「おーブラボー」
大歓声の中そんな声が響く。
さて次はビッグアントは爆発した
さて次だが、ジャイアントベアは爆発した。
リロードだな。
「おーパチパチパチパチ」
スタンディングオベレーションの拍手喝采が巻き起こる。
大分調子出て来たな。
おおっ一際デカい門が開いたぞ。
大物か。
だが、的がデカくなれば当てやすいからさほど脅威は感じない。
次はマンティスコアは爆発した
次は、ワイバーンは爆発した。
大歓声は静まり最早声も出ず、俺の戦いに見とれている。
何しろ、一撃で花火になる。
ワイバーンを倒した時点で次の魔物が出てこなくなった。
って事は試験は終わりかな!
そうこうしてるうちに俺の出て来た木格子の扉がふたたび開いたので
俺は両手をあげて声援に応えながら退場した。
「なあ、ワイバーンって、あの山脈の奴だよな?」
「ああ。一人で倒す奴初めて見たぞ。」
何だかそういう声が聞こえる。
「とりあえず終わりました」
試験官が待っていたので、終了しましたと告げるが信じられない様子で受け付けまで一緒に戻った
「すげーーー!!! 兄ちゃん!」
「パ~ティ組んでくれよ!」
などなど。盛大な歓声と勧誘が始まった。
俺商人何だがね。
「おめでとう、合格だ。」
そう言って、俺に握手を求めて来た。
「こちらが証明書になりますのでギルトに行っていただいて、カードど一緒にご提出下さい。」
受付嬢は流石にプロだな。
顔色一つ変えないで対応してくれた。
まあそんなこんなで、一躍ヒーローになったっぽいな。
ギルトに行って書きかえて貰うとするかな。
「兄ちゃん、兄ちゃん」
何だか小さな声が聞こえる。
ふと周りを見渡してみたが、それらしき人物は見当たらない。
いきなり建物の隙間から手が出てくるなり、おれをそこに引っ張ろうとする男がいた。
不意を突かれ、そのまま隙間に引き釣り込まれた俺は咄嗟に身構える。
「そう身構えんなって、コロッセウムで闘ってたの、兄ちゃんだろ~しっかし強いねーあんた。嘸かし名のある銃闘士だろう。」
ボロを着た薄汚い男は、おれを銃闘士と勘違いしてるみたいだった。
見た所一人で仲間もいないようだし。
襲ってくる気配がないみたいだが、こいつは、俺に何のようだろう。
危険はなさそうだが、とりあえず強い口調で問いただしてみるか。
商人としての悪い癖だろう。
「こんな所に引っ張っといて、一体何の用だ。」
ボロの男はよくぞ気味の悪い笑顔を見せる
そしてよくぞ聞いてくれました。と言わんばかりに喋りだす。
「おっ。俺の怪しい格好見て逃げたりしねーのは、やっぱあんた銃闘士か。俺の目に狂いはなかったな。ところで兄ちゃんさ。もっと強さが欲しいとは、思わないか。そりゃ兄ちゃんが強いのはよ~く解ってるつもりだがよ、更に強くなれる物があるんだよ。どうだいおひとつ。これを試合前に飲めば無敵って奴よ。もっと称えて貰う事だって思いのままさ。」
ボロの男が懐から片手で持てるくらいの黒いケースを取り出し中の白い錠剤を見せつけた。
おっこれは、挑戦状だな。
商人の俺に何か売り付ける気か。
よし演技だ。
「確かに、俺は強くなりたいと思っているが、そんな訳のわからんもんで、本当に強くなれるのか。まさか毒じゃないだろうな。」
俺が続きを言い掛けた途端
「おっと兄ちゃんの言いたい事はよーく解ってるって。俺が飲めって事だろ。飲んで薬の効果を見せてみろって事だよな。見せるのは構わねーが、こんな町中じゃろくに証明出来ないな。」
ふーん、あっさりと言うか、予め予測してた訳ね。
なら実演ね。だが万が一罠だった場合を考えて
「そこまで言うなら、軽く魅せて貰おうか。そうだな、この落ちてる拳大の石を砕く事が出来たら、買わせて貰おう。」
どう見ても痩せひょろだから、今の所砕けるって感じじゃないが。
「へっへッへ兄ちゃん、そんなんでいいのか。じゃあいくぜ。」
錠剤を口にすると、ちょっと効くまで待って欲しいとは言われたが、
痩せひょろの男が、みるみるガチムチマッチョになり石を握り潰した。
「へっへっへどうだいこのパワーに、スピードだってほら、自慢じゃねえが、おりゃそんな強くねえ。パワーが上がった所で兄ちゃんには勝てないだろう。兄ちゃんが、飲めばそんなモンじゃねえ。さっきのバトル料敵の強さ的に30万Gくらいだろ。それで手を打とう。」
その後少し説明を受け黒いケースを受け取ったが、どう見ても違法バリバリじゃねえか。
何て考えてたらボロの男がすでに消えていた。
まあちょっと周り探してみたが、どこにもそれらしきガチムチマッチョはいなかった。
マサルドならば、警備なんか全くいないから大丈夫だろうが。
ヤバヤバだよね。とりあえず特殊布袋に入れておけば大丈夫だが。
さてそうだった。ギルト行くんだっけ。
俺はギルトに向かった。
何だかんだでAランクを獲得した。この上は、試験が別にあるみたいで、最初で獲得出来るランクとしては、最高であるとの事だ。