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第7話 戦士ミソル・ダーイズ

慌ただしい一日目が終わりました。

翌日二人を訪ねてきたのは……

 その夜、俺はシュガーの家に泊めてもらう事になった。父親が使っていたという部屋を寝室にあてがってもらい、俺は昼間の疲れからぐっすりと眠る事ができた。

 翌朝、シュガーは父親の形見という洋服を譲ってくれた。


「随分不思議な衣類でしたからね。この辺りでは目立ち過ぎますよ」


 確かに現代日本の建設作業衣ではこの世界では違和感がありすぎる。

 思い入れのある洋服ではないのかと遠慮もしたが、父も喜びますと言われれば断る理由も無い。

 俺は部屋の片隅に置かれていた家族写真に一礼して、それを受け取り着換えた。


「似合いますよ。鑑定士風の意匠ですから、学者さんでも不自然じゃないのかもしれませんね」


 白を基調としてエプロン風の前掛けのついているそれは中々に格好良いのだが、どうも現実世界のコックコートを連想させる。

 しかしながら、とにもかくにもこの世界で生きていく一歩を踏み出したようで、俺は身が引き締まる思いだった。


「よっ、仕事あるんだって?」


 その時、ノックもせずに玄関のドアを開けて入ってきたのは筋肉隆々の大男だった。


「あっ、ミソルさん。いらっしゃい!」


 シュガーが出迎える。

 三十代後半に見えるその男は口ひげを生やし、腰には剣を携えている。どう見てもその類いの職業の方のようだ。


「紹介します。こちら、キュウヘイ・カラスマさん。旅の学者さんです」


 俺は恐縮しながらぺこりと頭を下げる。


「カラスマさんは美味しいおにぎりの研究で海に向かわれるんです。その護衛を探してられるんですよ」


 あながち間違いではないが、その説明では俺のスキル『食道楽』が変なイメージで定着してしまいそうだ。


「おぉ、学者の先生か。俺はミソル・ダーイズってんだ。村の用心棒とか、あんたみたいな旅人の世話をして暮らしてんだよ。あんた北の洞窟に行きたいんだって?」

「えぇ。洞窟っていうか、洞窟の先にある『海』に行きたいんですけどね」

「そうかそうか。あそこには中々に強力な魔物が巣くってるからな。でもあんたは運がいい。町で一番の戦士、このミソルさんが護衛してくれるんだからな」


シュガーがぺこりと頭を下げる。

あれ?もう決定なの?


「よろしく頼むわ」


 握手を求めたその手を俺は握り返す。

 ごつごつした大きな手は確かに頼りがいがあり、個性派壮年俳優のようなそのダンディな笑顔には、人を安心させる何かが感じられた。流石はプロフェッショナルだ。


「ところで報酬だが……」


 ミソルさんは俺を値踏みするように見下ろした。


「まっ、学者先生では金は期待できないわな。いいよ手間賃だけで」

「い、いいんですか?」


 紹介してとは言ったものの、よく考えれば俺は一文無しなのだ。

 そういえばこれからどうして暮らしていけばいいのだろうか。

 一人暮らしの女の子の家にいつまでもやっかいになる訳にもいかない。


「シュガーちゃんの親父さんには世話になったからな。それ、ワフウの服だろ?」

「え、えぇ……」


 シュガーのお父さんはワフウさんというらしい。

 たしか彼女の性はスイーツだから。ワフウ・スイーツってことか。


「お前さんには、なんか奴と同じ臭いを感じるよ。じゃあ出世払いってことで、早速出発するか」

「えっ!? 今すぐですか?」

「なんだ、準備でもあるのか?」


 まぁ、心の準備なんかはまだまだなんですけどね。なにしろ『魔物』ですよ『魔物』がいる洞窟。しかも俺って防御力5だし……あれ、4だっけ?


「あまり変わりませんよ。どっちにしろ魔物に襲われれば即死です」


 聞こえてたのか……。たまに酷いことを言うシュガーちゃん。


「お弁当はもう準備できてますよ。あと旅の食料も。一週間×3人分でいいですよね」

「3人?」

「もちろん、そんな面白そうなこと、私もついていきますよ」


 にっこりと笑うシュガー。

 どうにも好奇心旺盛のようだ。

 お弁当には期待できないけど、それは彼女の責任では無いから仕方無い。こんな世界でのお弁当を楽しみにしてる奴などいないだろう。


「おっ、シュガーちゃんの手料理が食べられるのか。それなら益々報酬はいらねぇぜ」


 ここにいた。


「やだなぁ、ミソルさん。褒めたってなにも出ませんよ。あっ、おべんと食べる時に敷くレジャーシートも持っていこうっと」


 段々と遠足気分になってきた。

 おっと、一つだけ準備がいるんだった。


「ミソルさん、使わなくなった鉄製の盾があれば、いくつか持っていきたいんですけど」

「ん? そんなに魔物が怖いのか? 大丈夫だって、俺が守ってやるから」


 俺に抱きつく振りをして笑うミソルさん。

 2メートル近くあるであろう彼の体は確かに盾より頼りになりそうだが、生憎身を守る為に使うのでは無いのだ。


「カラスマさんったら、体力も5しかないんですよ。しっかりと守ってくれないとお弁当あげませんよ」

「そりゃひでーな。俺の娘以下じゃないか」


 ひとしきり笑われたあと、俺たちはシュガーの家を出た。

 いよいよ初めての冒険が始まるのだ。


初めての旅のパーティーが完成しました。

カラスマ(偽学者)28歳

シュガー(鑑定士)15歳

ミソル(護衛戦士)37歳

の三人です。

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