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第6話 快楽主義者(エピキュリアン)

少々悪のりして書きました。

喜ぶシュガーちゃんの姿を想像しながらお読み下さい。

 下腹部に浮き出た文字を見て、俺たちは二人そろって唖然とした。

 しばらくすると炙り出しのような文字はゆっくりと消失していき、シュガーは「し、仕事上仕方無く見せたんですからね、誤解しないで下さいよ」などと言いながら、スカートを元の位置に引っ張り上げた。


「今の、なに?」

「こっちが聞きたいですよ! あぁ! でも、きっとあたしったらレベルアップしたんだわ!」


 お腹の痛みも恥ずかしさもどこへやら、目をうるうるしながら胸の前に手を合わせ、神様に感謝するようにして喜びを表現するシュガー。

 喜びの舞なのだろうか。不思議な踊りを披露してくれた彼女は、興奮したまま語り出した。


「えっと、ですね。我々鑑定士の能力にもレベルがありまして、レベルが低いとせいぜい年齢と性別、それから名前なんかが分かるだけなんです」


 急ぎ口調で彼女は続ける。


「もう少し能力が高くなると、攻撃力や防御力、それから知力や魔力なんかも鑑定できるようになります。ちょうど、私がそのレベルの鑑定士……でした」


 ふむふむ。俺は頷く。

 先ほどの謎の踊りが頭にちらついて、少し頭に入りにくい。


「それがですね、もうちょっと高レベルの鑑定士だと、その人物のクラス、つまり職業みたいなものですね、それから固有のスキルまでが見えるようになるんです!」


 昂ぶったまま話す彼女。


「これができればとっても便利なんです。なぜなら、どんな職業に就きたいか悩んでいる青少年に向いている道を示唆してあげたり、本人さえ気づいていない秘めた能力を知ることができるからなんです。そして!」


 彼女は両手を腰にやって威張るようなポーズをとった。


「たった今、上級鑑定士になった。それがこのシュガー・スイーツちゃんなのです!」


 若い娘のノリについていけない……

 しかし、よほどそれが嬉しいことなのだと想像できる。

 俺は拍手でそれに答えてあげた。


「おめでとう。おめでとう」


 アニメの最終回かな?

 さすがに少し恥ずかしくなったのか、彼女は咳払いして着席する。


「でも、どうして急にレベルアップしたのかしら」


 そういえば昼間彼女は、レベルの上限に達しているとか言っていた。

 異世界人である俺を鑑定したことで、何かきっかけがつかめたのだろうか。


「私ずっと、レベル10のままだったんですよ。子供の頃は両親の才能を受け継いだ神童とか言われて、僅か8歳にしてレベル8、11歳でレベル9までアップしたんですけど、それから伸び悩んじゃって……」


 俺のいた世界でも良くある話だ。


「それで先日高名な鑑定の先生に視てもらったんです、あっ、私達鑑定士は自分の能力は鑑定できないんですよ。そしたら上限がレベル10までだって……随分ショックでした。このまましがない場末の鑑定屋で一生を終えるのかなと思ってたんですけど」


 地方都市の寂れたバーのマスターみたいにいうな。


「でも、このレベルに達すれば繁盛間違いなしですよ。

 原因は分からないですけど、とにかくありがとうございます!」


 限界突破って奴か?

 しかし役に立ったなら悪い気はしない。

 差し出された彼女の手を握り返しながら、俺は肝心な事を訪ねた。


「ところで、クラス:調理師って?」

「えっ? 私には分かりませんよ。手が勝手に書いたんですから

 字から察するに、ことわりを調整するお仕事ですかね? 学者さんっぽくないです?」


 どうやら、料理の砂漠であるこの世界には調理師という職業が存在しないらしい。

 はて、家庭科が2だった俺にそんな能力があるのか?

 カップ焼きそばを作るのさえ、たまに失敗するのに……。

 俺は疑問に思いつつも、最大の謎に挑んだ。


「『スキル:食道楽エピキュリアン』ってなに?」

「さぁ? 普通ここにはもっと役に立つ能力、例えば『剣技』とか『火魔術』とか出るんですけどね。私の能力がもっと高ければそのスキルの詳細も判明するんですけど、今の私ではスキルの名称だけで精一杯です。でも可愛い響きですね。えぴきゅりあんって」


 駄目だ。レベルアップに浮かれたこの少女には詳しい答えは期待できない。

 食道楽ってなんだよ。ふりかけ?


 嬉しそうなシュガーをよそに、これ以上鑑定結果が増えたら大変なことになるなと、俺はいらぬ心配をしていた。


これで冒頭部は終了です。

次回から本編に入ります。

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