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第4話 主食氷河期の時代

シュガーに夕食を振る舞われた丘平。

果たしてこの世界の主食とは。

「あのさぁ、シュガーさん」

「呼び捨てでいいですよ、カラスマさん」


 食後に出されたぬるい白湯をふーふーと冷ましながら、俺は気になることを訪ねてみることにした。


「普段はどんなものを食べてるの?」

「?……さきほどお出しした『小麦粉の純粋こね』でしょ、それから『お米を炊いたもの』、あとは『茹でたじゃがいも』……以上です。」

「へ?」


 鳩が豆鉄砲食らったような表情の俺を、シュガーは不思議そうな顔で見ている。


「その三つを日替わりで食べます。もちろん、季節や収穫によっては数日から数ヶ月同じものも食べますけどね」

「ちょ、ちょっと! 野菜とか肉とか魚は!?」


「野菜なら、じゃがいもを食べるって言ったじゃないですか。『野菜』って、じゃがいもの別名なんですよね。『にく』ってなんですか?さかなって、水に泳いでいるあれですよね? あれと食事になんの関係が?」


 様子から察するにからかわれているのでも無いようだ。

 どうやらとんでもない味覚の最果ての地に来てしまったみたいだ。

 頭がくらくらしてきた。


「今度は私にも質問させて下さい。昼間に頂いた、あのおいしいおにぎりは何だったんですか?」


 興味深げに目をきらきらさせてシュガーは訊いてきた。

 どうやら旨いものを楽しめる感覚はあるらしい。

 俺は少しほっとした。


「うーん。ただの塩おにぎりだよ」


コンビニの握り飯といったって通用するまい。

俺はできるだけ簡単に答えた。


「手に塩をつけて炊いた米を握るだけだよ。そんなに美味しかった?」

「しお……って何ですか?」


これまた予想の斜め上をいく質問が返ってきた。


「えぇっと……主に海水とか岩塩から取れる、しょっぱい調味料なんだけど・・・・・・」

「しょっぱい、って何ですか?」


 そこからか……そこから説明しないと駄目か。

 俺の顔に縦線が走る。


「『甘い』とか『辛い』ってのは分かるかな?」


 シュガーは小首を傾げる。

 味に関する言葉で通じるのはどうやら『美味しい』『旨い』だけらしい。


「じゃあ、実際に採取するところから始めようか。この辺りに海は?」


 塩さえ存在しないとは一大事だ。

 これからの俺の食生活の為にも、まずはそこから成し遂げなければならない。


「北の洞窟を抜けてしばらく旅を続けると、海という水がいっぱい貯まっている場所に行き着くとは聞いたことがあります。でも湖と違って、その水は飲めたものじゃないとか聞きますよ」


 そりゃそうだ。海水をそのまま飲む奴などいない。


「いいから、いいから。じゃあ、明日から出かけてくるよ。握り飯の弁当でも作ってくれるかい?おいしい塩を仕入れてくるよ」


 この世界の握り飯はきっと米の味しかしないだろうが、この際仕方ない。

 だが、俺の決意を聞いたシュガーはちょっと残念な表情になった。


「北の洞窟には魔物が住んでいるんです。結構強い魔物ですから、失礼ですけどカラスマさんではとても適わないかと……」


 なんと、ご多分にもれずこの世界には魔族が存在しているのか。

 しかし俺も転生した(選ばれた?)人間だ。

 ほら、よくあるじゃないか。

 転生と同時にすごいスキルを授かったりしているかもしれない。


「うぅん……俺ってこう見えてもなかなか鍛えてるんだよ。

 そういう関係の仕事もしてたし……」


 工事現場でとは言わなかった。

 シュガーは少しいぶかしげにして、椅子から立ち上がって俺の前に立つ。


「そうですか。では、鑑定させて下さい」


「鑑定?」


 俺の疑問をよそに彼女は、ロッドを手に取ると、それを高く掲げる。

かすかに呪文のような言葉をつぶやくと、ピンク色の髪が逆立って光を帯びた。


「おぉっ!」


 これが魔法かと異世界の洗礼を浴びている俺に対し、彼女は苦笑しながら言った。


「やっぱり駄目ですね。

 カラスマさんの能力は子供以下です」


シュガーの能力が発動しました。

丘平の能力値はどれくらいなのでしょう。

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