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第29話 決戦!グルトン騎士団

烏丸(カラスマ)先輩! お昼買いに行きましょうよ!」

「よせよ先輩なんて。学生じゃないんだから」

「でも僕より先にここで働いてるんですから、やっぱり先輩ですよ」

「只の派遣社員だけどな」

「まぁまぁ。今日は何食べます? いつものカップラーメンおにぎりセットですか? 僕は今日は唐揚げ気分ですから、特盛り唐揚げ弁当にしようかと思ってるんです!」

「お前はいつも食べる事ばかり考えてるんだなぁ」

「先輩に言われたくないですよ。今もほら、コンビニの新商品のページなんて見てるじゃないですか。そんなサイト見てる人あんまりいませんよ」

「勝手に人のスマホ見るなよ。お前に言われてカラアゲ気分になっちゃったんだよ」

「じゃあ今日は二人とも唐揚げにしましょうよ」

「それなら弁当より、カウンター脇ホットスナックの唐揚げとおにぎりのセットの方がいいな。唐揚げは揚げたてに限るからな」

「さすが先輩! 僕が調理師になったら旨い唐揚げを作りますから、是非食べて下さいね」

「それは楽しみだな。だが、俺は今日戦わないといけないんだ」

「誰とですか?」

「俺の食生活を脅かす奴らとさ」

「先輩も大変なんですねぇ」

「そう、大人は色々と大変なんだ……って、ちょっと待て。このコンビニ品揃えが少なすぎないか?」

「そうですか? 普通ですよ」

「だって、おにぎりは塩むすびと鮭と昆布しかないし、弁当も鮭弁当と……なんだこれ、キメラ弁当ってなんだよ!? 俺の唐揚げはどこに並んでるんだよぉ!!」


 * * * * * * * * 


 そこで眼が覚めた。前世の夢は久しぶりだ。

 背中にも脇にもびっしょりと汗をかいている。

 それほど怖い夢を見たわけでも無いのに我ながら食いしん坊にも程がある。

 まぁ俺にとっては十分に悪夢なんだけど。


 そういえばあいつは元気でやっているのかな?

 あぁ、ひょっとして俺の葬式に出てくれたかもしれないな。仕事に勉学に忙しいのに悪い事をした。

 人懐っこい彼は何故か、事あるごとに俺につきまとっており、友人がいない俺は迷惑がりながらもちょっと嬉しくもあったのだ。

 年は離れていたが、きっと食べる事が大好きという共通点があったからだろう。

 少し病弱で時々仕事を休むので、この仕事(ガテン系)に向いていないのではと感じていたが、俺に言われては彼が可哀想だ。

 調理師の専門学校に通いながら建設現場で学費を稼いでいるという、真面目でひたむきな奴だったが、彼の名はなんといったかな……

 そう確か俺と似た……トリ……


「カラスマさん、おはようございます! 今日は決戦の日ですね!」


 シュガーの顔を見ると俺は現実に引き戻された。


「もうミソルさん達は準備できてますよ。カラスマさんも朝ご飯食べちゃって下さい」

「ありがとう。いつも助かるよ」

「いえいえ、その……これは、店員の務めですから」


 何故かちょっと赤くなってるシュガーちゃん。店員の務めで店長の朝ご飯作るのってブラック店舗みたいでちょっとどうかと思うが。

 いやはやそれにしても、夢で見てしまったもんで唐揚げが食べたい。肉の入手の目星はついたが、後は何がいるんだっけ……

 と、今はそんな場合では無かった。

 そう。キメラ肉の試食会から二日後、約束通り彼らはやって来たのだ。



「あくまでも営業を続けるつもりだな。やはりお前らはあの鮭おにぎりとかいう悪魔の食べ物の中毒になっているのだ!」


 前回と同じ役人が先頭で声を荒げる。

 奴も同じ物を食べた筈なので、とんでも無く知力が上がってたらどうしようかと思ったが、さほどの効果は無かったようだ。


「では、これからこの店の強制排除を執行する」


 役人の号令で、奴の後ろに整然と並んでいた騎士達が馬上から降りる。

 全身を装飾までつけられた豪華な鎧で固めた、彼ら『グルトン騎士団』は流石に威風堂々としている。


「そうはさせねぇぜ!」


 その前に立ちはだかるのは、店の売上げと常連客のカンパで購入した、粗末な鎧で身を固めた我が誇るべき塩戦士ギルドのメンバーだ。


「お前ら、この間の警備兵を倒したくらいで、このグルトン騎士団に敵うと思っているのか?」


 役人は馬鹿にしたように嘲笑う。

 騎士団に絶大な信頼を寄せているのだろう。


「やってみなくちゃ、分からなくないかい?」


 だが先頭に立ったミソルさんもあくまで不敵だ。


「おかしな食べ物にやられて、頭がおかしくなったようだな。よろしい、グルトン騎士団よ、こいつらを手早く排除しろ。抵抗するなら殺してもかまわん!」


 命じられた騎士団は統率された動きで前に出て剣を構える。見た目は町の自警団にしか見えない俺たちにも油断しないのは賞賛に値する。


「おい、ショーユ。お前が先陣に立て」

「えっ!? 僕ですか!? じょ、冗談ですよね!?」


 むしろ油断しているように見えるのはミソルさんだった。


 命じられたギルドメンバー最年少の少年、ショーユ・ニシマル(13)は足が震えている。


「お前一人で十分だ」

「で、でも……」

「おい、ショーユ!」


 ミソルさんが年端もいかない少年に凄む。


「目の前の敵にぶっ倒されるのか、俺に張り倒されるのかどっちがいい?」


 ショーユの顔を汗が流れる。


「俺はお前に期待してんだよ。大丈夫だ、シュガーに()てもらっただろう?」


 ミソルさんも戦闘リーダーだけある。士気を高めるのがうまい。

 ショーユは震えながらも剣を翳して、騎士団の前に立ちはだかった。


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