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第23話 ミソルさんVSキメラ

「なんだ、キュウヘイ。どうして分かるんだ?」


 さっき俺の頭に浮かんだ魔物。それが俺の能力食道楽(エピキュリアン)に基づくものであるのはもう間違い無い。


「説明は後です。でもきっと強力な魔物ですから……無理でしたら逃げて下さい」


 俺を連れて。とはちょっと言えない。ダンディおやじとはいえ、大男にお姫様だっこされるのは勘弁してほしい。変な趣味に目覚めたらどうすんだ。


「馬鹿野郎。ここまで来て引き下がれるか……って……こいつか?」


 気がつけば目の前には、ライオンに似た生物。その背中には山羊の頭部が生え、尻尾は蛇で出来ている。キメラって奴か……


「こりゃまた、とんでもないバケモノに出くわしたな」


 俺はコクリと頷きながら身震いを抑えるのに必死だった。

 シュガーがいないので戦闘力は計りようも無いが、今のミソルさん以上なのは間違いないだろう。


「なに、実戦では戦闘力なんて参考程度にしかならないんだよ。おりゃぁぁっ!」


 俺の心を察したかのように呟くと、ミソルさんは魔物に襲いかかる。

 魔物は前足を上げて受けて立つ。その立ち姿はミソルさんの2倍はあった。


「うぉっと! デカい割に素早いなぁ」


 鋭い爪のついた前足の攻撃をすんでのところで躱し、ミソルさんは剣を構え直す。


「こいつ、本当に旨いんだろうな」

「味は保証しますよ」

「なら、俺たちの食欲の為に一仕事頑張るか!」


 本当にこんな魔獣が美味しいのだろうか?

 しかし今は食道楽(エピキュリアン)を信じるしかない。

 キメラだけに遺伝子組み換え食品かもしれないけど。


「ぐおおおおおおっ!!」


 ミソルさんの『超剣技バスター・ソードっ』が火を噴いた。たちまちキメラの右前足が吹っ飛んでいく。


「やったか!?」


 だが前足を一本持って行かれたにもかかわらず、魔獣は平気な顔で突っ立っている。


「さすがだな。じゃあ、もう一本いただくぜ!」


 ミソルさんがもう一度バスター・ソードを炸裂させようとしたその時、キメラが体を回転させ、蛇尾の先端が彼の顔面を捉えた。


「うぐぉっ!」


 恐るべきは死の森の魔獣キメラ。先ほどの攻撃でミソルさんの必殺技を既に見切ってしまったというのか。

 不意打ちのカウンターに倒れるミソルさん。


「ミソルさんっ!」


 駆け寄ろうとした俺だが、情けない事に足が震えてどうしようも無い。

 キメラはそのまま倒れたミソルさんに馬乗りになる。


「なんの、まだまだっ!」


 グーパンチで応戦するミソルさんだが、全く効いている様子は無い。

 キメラの三つの頭は勝利を確信したかのように、空に向かって咆吼する。

 そしてミソルさんが力尽きるのを待っていたのか、魔獣は牙を剥き出しにして彼の肩に喰らいついた。


「ぐおぉぉぉっ!!!!」


 聞いた事の無いミソルさんの悲鳴。

 俺のせいだ……俺がこんなこと言い出さなければ……俺の食いしん坊のせいで……シュガーちゃんになんて言えば……


「おい、キュウヘイ! こいつ、どんな味なんだ!?」


 弱気になった俺の目を覚まさせてくれたのは、そんなミソルさんの強がりだった。


「そりゃあ凄いもんですよ。噛めば肉汁がじゅわっと出て、口の中が幸福で満たされます!」


 山羊の体だから山羊っぽい味なのだろうが、山羊なんぞ食べたことが無いので俺は想像と勢いで答えた。


「なら、獲って帰るぜ。獲って帰ってシュガーやヴィネや塩戦士団の奴らに喰わせてやろうぜ!」

「は、はいっ!」


 諦めないミソルさんに勇気づけられ、俺は必死に考える。起死回生の戦略を。


「はいっ!……そうだ、ミソルさん!」


 そのとき、とんでもない策を俺はひらめいてしまったのだった。


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