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第2話 飢餓の少女シュガー

さて、ここから本番です。

RPGでよくあるような中世の世界をご想像下さい。

 気がつけば広大な草原に寝転がっていた。

 ビルから落ちて地面にぶつかる寸前までは記憶している。


 体を見渡しても怪我一つしていない。

 痛いところも特に無い。

 奇跡的に助かったのだろうか。

 しかしここはいったい……


 俺は作業服のまま立ち上がると、町らしいものが遥かに先に見える方向に向かって歩き出した。


 右手には塩にぎり。

 すぐにでも食べたい気分だったが、非常食においておく事にした。


 舗装もされず、ただ草木が生えていないというだけの道をしばらく歩き続けると見た事もないような大木がそびえ立っていた。

 少なくとも、ここは日本ではなさそうだ。

 いわゆる『あの世』だろうか?

 それにしては腹が減るのはおかしくないか?


 さすがに限界に達した俺はそこに腰掛けて、昼飯の続きをする事にした。

 しかしそこには先客がいたのだ。


「もしもし、生きていますか?」


 俺は大木の下で倒れているその少女に声を掛けてみる。

 なかなかに可愛らしいその女の子の姿を見て俺は理解したのだ。

 あぁ、そういうことね。


 薄い桃色のショートボブ。見慣れぬ装飾のついたヘアピン。

 ふわりとしたフード付きの水色の上着に映える、何かを模した金色のロケットペンダント。

 髪の色に合わせたスカートはミニ丈で、そこから延びた健康な足が眩しい。

 そして大事なものなのか、小さなその手に強く握られたロッド

 どうみても現代の女子ではない。


「ファンタジー世界に異世界転生ってやつか……って! マジでこんなことあるのかよっ!」


 俺は大声で叫んでしまった。


「ん…んっ……うわっ!」


 その声に驚いたのか、少女が飛び起きた。

 目を開くとくるくると動く瞳が益々可愛らしい。


「お、起こしてごめん。大丈夫ですか?」


 これが外国でなく、ファンタジーなら日本語のままで通じるに違いない。

 俺は遠慮無く母国語で話しかけたみた。


「だ、だめです……もうお腹がすいて……」


 返ってきた言葉は予想外だったが、ここが異世界だということは判明した。


 少女はまだ十代なかばだろうか。

 この年頃の腹減り具合は経験で知っている。

 俺は哀れなる腹ぺこ少女に塩にぎりを差し出した。


「おかずが無くて悪いけど、これで良ければ」


 見ず知らずのおっさんからもらったおにぎりなど食してくれるだろうか。

 拒否されたら、おじさんちょっとセンチな気分になっちゃうぞ。

 などと思ったのも束の間。

 少女は俺の手からおにぎりをひったくった。


「あ!」


 少女が包装ごとかぶりついたのには驚いた。


「ちょ、ちょっと! 剥いてあげようか?」


 俺の声も無視し、飢えた少女は獣のようにビニールを破いて白米を一口喰らった。


「な、なにこれ!? こんなごはん食べたことない!」


 少女は一言そう感嘆すると、俺に取られまいとしたのか、向こうを向いてあっという間におにぎりをお召し上がりになられた。


「あ、ありがとうございました」


 腹に収まって人心地ついたのか、少女は俺にぺこりと頭を下げた。


「今のおにぎり、凄く美味しかったです! あんなの今まで食べたことありません! なんていうか、体中の血液が浄化されて生き返った気分です! レベル上限に達している私でもレベルアップできそう!」


 彼女は反芻するように目を閉じて唇の端から涎を垂らしていた。


 この時、俺は大げさな感謝、もしくは彼女が腹が減りすぎていた故の感想だと思った。

 しかしその言葉は文字通りの意味だったのだと、俺は後に知る事になる。


「旅人さんですか?」


「いや、どっちかいうと迷い人……かな?」


「でしたら、私の家に来ませんか? さっきのごはんの話も詳しく聞きたいですし!」


「いいの?」


「もちろんです。あなたは恩人ですから! 私の名はシュガーって言います。

 迷い人さんのお名前は?」


「俺の名はカラスマ・キュウヘイ」


「面白い名前ですね。

 では、カラスマさんってお呼びします」


 こうして俺はシュガーと共に異世界生活を開始したのだった。


とりあえず相棒が登場しました。

思わせぶりな書き方の箇所もありますが、タイトルですべて説明済みという・・・・・・このあたりは、なろう小説独特ですね。

次回「おっさんと少女の帰還」にご期待下さい。

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