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異世界でも俺は恋をしない  作者: 北条南都
7/7

7話その笛は天命に届かず、痒いところにも手が届かず

俺が現実世界で最も尊敬していた人…。

かなり変態だった。かなりというより重度。

日々毎日、自慰行為に対する最適解を独自に編み出しており、この間は局部に長ネギを差し込み、


「これぞ天下のエクスカリバー!

問おう。貴方が私のマスターベー◯ョンか。」


気持ち悪い。ただただ頭のネジが飛んだいい歳こいたおっちゃんだった。(といっても大学2年生だが。)


これ以上、この物語で下ネタは、彼の話以外ではさぞ出てこないだろう。

名前を「海老川 宗介」という。

彼こそが俺に


「他人を神以って理解するには、まず自分自身の存在を原稿用紙50枚分に起こすほどの理解を為すべくして為すことはできない。」


と言った人物だ。こんな下ネタクズ野郎がだ。

彼は一体何者だったんだ。

何故俺は、こんな彼を尊敬に値する人物と見なしたのだろうか。。。


―――――――――――――――――――――――


「〔縮地〕はね、精神統一を図りながら自分の丹念を溜めて、それを一気にバーって解放するの!」


メアがその場で手本をやってみせた。確かにバーっとなっていた。だが、もちろん見ただけでは分からない。根本的に魔力をどう引き出すのかも分からないため、半分お手上げ状態だった。


あと、言いたいことは分かるのだが、もう少しマシな言葉あったのではないだろうか。と、また俺は心の中で思う。


とりあえず足に踏ん張りを入れつつ内側に力を溜め込んで、前に瞬時に体を出す。

この「溜めて放出」という動作が、所謂魔法を使うときの1つの基本構造らしい。


「こんなのね、ワープ魔法もあるし日常ではまず使わないんだけどね。あんまり…面白くないし…。」


メアは申し訳なさそうにたじたじになりながら俺から目を逸らした。すると、メア恒例の不意な思い付きと共に述べた。


「あ!じゃあ、精獣召喚をしてみない?」


「精獣…何…それ?」


「一口に言えば自分のパートナー!学業やインターンシップ、仕事や日常生活で色々サポートしてくれる心強い動物さんなの!」


なんだそれは。とても唆るではないか。

俺は胸がさらに高揚した。


「精獣召喚はこの〔歴戦の笛〕を奏でるだけだから魔力とか関係ないの!あとは動物さんたちがイサオ君の性格や気持ちを判断してやってくるの。

1番最初にやってきた動物さんがイサオ君のパートナーになるの。」


ちなみに私はこの子だよ、と言ってメアは首にかけていた笛を吹いた。すると甲高くて鋭い音と共に、空から翼の生えた何者かが威風堂々とやってきた。


キツネだった。こいつって、俺がメアの家で起きてから窓をのぞいたときにいたあいつではないか。メアの精獣だったのか。


「この子はバフォちゃん!通称〔バタフライフォックス〕っていうの。とっても賢いの!ちなみに、私の友達のルイちゃんはドラゴンを召喚したのよ。」


ドラゴンにキツネ…。ロマンのある動物ばかりで俺は心臓がばくばくする勢いだった。もう俺は早く笛を鳴らしたかった。


「メア!俺も吹いていいか?」


「うん、でもねやっぱり重要なのは…」


いいのか、じゃあ、思い切って吹いてみよう。

俺のパートナーは誰になるんだ…。早く…早く…!


「重要なのはね、1番乗りに来た動物さんが精獣になるって言うのが肝心で、呼びたい動物さんの巣窟に自ら立ち寄るって言うのが…」


ん…?なんだっt…?



ブオオオオオオオオオオオオオオオオオ



とてつもなく分厚く、濃厚な音が周りの建物までも震撼させる。そして、動物たちの呼応する声が聞こえる。


「も、もったいない!これで大した動物さんが来なかったらどうするの!」


「仕方ないじゃないか…!

人の探究心というのではですね、止めろと言われて止められる程、低俗な気持ちでは無いん…」


「とりあえずこの〔煙幕の笛〕で早く取り消さないと…。」



「ピヨッ!」



突然何かが俺の足元で声を上げる。


サラサラな毛並みに、ちょこっとしたくちばし。

ペタペタ歩きながら俺の周りをくるくる回る。

間違いない。この華奢で可愛らしい動物は…。


「ピヨッピ 、ピヨッピ 、ピッピヨピ!」


ヒヨコだった。


「どうするの…?イサオ君…。」


「とりあえず、こいつの名前はピヨ太郎だ。」


「名前じゃなくて!」


「ピヨピヨット ピヨヨンヨン!」


なんか段々鳴き声がヒヨコとかけ離れていっているが、余程嬉しかったのだろうか。

パタパタ羽をバタつかせているが、飛べる気配はもちろんない。育て方も分からない。


「こう言う時は、やっぱりルイちゃんに頼むのが一番かなあ…。」


「ルイって、ドラゴンを召喚した人?」


「うん。でも、ナツノちゃんより癖が強いっていうか、イサオ君には合わないかも…。」


ナツノを超えるということは余程なのだろう。

だが、俺は罵倒にはなれているし、合わないじゃなくて合わせるんだ。そうメアに豪語した。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「消え失せて。私の前に立つ資格が…。ってこんな事をいう資格も無いわ。」


ここはエカチェリーナ・ロイド学園のとある一角。

首席、ルイ・セルファに言われた罵倒が、初めての俺へのセリフだった。




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