4話 初めての会話と銀河級の情報内容
また再び、俺は目を開けた。
初回の起床では割りかし気持ちは楽で、何事に対してもの追求心は存在した。(元からそんなにあるわけではないが)しかし、今回二度目のダウンによる起床は流石に気怠さが強くなり、もう何もかもしたくないという億劫な気持ちに苛まれた。
「大丈夫!?君、シチューを食べたらすぐに倒れちゃって…」
「はい…なんとか覚えてます。」
メアに応答するぐらいにはまだ力は残っていた。そして正気を取り戻した俺は、また違った場所と雰囲気に意識を向けた。
メアの家?とは違い、この部屋は白の際立つ清潔な彩色で、大きなベッドが横一列に並び、そのベッド三つ区切りにカーテンが仕切られていた。さらに、俺からすれば少し気の重くなるような機材がたくさん並んでいる。要は馴染みのある言葉で「病院」というものが俺の脳内には存在した。所々、空を飛ぶ拳一つ分くらいの大きさのドラゴンやら、看護師のような人が他の患者さんのお腹に手を添えて何かを唱えている風景やら、つっこみたい要素はたくさんあったが、今話せば風呂敷を広げてしまって面倒臭いので、そこは今回触れないでおくことしよう。
まず聞かなければならないのは、この場所の詳細と、メアの横にいる人物ニ人のことだ。一人はスラっとした体系で、長くて綺麗な青髪が印象的な少女(もはや、少女ではなく、女性と言う方が正しいぐらいの可憐な風貌)と、一人はキリッとした目に短髪黒髪でガタイの良い、グレーのスーツを着た男性だった。
「おやおや、お目覚めかな?魔力軽薄の君らしいマイペースな起床だね」
にっこりでクールな笑顔でガタイの良い男は述べる。なんだ、魔力って。
「大丈夫でしょうか。あなたが意識不明の際、第三医療魔法で確認しておきましたが、どうやらあなたの備えていた魔力臓器とあなたの食べた食べ物が釣り合わなかったようです。そして体が抗体反応を起こしたようです。つまりは軟弱者ってことです。もう一度体を鍛え直してから出直してきてください。」
可憐な女性は述べる。なんだ、ノッケから振られたような物言い。しかもさっきから魔力とか魔法とか何なんだ。いや、確かに今までの未知なものばかり見させられると流石にそれぐらいの一つや二つはあると思ったが。ここで驚かなければ話も進まないし、何も知らないと言う前提の方が余分なまでに情報を知ることができる。この世界の理解も早まるだろう、ということで俺は述べる。
「あの…一体どなたですか、そしてここはどこなんでしょうか。」
すると、男性は述べる。
「私はここのカルロス付属病院の院長をやっている、カルロス・シュレンダーと言います。以後、Mr.シュレンダーともお呼びください。そして、ここは文字通り、カルロス付属病院の一角です。」
なるほど、これで知れたことは、場所とシュレンダーさんの名前以外で二つ。俺はシチューを食べた衝動で倒れてしまい、この病院に運ばれたこと。そして、先程俺が病院と言ったことが当たったように、この世界と俺の世界の雰囲気はどことなく似通ったものがあるという仮説ができたこと。多少違くとも、一つの筋としてはもしかしたら一緒なのではないだろうか。そう思い込んだとともに、今度は横にいたメアが述べる。
「それでそれでね、この可愛い子が私の魔術高校の同級生で、ここの病院の研修生兼助手をやっているナツノちゃん!そして、改めまして私はメア・ヨーテリー!よろしくね!」
「メア、こんな名も知らない見ず知らずの銀河系の端の端いるような男に、易々と名前を売りつけるものではありません。品が疑われますよ。」
なんだ、このナツノとかいうやつ。確かに俺に自己紹介したところで上品になるわけではないが、その初対面の人に対しての物言いはなんだよ。
それよりも、高校などという単語も脳裏をよぎったが、それよりもこのナツノの態度に、俺は嫌気とは程遠いが妙に劣等感を覚えた。
「俺は上敷 功です。銀河系の端くれだなんて。そんなことないですよ、そこらの恒星ぐらいには光ることができるように頑張ってますよ。ははは。」
というくだらない返しをして、俺は仕返しという言葉は今現在の気力ではどうにもならないことを察してその場をしのいだ。
「そう、まあいいのだけれど。イサオというのね。何はともあれ生きててよかったわね。まずここまで助けてくれたメアに心身から詫びなさい。」
「そう…ですね、ありがとうメア。」
「そ…そんなに謝らなくて良いよ。元は私がイサオくんの病状を甘く見て、最初は一人で見てたのがいけなかったんだし…もっと早く病院に連れて行ってあげれば良かったね!」
今までのやりとりから、それぞれの性格がわかってきた。これから色々教えてもらうにはメアに頼ると良いだろう。ナツノ…は少し俺には荷が重かった。(罵倒に対してはなんとも思っていないが、ただただ面倒臭かった。)
すると、今まで口を閉ざしていたシュレンダーさんが口を開いた。
「話を聞いている感じ、もう大丈夫みたいだね。そこでだ、リハビリなんかも兼ねて一度外へ出て行ってはどうだ。君のことはメアちゃんから聞いている。話も交えた方がいいし、イサオくんのことも考えて一度三人で行った方がいいと思うよ。」
チャンスだ。これを機にメアから色々聴き出せるはずだ。そう思い、俺はこれに対して軽く肯定した。さあ…俺の第一個目のターニングポイントだ。
すると、メアは述べる。
「あ、ごめんなさい。私これからバイトが入っちゃってて…いけません!」
え…
「そうなのか。じゃあ、ナツノちゃんとイサオくん二人で行ってきなさい。」
マジですか。
俺は唖然とした。こんな銀河系の端くれと罵られた、意識は太陽のように高いやつと、何でも興味を絶って閉じこもってきたブラックホールみたいな俺が釣り合うわけがない。必ず宇宙全てを飲み込むほどの超新星爆発を引き起こしてしまうだろう。
俺はここが一つ目のターニングポイントなのだろうと確信した。この半修羅場的状況、どうすれば良いのだろうか。