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異世界でも俺は恋をしない  作者: 北条南都
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1話 プロローグと言う名のアイロニー

俺の目の前にいるのは…!

神々しくて見えない暖かな心地…。頰が桃のように鮮やかになり、眩い光が俺を照らすその光景は今までに感じただろうか…!全てが変わる…!

かく初めての体験や体の火照りは、まるで火炎に閉じ込められる勢いだった。しかし、不思議と苦痛ではない。

俺の中の変革が訪れる…!

来るんだ!自分を信じれば…!

しかし、ここで俺の断片的な意識は途絶えた。

何だったんだ。誰だったのだ…。


――――――――――――――――――――――――――――――


恋は盲目。物に貪欲。人を隷属。

時として現代。 俺、上敷 功、高校二年生は今、夕方のコンビニでジュースを買っているこの瞬間までもこの言葉をモットーに日々生きている。

何も生きた気分はなく、ただのうのうとこのモットーと友達になって過ごす。一体俺の中の世界が光ることなどあるのだろうか。いやないだろう。


ぶっちゃけた話、俺は恋をろくにしてきたことはないし、何でも手に入れられるような金の亡者になった経験はないし、隷属「される」側の人間だったから、このモットーは目標でもなんでもなくて、救いようのない只のポエムに過ぎないのかもしれない。


しかし、ここで一つ俺は声を大にして言いたい。俺のこのモットー(ポエム)は、恋をしたいとか、物が欲しいとか、人を服従させたいとか、こうでありたいという願望を謳ったことに対しての「目標」ではないと言うことだ。

恋は盲目。恋をすることは、その人のことを思い続けることから、目先のことが見えなくなりがちだということをロマンチスト風に言った言葉だ。俺の場合はこう言い換える。


「恋は盲目(故にズボンのチャックが開いていることに気づかず即振られる)」


この調子で言うと、


「物に貪欲(な奴ほど自販機のルーレットで外れた精神的損傷は大きく、幾分器は狭く、人生を無駄にしている)」


「人を隷属(する奴は少なくとも俺よりもクズ)」


要は何が言いたいかというと、何かに没頭していては本当に必要なものに手を加えられなくなるということだ。(かくいう俺にはそんなものはないが)


そして、この目標は俺が日常的にスルーされるような物事にも、勝手にマウントを取って一喜一憂するという皮肉な要素を加えた、如何にもズボンのチャックを閉め忘れている器の狭いクズが考えるような意識のもとなのだ。


とどのつまり、俺は欲しいものを作るつもりもないし、人をこき使うこともしないし、恋もするつもりもない。俺には「過去の反省」というものをしなくてはならなくて、かくしてその経験は活かさなければ。

今その「反省」というものを話すには、少し俺と読者との関係性が薄いから、これを話すのは、もう少し俺のことを本質的に理解することができたときまでとっておくことにしよう。


そんなことを思う夕方。俺はちょうど「同級生の飲む」ジュースをコンビニから買って出た。

コンビニを出てため息をついた時に、胸に抱えていたジュースを一本、道端に落としてしまった。俺はそれを拾いたかった。そこからは一瞬の出来事だった。何よりコンビニの前の道路との間に柵はなかった。


盲点だった。視界の横から現れる物を避けることよりも、俺はジュースを取ることを選んでしまった。

人が下にいる。そして、俺を見上げている。意識が朦朧とする。叩きつけられた俺は、周りでまばらに動く人の影が見えるのみだった。

同級生…なんて認識していたのは俺だけだったのかもしれない。彼らから感謝の念を聞いたことは一度もなかった。この世で最も盲目で、物に貪欲で、隷属されていたのは結局俺だった。

俺はこのモットーを背負って生きてきたことを後悔した。


とある高校二年の日、俺は深々と目を閉じた。

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