王家の血を引く超天才最強勇者君が唯一できないこと
その勇者は、魔王を倒し勇者と呼ばれるようになった。
勇者としては一般的な経歴だが、よく見るとこの勇者が天才であることを示す欠片が散らばっている。
まず生まれ育ち。
「田舎の村」だが、この勇者の曽祖父は過去に存在した大王国の最後の王である。この王家には代々伝わる伝説の剣があり、それを家の倉庫から発見し、剣に選ばれたことが勇者になれた大きな要因である。剣は非常に切れ味が鋭く、魔力のこもった金属も、ドラゴンのうろこも打ち砕く優れものだった。さらに剣にはまじないが施してあり、持ち主に民衆の畏怖を集めることができた。その能力をうまく活用し、勇者は魔王軍を打ち払ったのだ。
次に頭脳。
中央アカデミー首位入学、そして卒業である。
こんな片田舎の村の出(とはいっても元が王家だが)にしては上出来、いやとんでもない逸材である。
もちろん魔王戦の時もこの頭脳は大いに役に立った。役に立った場面が多すぎて、語りつくせぬほどである。
それから武術。
これは勇者になるぐらいであるからもちろん上手い。伝説の剣を使わなくとも、十分強い。武器に負けていない強さなのだ。
また、剣術だけでなく弓術に槍術、こぶしを使った戦いも大得意であった。
こんなに得意なものが多いと勇者としてキャラがぶれそうだが、そこは優秀な彼の頭脳で「自分は剣一点にしぼる」と決め、剣キャラとして勇者となった。
さらに顔立ち。
ここまでを聞いて、「何か、何かこいつにも一つぐらい嫌なところがあるんじゃないか」と必死で探しているモテない諸君には申し訳ないが、この勇者は非常にモテた。
それはもう、モテるモテる。
元から顔立ちが良く声も甘く、さらにちょっと照れ屋なところが加わって、生まれ育った村やその辺りでは大人気だったが、魔王を倒して一躍有名になると、今度は国中の女性の憧れの的となった。
魔王を倒すまでの道のりで、いくつ恋の話があったことだろう。
そして、性格。
まあもう言うまでもないと思うが、かなり良い。
性格の良し悪しについては人によって意見が分かれるところであろうが、勇者は大抵の人間から見て理想的な性格をしていた。
いつも弱い者の味方。
人の生き方を否定しない。
向上心が高く、鍛錬を欠かさない。
いつも笑顔で、よく飲み、よく食べる。
紳士的で、誠実で、真面目で。
言ったことは必ず行い、責任感がある。
ルールやマナーはきちんと守る。
それでいて、カタイわけではなく、無駄話や下ネタに花を咲かせることだってある。
融通を利かせることも多い。
嫌らしいところ、腹黒いところがない。
頭の回転が速く、様々な問題を解決できる。
自分に非があると認めたら素直に謝る。
照れ屋で、褒められるのに弱い。
全くもって、好青年というほかない性格であった。
人間的な部分もあり、ちょっとへまをすることもあるが、いつもその愛嬌で許してもらえた。
ああうらやまし。
ここで、彼の業績を簡単だが紹介していくこととしよう。
一番大きいもので、「魔王と魔王軍の討伐」。
国を100年以上前から苦しめていた魔王を倒してしまったのだ。この業績を以て彼は国公認の勇者となった。もちろん、勇者は手厚くもてなされ、国中どこに行ってもちやほやされることとなった。
他に有名どころでは、「北の果ての洞窟に住むドラゴンの退治」や、「巨人族に奪われた街を取り返す」や、「ゴブリンなどの亜人間族から都を護った」や、「伝説の宝を南の島から持ち帰った」「神のお告げをうけて姫に襲い掛かろうとした危機を救った」などがあるだろうか。
魔王討伐までの道をたどると出てくるこまごまとした英雄伝は、数えきれないほどある。
全て集めてファンタジー作家に提供したら、それを基にした話だけで一生、いや三生ほども食べていけるだろうと思うほどの量と厚みだった。
でも、やはりそんな最強勇者にもできないことはある。
勇者の彼が、唯一できないこと・・・
唐揚げにマヨネーズをかけること。
こんちは。きらすけと申します。
ずっとあたためていて、間もなく腐ろうかといったネタを、今やっと出せました。
面白かったら・・・評価を|д゜)
唐揚げにマヨネーズかけるのって、勇気いりますよね。