もしもこころがなかったら
もしもこころがなかったら
杖を突いて歩く女性が段差のある場所を行くのに手を差し出さなかったろう
もしもこころがなかったら
よちよち歩きのこどもが一人でエスカレーターの側で遊んでいるのに危ないよと声を掛け、親を探してやらなかったろう
もしもこころがなかったら
幼い頃、人と違うと自分の特徴をからかわれ、叱責されて、萎縮しなかったろう
もしもこころがなかったら
少女の頃、巷で美少女と呼ばれるようなほっそりとした体型にさらさらの黒髪にきらきらしい容貌と比較され、落ち込みはしなかったろう
もしもこころがなかったら
人々に奉仕する為の職に就きながら、人々から批判され、罵倒されて凍り付くことはなかったろう
もしもこころがなかったら
花や雪を見て、季節の移り変わりや自然の厳しさではなく、時間の経過しか感じなかっただろう
もしもこころがなかったら
愛する人、親しい人の疲れ、悩む姿に温かな食事を与え、ゆっくりと休息するよう勧めないだろう
こころがあるから、今がある
ご覧、春の日差しの中、燕が飛んでいくよ