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憑神さん家のお家騒動  作者: 岸波 神社
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第二話 ゴリラレイプ

 『超人』


 それは、人であって人ならざる者。


 人智を超えた圧倒的覇者。


 憑神 花水楼ハナは、まさしく!そういう存在であった。



 幼少の頃から既に、ハナは非凡な才能を開花させていた。

 三歳になる頃には、世界中で使われる言語の全てをマスターし、小学二年の時に描いた絵は、今でもフランスの有名美術館に飾られている。

 中学一年の夏休みに書いたAI(人工知能)プログラムは見事なもので、その後、人類の発展を大きく飛躍させる礎となっていった。


 現在ではその頭脳を買われ、世界有数の大手企業や、各国合同の宇宙開発事業などにも、自身の才能を提供している。

 年間、億単位で稼ぐ中学生なんてのは、どこを探しても憑神 花水楼ハナくらいのものだろう。


 様々な分野で華々しい功績を上げ、人類に貢献しているハナだが、自身の素生を一切明かしてはいなかった。

 なぜなら、並外れた才能を持つがゆえ、それを悪用しようとする輩が多く存在するからだ。そんな者達から自身や周りの人間を守るため、ハナはありとあらゆる偽装工作を行い、世間を巧みににカモフラージュしているのであった。


 一方、学校での生活はというと、特に目立った所は無い......とは言えない。

 いくら巧妙に隠蔽いんぺいしているとはいえ、滲み出る秀才っぷりを隠し通す事は出来ないのだ。

 成績は常に学年トップ、おまけにスポーツ万能。それに加え、目も覚める様な美人ときている。自然とハナは全校生徒の憧れの的となり、火武輝ひぶきを襲う行為でさえ美化されているのであった。


 容姿端麗にして、文武両道、奇々怪々。


 誰もが羨む素質を持つハナだが、公にできないない力が一つ存在する。

 その力は、自身が所有する才能の中でも突出して異質なものだった。


 それは、驚異的なまでの身体能力だ。


 ハナの身体能力はまさに、異常であった。


 指で軽くつつくだけでコンクリートの壁を粉砕し、ピョンと飛び上がるだけで軽々と家の屋根へと上がってしまう。

 100メートルを1秒を足らずで走り抜け、マンションの屋上から飛び降りても傷一つ負わない。

 もしハナが本気で殴れば、10トントラックなど一撃で空き缶みたくぺしゃんこにしてしまうだろう。


 仮に、この事が表沙汰になれば、ハナは一生モルモットとして扱われるかもしれない。そんな数奇な人生を送って欲しくはない。そう願った父親は、可愛い我が子を守るため、この事を家族とごく一部の者だけの秘密とした。


 どうして自分にそんな力が宿っているのか、人類最高の頭脳を持つ彼女でさえ、未だその謎を解き明かせてはいない。

 双子の片割れである火武輝には、まったくと言って良いほど稀有けうな才能は無かった。


 神のいたずからか


 それとも贈り物か


 それは誰にも分からない......。だが、自分に与えられた力を世の中のためにフルに使い生きていく!とハナは誓っていた。


 そんなハナの握力は1000キロ。言い換えれば1トンだ。


 ゴリラ数頭分に匹敵する握力を、骨を砕かぬよう絶妙にコントロールし、ハナは今、火武輝の手首を押さえつけているのであった。


 『ぐぅ!』


 火武輝は、必死でハナの手を振りほどこうとするが、びくともしない。

 まるで、セメントでがっちりと固められているかの様に、火武輝の手は動きを止められていた。


 『ひーたん、そんなに動くと手がもげる』


 『うるせー!誰のせいだ!はーなーせー!』


 フガフガと抵抗する火武輝の顔に、突如、ハナの空いたもう片方の手が添えられる。その手は徐々に下へと下り、首から鎖骨へと滑り落ちる。

 火武輝の体を這うように動くハナの手は、獲物を狙う蛇の如く、静かでありながら確実に相手を仕留める気概に満ちていた。

 そして、とうとう目的の場所まで辿り着き、蛇は牙をむく。


 『うぉい!何してんだお前!』


 驚きの表情と共に火武輝から声が上がる。

 と言うのも、ハナの細い指が、小さく円を描きながら、火武輝の乳首を刺激していたのだ。


 『円周率を計ってる』


 『バカ!やめろ!お前これ反則だぞ!ルールーを忘れたのか?!敏感部分へのお触りは禁止なはずだ!』


 『反則?なぜ?......先に反則したのはひーたん』

 

 『僕がいつ反則したー?!』


 『ニーハイ』


 『うっ......』


 火武輝は返す言葉もなかった。どう考えても今日のハナは100点だった。

 苦肉の策とはいえ、真剣に勝負を挑んできたハナに対し、不誠実な対応であった事は間違いない。火武輝は心の中で深く反省する。


 そうこうしてる間に、火武輝の体に異変が生じる。

 幾度となく繰り返された乳首への刺激が、眠れる獅子を呼び起こしてしまったのだ。

 全ての神経が、下半身のある一点へと集まっていき、徐々に膨らみを増す。

 小さな突起でしかなかったそれは、布地を押し上げ、やがて、大きな山脈へと姿を変えていった。


 『ん?』


 何かに気付いたように、ふいにハナの手が止まる。

 不思議そうに目をパチパチと瞬かせたと思うと、急に表情が一変し、ニヤリと陰湿な笑みを浮かべる。そして、ハナは火武輝に優しく問いかけた。


 『ねぇ、ひーたん。どうしてビンビンなの?』


 不覚!


 火武輝の頭の中に、その二文字が大きく浮かび上がる。

 なぜなら、大きくそびえ立った火武輝の山脈は、あろう事か、ハナの可愛らしいおしりを突き上げてしまっていたのだ。


 『べべっ別にお前の攻撃でこうなったんじゃないからな!これは健全な男子の身に起きる朝の生理現象だー!』


 『ふーん。......じゃあ、えい』


 『はうぅ!』


 突如、丸出しの乳首をつねられ、火武輝ははしたない声をあげる。

 それに連動したのか、山脈はビクンと脈を打つ。


 『ふふっ......体は正直』


 『おい!いいかげんにしろよ!僕にこんな事をして、ただですむと思ってるのか?!』


 『何?その雑魚キャラ発言』


 『誰が雑魚だ!お前なんか僕が本気を出せば二分でチンなんだからなー!』


 『そんなレトルト感覚じゃハナは倒せない。ハナを倒したいなら、隕石の一つや二つ落とさないと』


 『お前は恐竜か!!!』


 『いいえ、変態よ!』


 そう宣言した瞬間、ハナは火武輝の首筋へと唇を移し、下から上へと舐め上げた。

 ねっとりとした舌の感触が、波紋のように火武輝の体へと広がっていく。


 『おい!どこ舐めてんだよ!やめろー!』


 『ひーひゃん、自分の状況が分かってらい。だから、おひおき』


 ハナの舌はどんどん上へと進み、火武輝の耳の穴へと収まる。

 ねちゃねちゃと粘度の高い音が火武輝の鼓膜を揺らし、いつのまにか形容しがたい快感が体を支配していった。

 火武輝の顔は真っ赤に染まり、瞳はとろんと今にも落ちてしまいそうだった。


 『そんな顔されたら......ハナもう我慢できない』


 そうこぼすとハナは、腰を前後に動かし、乙女の象徴を火武輝の体へとこすりつけた。

 

 『おっ......おい......ハナ......それは......ダメだ......』


 火武輝から、かすかに声が漏れる。しかし、ハナには届いていない。

 終る事のない刺激を受け続け、ついに、火武輝の天国の門が開き始める。


 『もっ......もう......許して......このままじゃ......』


 『はぁっはぁっ.......にゃぁに?......聞こぇらぃ。』


 ハナは、唾液まみれの口元を舌で拭い、いたずらな表情で火武輝にうながす。


 『こっこのままじゃ.......このままじゃ......サンライトイエローオーバードライブたー!!!』


 火武輝の悲痛な叫びが、室内にこだまする。


 『じゃぁ......ハナの勝ち?』


 『アッ、アホか!それとこれとは、べっ!はひー!!! 』


 言い切る前に、今世紀最大の圧力が、火武輝を襲う。

 火武輝の乳首を弄んでいたハナの手が、いつのまにか山脈へとワープし、まるで搾乳さくにゅうのように火武輝のアレを絞り出そうとしていた。


 『ひぃー!すっすみません!僕の負けです!ごごご要望と有れば足でもどこでも舐めます!だからこの薄汚いブタ野郎をお許しください!』


 『..................』


 またしても静寂が、世界を支配する。


 『......別にそこまで言わなくても......』


 おっといけない......本性が出てしまった。

 火武輝が恐る恐る横をむくと、腫れ物を触る様な目で、ハナは火武輝を見つめていた。

 放った言葉は二度と戻らない。後悔の念に火武輝が苛まれていると、ハナはピョンとベットから下り、火武輝に向き直って万歳三唱を始めた。


 『わーい!わーい!ハナの勝ちー!じゃあ童貞いただきまーす......ってのは嘘。こんなんで勝っても嬉しくない』


 『ならやるんじゃねー!!!おかげで朝からパンツ履き替えるとこだったんだぞー!』


 『それはひーたんが悪い。でも......』

 

 ハナは両手を後ろ手に組み、火武輝を真っすぐに見つめる。

 その瞳には、力強い意志が込められており、火武輝は目をそらせずにいた。

 そしてハナは、固く閉ざしていた口をゆっくりと開く。


 『いつか......絶対にひーたんを振り向かせてみせる』


 その言葉を受け、火武輝の胸がドクンと音を立てる。

 目の前にいたのは、火武輝が知っているハナでは無かった。

 火武輝が目にしたのは、青い瞳をキラキラと輝かせ、天使のような微笑みを浮かべた、恋する一人の少女だった。


 『......ハナ』


 『ふふっ......だから、この続きはそれまでおあずけ。またお姉ちゃんが良い事、し て あ げ る』


 そう言い残し、ハナは颯爽さっそうと火武輝の部屋から姿を消した。

 今までの騒々しさが嘘のように、部屋には再び静寂が降りる。

 一人、取り残された火武輝は思い出す。ハナの言葉を......。


 『振り向かせる......か......ははっ、勘弁してくれ』


 窓から差し込む朝日が、はにかむ火武輝を優しく照らしていた。

 

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