小学生のマルヒ事情。
矢鏡楓、初小説でございます(笑)
読んでやってください!(♡˙³˙)
初恋と異性や性への興味。
生まれる、初めての感情。
ドキドキとワクワクが交差して
心には溢れる「大好き」と「不安」が。
どうしてこんな感情が、溢れだすんだろう。
どうしてアイツのことばかり考えちゃうんだろう。
目が合うとか、会話を交わしたりだとか
それだけでもう、最高に嬉しい。
他の子と話してたりすると辛くなる。
心がしめつけられてく…
恋って言葉は知ってたけど
まだ早いのかもしれない、なんて。
急激に変わる心と体。
異性の体への興味。
知らなくていいはずの知識を
知ってしまったり。
なんでだろうが行ったり来たり
忙しい心と体。
思春期少年少女、12歳。
色んな感情が、今、動き出します。
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篠岡有里奈、霧橋学校6年1組の女子の一人です。
「男子って面白いくらい、変態だわー(笑)」
私が、最近思うこと。
毎日毎日、休み時間には男子同士で固まって、エロ話してる。
セックスとか、勃起とか、シコシコとか、なんでそんなに知ってんのって、位に。
はじめは女子も、言葉の意味が分からなかった。
いつからか、男子が教えてくれたっていう女子が現れた。
それからは、女子までもが理解の上で、堂々とエロ話を発す。
「マジで、変態。セックスとかしたこと無いくせに」
私が言うと、一緒にいた親友の木村瑠里が激しく頷いた。
「なんで男子って、そんなに言いたがるんだろ。エロい言葉。」
「6年になってからだよね?急に、エロくなってさ」
5年生までは、男子も話題はほとんどゲームやスポーツの事で、平和な生活を送っていた。
しかし、6年が始まって2、3カ月すると、何故かエロい話しかほとんどしなくなってしまったのだ。
特によくエロ話を振るのが、榊 凌日だ。
エロ話グループの中心で、言うことも一番過激。
凌日のおかげで、エロ話が成り立ってるって感じだ。
凌日は身長も150やっと越した位の真ん中辺りだし、性について語る柄じゃないと思ってた。
もっと発育良い人が、知識豊富で、中心で。とかじゃないんだ。
問題は、凌日が私の隣の席だってこと。
流石に他の男子は授業中にはエロ話はしない。
だが凌日は、授業中であろうとランチタイムであろうと構わずに話を振る。
振る相手は大体、私の、前の席で同じ班の山滝真哉だ。
真哉は小柄で、凌日以上に性について語る柄じゃない。
だが、凌日とエロ話をする最高の仲だった。
今日も、いつもどおり算数の授業が始まる。
私は、淡々とノートをとるが、凌日は先に書いて今はぐったりタイムらしい。ずるいなあ。
「凌日、凌日。ノート次のページもだよ??」
半分寝ていた凌日がむくっと目を覚ました。
「あーあ。まだノートあんのかよ。算数の香山のノート長いんだよな」
「ほら、早くしないと!消されてくよ?」
「あー、そういやさ。篠岡って、セックス知ってる?」
固まった。
「なんで話逸らすの。あと、毎日毎日同じ話…しつこい!」
「生命の始まりなのに!良い行為だろ?」
「あのねえ!!」
これがいつもの事だ。
凌日の発言には飽き飽き。本当に、そう思う。
凌日にも思春期が来れば治るのかなあ…
なんて、いつも心の中で思ってる。
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今日は、生理二日目。
結構生理痛が酷い。薬は飲んだけど。
私は5年の初めに生理が来た。
瑠里は、5年の中頃。
6年なら女子はほとんど生理が来ていて、思春期真っ只中なのに。
男子はまだまだなんだろうな。あと、何年未熟な男子に付き合わされるの?
嫌われてる担任の原島の国語の授業を受けながら、激しい生理痛に見舞われた。その痛みは引いたり、出たり、を繰り返してる。
「お腹痛ーっ」
ガヤガヤ騒がしい話し合いの時間に思わず出た言葉だ。
その言葉にいち早く反応したのが、隣の席の凌日だ。
「生理痛ですかーっ?」
驚いた。
生理のこと知ってるんだ。習ったけど忘れてるって思ってた。
図星で、必死に否定したけど凌日は笑ってずっと私を見てた。
時々、卵子とか精子とか、オナニーとかそんな言葉を発しながら。
それにツッコミを入れているうちにな何故か生理痛は消えた。
本当に、疑問なこと。
いつになれば男子は大人っぽくなるんだろう。
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何故かその日から、私は凌日を意識してた。
いつ大人っぽくなるんだろっていう疑問を凌日と照らしあわせる。
声変わりして、背が伸びて、裸になればあそこに毛が生えてて、セックスしたりしてる凌日。
それだけでドキドキする。
人のこと言えないや。私は変態なんだ。
もう、凌日に何もツッコめない立場なんだ。
その日も凌日は相変わらずエロ話を振ってきた。
「男は、あそこをこすると精子が出るんだって。快感もあるってさ。」
ねえ、凌日もしたことあるの?
気になったけど、自分の変態さに押されて言えなかった。
授業のたびに、隣にいる凌日の存在が気になって、エロ話が気になって、仕方なかった。
私は変態だ。
凌日はまだ子供だって言い聞かせれば、少しは落ち着く。
でも、思春期を迎えた凌日を想像すると、ドキドキでいっぱいになる。
どうしよ。
本当に私、おかしい。
隣で、変わりゆく凌日。そんな凌日が居たら…
これが初恋なんだって、気づいたのは、少し後の事だった。
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思いがけない出来事が起こった。
同じ塾の凌日が、私の疑問を解決してくれるなんて思ってもみなかった。
その日は塾が早く終わった。
私は、帰るのももったいないなっていう一心で塾のロビーをウロウロしていた。
「なにしてんの」
凌日の声がして振り向いた。
「あっ凌日。なんかさ、帰るのもったいなくて」
「なんで?せっかく早く終わったのに帰らないのかよ」
「なんか、ね。今日は。ここ、暑いから外でよっかな」
「確かに、暑いな。俺も出よ」
私は靴を履いて塾から出た。暗くなりつつある空を、一瞬立ち止まって眺めた。
「おいおい、篠岡。そこひかれるぞ?」
我に返って見れば確かにそこは車道と歩道との間だった。安全な場所、塾の裏に移動した。
「風が涼しーっ」
私が言うと、何故かついてきた凌日がいた。
「??…なんで凌日がいるの?」
「俺の自転車、こっちにとめてる」
「ふーん」
素っ気ない返事をしてたけど、ホントは気になって仕方なかった。
「篠岡、昨日真哉が、究極のエロ動画見つけたらしいぜ」
「…変態。」
夜のロマンチックなシチュだというのに始まるエロ話。
「山滝、実は変態なんだよなー。俺と、同じ位。」
「あのさぁ、いつエロ話しなくなるの?」
私の本音が出た。
「それは、高校生位なんじゃない?エロ話面白いのに〜。」
「なんで高校生なの。あと何年不愉快でいないといけないの」
「だって、そういう、さ。エロいこと考えて発しちゃう年頃…思春期なんだよな、俺ら」
私の、疑問が解けた瞬間だった。
一瞬私は、ときが止まったかのように呆然とした。
小6で思春期?男子なのにいくら何でも早くないか?と思う。
「思春期?小6で男子が始まってるわけないよ」
「始まってるよ…充分。だって声変わりしてる奴も、精子出せる奴も、いるんだぜ」
その瞬間気づく。凌日の声も少し低いことを。
エロい男子たちは見えないところで、大人の階段を登っていた。高校生になれば、登り切る、その階段の一歩を。
「あと、エロ話で篠岡が不快だったなら謝るよ。篠岡に授業中でも、エロ話振ってたのは、かまって欲しかっただけで…」
分かってたよ。かまってほしいことは。
男子が、エロ話したくなるのは、大人の階段を登りはじめた証拠だって聞いて、私の考えが変わった。もうじき訪れる、射精とかの知識を共有したりしてたんだ。生命を作り出す体になるために、セックスについて詳しくなっていたんだ。子供扱いしてごめん。
「別にエロ話、してもいいよ?」
「え?」
「大人になるために…」
私ったらマセてるかもしれない。でも、これが最終的な本音だから。
聞いてよ、凌日。
「分かった。俺ら、大人になるから。絶対」
「約束だよ?」
凌日が黙って、笑みながら頷く。
私も軽く頷いた。
じゃあね、って笑顔で言って、帰り道を歩む。
後ろからは自転車をこぐ音。
「帰り道、変えてみたよ」
その凌日の言葉。
「何しちゃってんの~っ」
私も凌日も笑ってる。
思春期って、難しい。
からこそ楽しい。
何より大切なのは、互いを思いやる気持ち。
思いやることで、素敵な大人になれる、そんな気がするから。