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1-9 乱入勇者

 あれから一週間。

 俺は、掃除洗濯料理などの家事スキルを叩き込まれた....。

 途中何度か検査板で確認させられたが、家事というスキルを得、しかもそれがレベル2まで達していた。


 それだけではない。

 なんか知らんが、「性技」スキルなるものも取らされた。

 いや、字面とそれを取るためにした特訓でどんなスキルかは分かるけども....。ちなみに、性技スキルを取るためにめっちゃ一生懸命にバナナみたいなの擦った。

 よかった、実践はさせられなくて。もしかしたら吐いていたかもしれない。


 そして、今日。

 どうやら俺も売りに出されるオークションが開催されるらしい。出来れば売れ残らないかな....なんて考えてたら、どうやら俺が目玉商品らしい。

 謎の強力攻撃魔法を持った、見目麗しい多用途・・・高級奴隷だとさ。勘弁してくれ。どうせなら、戦闘系奴隷のほうがマシだった。


 今日に至るまで、ユウからの接触やアクションは一切なかった。

 ....考えたくないけど、多分見捨てられたんだろう。そりゃそうだ、急にいなくなったら、俺が自分の意思で出て行ったとしか思われないだろう。

 そうなれば、探す意味もない。


「お次は、今日の本命!家事スキルから性技スキル、さらにはユニークスキルまで取得済みの、多用途奴隷!本日の目玉商品です!」


 つんつんと背中をつついて急かされる。はいはい、今行きますよーっと。


 オークション会場は大きなドーム状の建物になっており、一番前、つまり現在俺がいる場所にステージがある。

 そのステージにオークションに出品される『品』を乗せ、一番高い買値がついたものが落札する。


 そういった形式の、普通のオークションだ。


 出来れば、優しい人に落札されたいな....。

 そんな思いも届かず、俺を見る目は嫌らしい、欲望が入り混じった目ばかりだ。うわぁ、気持ち悪いやつばっか....。


「なんとこの奴隷、未知の魔法道具を自在に扱うスキルを所持しています!」


 ステージの逆側に的が用意される。俺は事前の打ち合わせどおり、的を銃で打ち抜いた。

 おお、とどよめきが走る。


「目にも止まらぬスピードの魔法で、敵を打ち砕きます!さあ、赤札一枚から!」


 赤札ってなんだろう?オークションの何かかな?

 と、赤い札が色んなところから上がる。多分、あれは自分が出す値段にしたがって決められているんだろう。

 赤札ってのはそういう意味か~。


「赤札と黄札二枚!さあ、これ以上はいませんか!?」


 始めは結構な人数は札を上げていたが、ちらほらと脱落する人が多くなってくる。

 そして最後に残ったのは――


「赤札一枚に、青札五枚!これ以上の方はいないようなので、落札です!おめでとうございます!」


 ――顔に下品な笑みを浮かべた、中年のおっさんだった。

 全体的に脂ぎった体つきをしており、汗をだらだらとかいている。....その顔を見れば、どういった用途で俺を落札したか、すぐに分かる。

 服装が豪華なことから、金持ちだということは分かる。


 だが、俺は別段、落胆しているわけではなかった。


 どうせ、こうなることは分かっていたしね。

 正義のヒーローが来ることを期待していたわけでもないし―――この一週間で、覚悟は決めた。

 うん、あの男に犯されそうになったら、自殺しよう。

 

「では、商品の受け渡しはこの後、受け渡しカウンターにて行いますので、少々お待ちください!それでは、次の商品――」


 その時だった。

 

 どおおおおんッ!


 突如、ドーム型の一番後ろのほうから爆発音が聞こえた。

 煙があたりを満たす。


 ――なんだ、事故か?

 ――まさか、騎士?

 ――逃げたほうがいいんじゃないか?


 ざわざわと波紋のように喧騒が広がっていく。


 やがて、煙は晴れ――


忘却オブリビオン円環サークル!!」


 そこにいたのは、紛れもなく、ユウだった。

 ユウの声に呼応し、回りに紫色の円が浮かび上がり、回転しだす。その円はどんどんと大きくなっていき――やがて、オークション会場すべてを包み込むまでになった。


 その円に飲み込まれたものは全員が全員その場に倒れ付した。

 それを確認すると、すごいスピードで俺の所まで走ってくる。


「――大丈夫だったか、優貴....」


 俺を見つめて、悲しそうな顔をするユウ。

 何でそんな顔をするんだ?わざわざ助けに来てくれて――俺は助かったというのに。


「ごめんな....守れなくて」


 そう言って、俺に抱きついてくるユウ。

 ちょ、急に抱きつくなって!苦しい苦しい!


 .......でも。

 .....ちょっとだけ、うれしいような....。


「って!抱きつかないでください!」

「おわっ!?大丈夫なのか?」

「大丈夫ですって!」


 ....まあ、実際死ぬことさえも覚悟してたわけだし...。

 助けに来てくれて、助かったけどさ....


「....やっぱり、大丈夫じゃないじゃないか」

「え....?」


 気がつくと、頬を水が流れていた。

 いや、水じゃない....涙だ。


「あれ?おかしい....」


 奴隷としての扱いは、そこまで悪いものでもなかったはず....。

 なのに、何で――


「やっぱり、大丈夫だと思っててもそんなことはないんだよ。ほら、帰ったらゆっくり休もう?な?」

「....はい」


 俺って、こんなに脆かったっけ.....?

 まあいいや、今日は帰って早く寝よう....。








 結局、家に帰るとベッドに倒れ込み、すぐに寝てしまった。

 目が覚めると、次の日朝になっていた。どうやら思っていたよりも疲れていたようで、結構熟睡してたみたい。


「本当にいいのか?まだ休んでていいんだぞ?」

「今度こそは大丈夫です!」


 胸を張ってそう答える。


「でもなぁ....昨日の今日で――」

「大丈夫ですって!切り替えだけは早いんです。それに、私のせいでここまで待たせちゃったんだし、これ以上は迷惑を掛けたくないんです」

「....分かったよ、そこまで言うなら今日、出発しよう」


 そう、これは旅の出発の相談。

 これ以上迷惑をかけるわけには行かないというのも俺の本心だが、やはり早く旅に出たいというのもある。

 というか、そっちのほうが大きい。それってどうなんだ。


「その....昨日は、助けてくれてありがとう....」

「そんなの、当然だろ?仲間なんだし」


 なんていい奴なんだ....そして、どこまで主人公体質なんだ。

 将来ハーレム作りそう。うらやましい!変われ、その位置を!


「もっとスマートに助けられたらよかったんだけどな」


 あの助けかた、どうやらすごく力技だったらしい。

 夢属性の魔法、【忘却オブリビオン円環サークル】というのは、そもそもは対象の記憶を少し無くす程度の魔法らしい。それでも、結構高位の魔法だそうだが....。

 その魔法に魔力を過剰に乗せることによって、対象者の体内の魔力をかき回し、魔力酔いで気絶させただけだそうだ。


 つまり、思いっきり力入れて記憶を無くした、ということだ。


「出来るだけ早く助けだしたかったんだけど、あの屋敷、強力な結界が張ってあってな....侵入したら一瞬でばれるから、オークションのあの時じゃないと無理だったんだ」


 なるほど、それであのタイミングの突入だったのか。

 まあ、助かったからいいんだけどね~。


「あと、あの後色々あって....とにかく、荷物とか取り返してきたからな。銃とか召喚するの、大変なんだろ?」

「ありがとうございます!」


 確かに、予備弾装とか召喚するの地味に疲れるんだよな~。レベルが上がったおかげか、少しはましになったけど。


「もう、話長い~!早く行こうよ~!!」


 隣でおとなしく座っていたアリシアが、ついに痺れを切らしたようだ。


「よし、じゃあ行くか」

「うん!」


 すでに馬車の手配まで済ませているらしい。荷物もすでに積み込んでいる。俺の寝ていたベッドが最後の荷物になったようだ。

 やっぱり、これ以上待たせると迷惑だったな。


 三人で馬車に乗り込み、ユウが御者席に座る。


「しゅっぱ~つ!」


 アリシアの掛け声にあわせ、馬車が動き出す。

二人の信頼関係は深まったようです

8/16 鞄を返してもらう描写を追加しました

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