3-13 牢獄
最近忙しく、あまり投稿できていませんでした。すみません。
彼女が目を覚ますと、そこは地下牢のような場所だった。
周りには、ぐっすりと寝込んでいる――気絶している?――見知った男たちの姿がある。
「っ....」
突如、頭に走った痛みに思わず顔をしかめた。そして、ゆっくりと今、自分が置かれている状況を理解していく。彼女の名前は、タリア。謎の人物たちに連れ去られたうちの一人である。
「ここは....」
あたりを見て確認するが、もちろん見知った場所ではない。どこにいるのか見当もつかなかった。が、この場所が石造りの牢獄のような場所であることだけは分かった。錆びた鉄格子は分厚く、到底自分の力でどうこうできるものではないことくらいは、タリアにも分かった。
鉄格子の外は廊下になっていて、ぽつんぽつんと遠い感覚でかけられた松明によって何とか向こうが見える程度の明るさを保っていた。
そして廊下には、目深にローブのフードをかぶった小さな人影があった。
「やっと起きたか」
「あ、あの、ここは....」
「残念だけど言えないな。クライアントの命令なんでね」
その声は高かったが、身長と照らし合わせれば男性とも女性ともとれるような声質だった。
タリアは、その声をどこかで聞いたことがあるような気がしたが、いくら考えても思い出すことはできない。
「目的はなんなんですか?」
おどおどとした態度をできるだけ表に出さないように、毅然とした態度でタリアは聞いた。
「目的、ね。アタシも大したことは知らないんだけど。ちょっと今回の客は礼儀ってのをわきまえてないようだったからね。少しだけ教えてやろうか」
どうせ教えてはくれないだろうと考え、できる限り会話を引き延ばしてボロを出させようと画策していたタリアは、素直に答える様子を見せる人影に驚きを覚えた。
「あんたたち、偽善活動してるでしょ」
「偽善なんかじゃ――」
「ま、そんなことはどーでもいいんだよ。アタシも素直に尊敬してるよ、あんたらのやってることには」
尊敬している、なんという言葉が飛んでくるとは思っていなかったタリアは、二度目の驚きを覚える。と同時に、どうしてこのような人が今回の件にかかわっているのかと疑問を感じた。が、それを聞く間もなく人影は話を続ける。
「こっち側はね、あんたたちがやってる活動が邪魔なんだってよ。だから、あんたらをつぶすためにこんなことをしているのさ」
「邪魔....?何をするのに邪魔なんですか?」
「そこは流石に言えないな~。アタシも大して知らないってのもあるし、言ったらアタシもあんたも、消されるよ」
「消されるって....」
「ほんとほんと」
そう言って笑う様子は、まるで普通の子供みたいで――でもその言ってる内容とのギャップにタリアは混乱した。
「まあ、つまりあんたらはただの囮。だから気にしなくてもいいさ。心配せずとも、命まではとられないよ」
と言われても、信じるわけにもいかないんだけどなぁ、とタリア。口には出さないが、人影のほうも信じてもらえるとは思っていないようだ。
もう少し話を長引かせるか?タリアが考えていると、牢獄の一角からうめき声が聞こえてきた。どうやら、男たちが起き始めたようだった。いったんタリアは会話を中断し、とりあえずは男たちの介抱をすることにした。幸いにも、大きな怪我を負っている人はいないようだった。
□
「今回はオレが何とかしてみる。だからみんなは、ここで待機していてくれ」
その日の深夜。あれ以降は特に何があるわけでもなく、時間はいつも通りに過ぎていった。だが、俺達の胸中は尋常ではない。何せ、義賊のみんな、その中でもタリアがさらわれていることが発覚したのだ。
これは、旅のための買出しに出ていた義賊の男たちが帰って来て、買出しにタリアが行っていなかったということが分かったからだった。
これは危険だとユウが俺たちを心配してそんなことを言ってくれているのは分かっている。分かっているけど――
「一緒に行かせてください」
「駄目だ。今回は何が起こるか分からない。義賊の長はオレと負けず劣らずの化け物だ」
「!?!?!?」
ユウと負けず劣らずの化け物....!?.......!?
駄目だ、理解が追い付かない....!ユウと同じレベルの人間がこの世に存在したなんて....。まあ、それくらいの力がなければこんな大それたことをできるような義賊を維持するのは難しいのかも知れない。恨みを買うこともたくさんしてるだろうし。
「その長を倒す秘策があるというのなら、オレだって危ないことになる。そんな場所に、みんなを連れてはいけない」
それは、俺たちが心配なだけなのか、それとも邪魔だと遠まわしに言っているのか....。
どちらでも構わない。俺の心は、すでに決まっている。
「そうだというのなら、尚更です。もしも足手まといになるのなら、切り捨てても構いません。....私は、ユウさんの力になりたいし、タリアを助けたい。どうか、お願いします」
そういって、深く頭を下げた。ユウが悩んでいるのが、視線を向けなくとも理解できた。
しばらくの、間。
「わたしもいく~!」
「ルルも....。役にたつかは分からない、けど」
「みんな....」
ユウは再び、深く考え込み――
「わかった。でも、切り捨てるなんてことは絶対にない。捕まえられた人も全員助けて、みんなで帰ってくるぞ」
「っ....!はい!」
俺たちは、満月が町をおぼろげに照らす中、闘技場へと足を進めた。




