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1-3 目が覚めたら

 町の中に入ろうとしたら、急に門番さんに呼びとめられてびっくりした。

 名前を聞かれたときは何かやらかしたかと思ったが、地図もくれたしどうやら違うようだ。なんか、いつの間にか好かれた(?)らしい。


 ま、まさかロリコン!?

 いやぁ、それはないだろう。善意で地図をくれた人になんてことを考えるんだ俺は、あははは。

 

 そういえば、そろそろ日が落ちてきて暗くなってきた。

 時間を見ると、十七時半。冬ならとっくに暗くなっていることだ。そういえば、そんなに寒くないな。

 むしろ長袖長ズボンで暑いくらいだ。上着を脱いで、腕を捲くる。だぶだぶなのですぐにずり落ちてきそうだけど....ま、大丈夫だよね。


 とりあえず、地図を開いてこれからどうするかを決める。

 もう日も沈んできたし、今日は寝床を探すことにしよう。この90ルドで足りるか「どうか」は分からないけど。銅貨だけに!


 .......。さて、宿を探すか。

 町は真ん中にある広場を中心に、円形に広がっていた。広場に近いところが公園や家が多く、市街地といった場所だ。

 外に進むに連れて地球でいうところのスーパーやファミレス的なところが多くなり、一番町の外側に近いところに鍛冶屋や魔法道具店などが多くなっている。


 外壁は町をぐるりと丸く囲んであり、北と南の二つの門がある。

 周りの道的に、ここは南門のようだ。ちょうど近くに「良」と書き込まれている宿を発見した。

 とりあえず、そこに向かうとしよう。


 この地図結構詳細に情報が書かれてるな。

 ところどころに直筆で書き込まれているし、もしかしたら門のところで案内をするための地図だったのかもしれない。


 貰ったのは不味かったかも知れない。

 まあ、厚意は受け取っておくけどね~。








 地図に書いてあった、宿の前に着いた。

 扉の上に【羽の宿】と書いてある。たぶん、宿の名前だね。


 中に入って、カウンターに立っているお姉さんに話しかける。


「すみません、この宿って一泊何ルドなんですか?」


 うん、ナチュラルに聞けたと思う。

 違和感....ないよね?


 完璧に聞いたはずだったが、お姉さんは困ったような顔をしている。


「ごめんね、この宿は子供だけじゃ止まれないの」


 未成年だけじゃ....止まれないだと....?

 え、なに。つまり俺は「お金足りるかな~」とか「町に入れるかな~」以前の問題として宿に止まれないってこと? 


 いやいやいや....困りますって!


「ちゃんとお家で寝ようね?」


 そのお家がない場合はどうすればいいんですかね?

 失意のうちに宿を出て、地図を広げる。もしかしたら子供が止まれないというのはこの宿屋のローカルルールなのかもしれない。


 そうだ、この宿ならここから結構近いし、いけるかな?

 自転車で、再び宿まで行く。さっきの宿よりも小奇麗で建物も大きく、どっちかというとホテルといったほうが正しい感じの見た目だ。

 

 そして、もう一度宿に入る。今度は、スーツ(?)姿のお兄さんがカウンターに立っていた。


「すみません、一泊いくらですか?」

「申し訳ありません、この町では未成年のみのお客様に宿を取らせることを禁じる法がありまして」


 がーん。

 ショックを受けながらも詳しく聞くと、家出をした子供が宿に泊まって迷宮に繰り出し、そこで死亡するということが多く起こったため、作られた法律だそうだ。ちなみに、孤児なんかは孤児院に引き取られるそうな。


 いや、それはいいんだけど、この町以外にすんでる人はどうすればいいの?

 そう思ったので聞いてみると、そもそも隣の町から子供一人で来られるような距離ではないとのこと。なるほど、変な場所に転生(?)しちゃったのが悪いんだね。

 というか、迷宮なんてあるのか。

 そのことについても聞きたかったけど、これ以上ここにいると周りの人の迷惑になるかもしれないので自重しておいた。

 

 外に出た俺は、すっかり暗くなった空を見上げてため息をついた。


「孤児院、か....」


 せっかく別世界に転生したんだから、どうせなら世界の名所を回ってみたい。

 前世でも世界の名所とかをgeeglo mapゲーゲロマップで見るのも趣味のひとつだった。まあ、お金ないから仕方ないね。

 この世界には流石のgeegloゲーゲロも進出してないだろうから、自分の足で見て回りたいし。


 でも、孤児院に入るとなるとそうはいかないだろう。

 外出も制限されるかもしれない。


「う~ん、でも実際に孤児院に入ったことなんてないし、ましてやここは俺のいた世界じゃないからなぁ」


 まあでも、孤児院に入ろうとしてもすぐ入れるわけじゃないだろうし....とにかく今は、もう眠い。俺はロングスリーパーなんだ。


 とはいえ、どこで寝るか....ん?あの路地の奥なんて、人目がなくて丁度いいんじゃないか?

 というわけで、俺は仕方なく細い路地に腰掛けて眠った。

 うん、基本的にどこでも寝られる主義だから。








 目が覚めたら、ベッドの上で寝ていた。

 一瞬、今までの出来事はすべて夢で、ここは俺の部屋なのかと思ったが、起き上がって周りを見た瞬間にそれは違うと気づかされた。

 だってパソコンないし。


 掛け布団を畳んで、立ち上がる。本当はすごく眠たいんだけど、ここで寝たら何をされるか分からない。

 いやだって、これ拉致でしょ?犯人がここにいないうちに、早く逃げないと。ああ、でも自転車がどこにあるか分からないし....まあいい、宿の位置は地図さえ見れば分かるから、その近くを探せば分かるだろうし。


 足につけているホルスターからFN57を取り出して、薬莢を薬室に送り込む。

 ネットで見た『銃の構え方、撃ち方講座』の通りに構えて、部屋を出る。

 どうやらここは誘拐犯の家のようで、そこまで広くはないが家具などから生活感があふれている。


 緊張で心臓の動きが早くなるのが分かる。

 ゆっくりと、足音を殺して進んでいく。


 そのときだった。


「あ、起きたんなら――」

「おわああぁっ!?」


 前に集中していたところを唐突に後ろから話しかけられ、前にすってんとこけてしまった。

 即座に後ろを向いて銃を向けるが、簡単に取り上げられてしまう。びっくりしすぎて、腰が抜けてしまった。

 ....恥ずかしい、なんて言っている場合じゃない。


 もしかして、このまま殺されたり奴隷にされたり――無理やりあんなことやこんなことをされたりするのかな?

 もしそうなったら――考えただけでもぞっとする。


 股間の辺りがじゅん、と湿ってきたのが分かる。意思とは関係なく、体が小刻みに震える。

 やばい、マジで殺される――そう思った瞬間。


「大丈夫大丈夫、変なことはしないから」

「....へ?」


 俺のことを脅かした男は、俺の頭に手を乗せてにっこりと笑った。


「急に話しかけてごめんな。驚かすつもりはなかったんだが」


 ははは、と笑う男。男に敵意がないことを知り、少し冷静になった俺は今の状況を思い出した。

 ぼんっ、という勢いで顔が真っ赤になるのが分かる。


 ....漏らした。

 いい年して。


 やばい、恥ずかしくて死にそう。恥ずかしにそう。


「とにかく、話は後で。まずは....お風呂、入ってきたら?」


 そっぽの方を向きながら、そう言う男。

 気を使われているのが分かって、さらに恥ずかしい。恥ずかしい!うわああああ!

 再び冷静さを失った俺は、「風呂はそっちだからな~」という男の声を背に、廊下をどたどたと音を立てながら走り去った。









「ふぅ、なんというか....すごく個性的なやつだったな」


 オレは、町中で拾った不思議な少女のことを考えながら、そうつぶやいた。

 治安の悪いこの『異世界』において、あんな場所で無防備に寝るというのは自殺行為に他ならない。

 

 それに、少女の傍らに置かれていたあの自転車。アレは確実に、地球の、日本のものだった。

 あの少女は、確実にオレの同郷、地球人だ。


 だからというわけではないのだが....。

 思わず、拾ってしまった。


 あんなところで寝ているほどだし、困っているのだろう。お金も、調べてみたが90ルドしかもっていなかった。むしろ、あの体でどうやって90ルド溜めたんだか。


 う~ん、これからどうしたものか。

 手の中にある、拳銃をもてあそびながら、オレは思案に耽った。

最後のほうは、男視点です

主人公可愛いよ主人公

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