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1-2 町に入ろう

ブックマーク、ありがとうございます。

 自転車で適当な方向に向かって進んではいるが....。


 なにも見えない。


 いくら進んでも何も見えてこない。俺の脚が小さいから進むのが遅いというのもあるけど....。それにしても何も見えてこない。

 もしかして、あまり開拓が進んでいないのかもしれない。

 できれば、情報収集もしたい。....というか、早く町か何かについて誰かと話したい。人恋しいよぉ、ふえぇ....って、キモいか。


 ふぅ、ふぅ、ふぅ....。

 地面が草で覆われているせいで、だいぶ体力を持っていかれる。タイヤが空気を入れなくてもいいタイプのタイヤなのは、不幸中の幸いかな?そうじゃなかったら、多分今頃空気抜けてた。

 俺、マメな性格じゃないし。


 と、三十分ほど進み続けたころで、遠くに灰色の線が見えた。

 もしかしたら、城壁か何かかも?と思って近づいてみる。


「って、ただの道か」


 城壁ではなかったようだが、これでやっと光明が見えた。

 道を辿っていけば、そのうち間違いなく町につける。問題は、腹が減って倒れるまでに町につけるかどうかだが....。

 

 この道、馬車用な気がするんだよね。

 なんでかって?道が車輪の幅で凹んでるから。


「....大丈夫大丈夫!俺ならできる!」


 ここで考えていても仕方ないよね!

 草もなくなって大分楽になったし、道に沿ってチャリを漕ぐ。





 


 やっと町に着いた....ぜぇぜぇ。

 ここまで来るのに、道を見つけてから一時間....くらいか?普段ならそれくらいの間チャリを漕いでもここまで疲れなかったのに....幼女の体力、侮りがたし!


 核がどうこうの不思議生物じゃなかったのか、俺。

 

 というわけで、門。

 門だ、門。町は壁に囲まれていて、俺の目の前に門がある。多分、検問的なアレだろう。身分証明書とか要らないかな....、多分大丈夫!根拠ないけど。


 とにかく、突入するしかない。それで無理なら、今の見た目を利用して門番の前でくるまって「うぅ....寒いよぉ....」とか言ってみよう。....考えただけでも吐き気がする。

 そんなことできればしたくないなぁ....。


 門番は、若い男の人だった。

 あまり剣とか振り回して強そうな顔ではないが、第一印象的にはやさしそうな人だ。


「すみませーん」

「ん?どうしたんだい嬢ちゃん」


 とりあえずは、意思疎通できるみたいだ。第一関門突破。

 それよりも、嬢ちゃんって....。いや、ここは突っかかってもめんどくさいことになるだけだ。ガマンガマン。


「町に入りたいんですけど....」

「じゃあ、市民証は持ってるかい?」


 市民証....だと....?

 それってつまり身分証ってことだよな?....持ってない持ってない。そんなもの持ってるわけないって。

 地球生まれ地球育ちだし。


「えっと....持ってないんですけど」

「ああ、家に忘れちゃったのかな?」

「いえ、普通に持ってなくて」


 ん?と首をかしげる門番さん。


「持ってない?ってことは、隣町から来たのかい?隣の町までは歩いて移動できるような距離じゃないはずだけど....そういえば、見かけない顔だね」


 門番さんが頭の上に「?」マークを浮かべている。「魔獣とかも出るんだけどなぁ」とか呟いてる。

 これ、ちゃんと街中に入れるのか?すっげぇ不安なんだが。


「どうやってきたの?」

「えっと....これで」


 そういって自転車を指差す。


「自転車?にしては少し形が変だけど、それでも来られるような距離じゃ....まあいいか」


 ああ、この世界の人たちからしたら変な形になるのか。

 俺からしたら普通の自転車なんだけどな。


「じゃあ、10ルドの入市税が必要だよ」

「入市税?」


 やばいやばいやばい。

 俺、この世界の金持ってないぞ?もしかしたら神様が融通利かせてくれたんじゃ?とポケットに手を入れるが、中には手鏡と紙、スマホ以外何も入っていない。つーかルドってなんなんだ。


 あれ?マジ野宿?


「すみません、お金持ってないんですけど、物で代用とかできますか?」


 これが無理なら....「寒いよぉふえぇ作戦」を実施しなければいけない――なんていう俺の心配は、どうやら杞憂に終わった。


「うん、大丈夫だよ。というより、買い取る、って形になるけど」

「あ、じゃあこれ買い取ってもらえますか?」


 即座にポケットの鏡を取り出す。

 ごめんねまだ見ぬ神様....別に俺だって好きでこんなことをしている訳じゃないんだ。仕方なくなんだ!

 貰った物を即座に転売って、心なしか屑臭がするけど仕方ない。町の外には魔獣とかいるらしいし、野宿は命がけになる。


「これは....鏡?複雑な意匠も施されているし、結構高価なものだね」


 鏡の裏に木の模様が彫りこまれているけど....正直、地球なら普通に量産されているレベルだ。

 

「うん、これなら100ルド位はするんじゃないかな」


 そういってポケットから銅色の貨幣を九枚渡してくる。地球の貨幣とは違って、一枚一枚が微妙に形が違う。曲がってるし。この世界の技術力はこれくらいってことか?

 とにかく、この銅貨一枚で10ルドってことだな。うん、いまいちお金の価値が分からない。

 あの鏡が100ルドで、それが高価ってことくらいは分かった。うん、それしか分からん。


「ありがとうございました!」

「どういたしまして」


 微笑ましい、というような笑顔で俺を見送る門番さんに会釈しながら、町の中に入っていった。







 僕の仕事は門番。

 

 今日もいつもどおりに仕事をして、そろそろ夜勤組みと交代かな、なんて考えていると、一人の少女が門にやってきた。

 十歳か、それより少し上くらいだろう。年齢から察するに、貧しい家だから仕方なく子供を薬草狩りに出して、少しでもお金を稼ごう、ということか....と、はじめは思ったが、どうやら違うようだ。


 よく見れば、肝心の薬草を持ってないしね。


「すみませーん」

「ん?どうしたんだい嬢ちゃん」

「町に入りたいんですけど....」

「じゃあ、市民証は持ってるかい?」


 テンプレートの受け答えをする。

 僕はこの町で生まれ育ったので別の町に行ったことがないから分からないが、この町では市民証がなければ入市税として10ルド、銅貨一枚をもらうことになっている。


 いまいちどこからどうやって来たのか分からない少女だったが、市民証まで持っていないようだ。

 う~ん、家に忘れてきたのかな?

 そう思って聞いてみたが、そういうわけではないらしい。そもそも市民証を持っていないようだ。


 ますます怪しい....というか、おかしな子供だ。


 どうやって隣の町から来たのか聞いてみたら、傍らの変な形の乗り物を指差してそれで来たといった。

 どうやらそれは自転車だったようだ。自転車というのはもっと....ずんぐりした見た目だった気がするのだが。


 どっちにしろ、隣の町とこの町は子供一人で来れるような距離じゃない。

 ....まあ、考えても仕方ないか。この子を魔獣の危険がある市外に放り出すわけにはいかないしね。


 というわけで、入市税のことを伝えると、どうやら知らなかったようで眉を寄せて「ムムム....」と唸っている。可愛らしい。

 10ルドか....これくらいの年の子にとっては大金だからな。俺たちからしてみればはした金レベルだけど。


 と、唸っていた少女が不意に何かを閃いたように顔を上げた。

 

「すみません、お金持ってないんですけど、物で代用とかできますか?」


 やっぱり、お金が足りなかったんだろう。

 物を換金して町に入ろうという提案だが....それは、市の法律で許可されていない。かといって、この子を放り出すわけにもいかないし....ここは大人として、一肌脱ぐか。


「うん、大丈夫だよ。というより、買い取る、って形になるけど」


 ということにしておいた。

 つまり、俺が適当な額で物を買い取って、入市税を僕が払う、ということだ。


 少女が出してきた鏡をじっくりと見てみる。

 それは鏡だった。この年の少女が持つには少し高価すぎる気もするが....木彫りの意匠が施された手鏡だった。

 多分、100ルドくらいが妥当な値段だろう。....地味に痛い出費だ。財布が軽い。今日は仕事上がりに飲むのをやめておこう。


 入市税以外の90ルドを渡して、門の中に入ってもらう。

 年の割りに礼儀正しかったし、興味深い子供だった....そうだな、せっかくだし名前くらい聞いておこうか。


「君、名前はなんていうの?」

「ふぇっ?あ、ゆ、優貴といいます」

「ユキ、ユキ....うん、覚えた。これ、この町の地図だよ。ほんとはこういうのいけないんだけど、内緒ね」


 びっくりしているようだったけど、すぐに「ありがとうございます!」と挨拶して去っていった。

 元気なことで何よりだ。

途中からは門番さん視点になっております。

分かりにくかったら申し訳ありません....

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