2-4 幽霊無双
今回はすごく短いです
――タン!
念のためにもう一度発砲してみるが、やはり銃弾が悪霊どもにあたることはなく、後ろの壁を抉るだけにとどまる。俺の銃の腕が悪くて当たらなかったというわけではないようだ。
そうこうしている間にも、俺とユウを重点的に半透明の顔色が悪いおっさんが近寄ってくる。
この部屋に閉じ込められてから数分たっているけど――幽霊たちは、俺たちの体をすり抜けるだけで何もしては来ない。
....いや、そういえば体をすり抜けられるたびに幽霊と一緒に何かが抜けていくような感覚がする....ような気がする。
もしかして、何かを取られている?
まさかと思い幽霊の動きをじっくりと観察する。
幽霊は尽きることなく壁からぬるりぬるりと現れている。
そして、現れた幽霊は俺たちの元に来て体をすり抜け――すり抜けることが出来た幽霊だけ、どこへともなく消えていく。
よくよく見れば、幽霊が一人消える度に新しく壁から出てくるようだ。
もしかして――俺たちの体に、何かを蓄積させていっている....?
いや、何かが抜けていく感覚があるし、体をすり抜けた幽霊から壁に消えていってることから、俺たちの体から何かをかっさらっているのかもしれない。
まだ決め付けるのは早いな....。とにかく、こんなことをしてまで俺たちにしているということは、俺たちにとっていいことではないだろう。
それにしても....
「ああもう!しつこいです!」
あまりにすり抜けてきて鬱陶しかったので、思わず殴ってしまう。
吹っ飛んでいって消え去る幽霊。
人の体を許可なくすり抜けるなんて、失礼だぞ!
ほんとにもう、デリカシーがないなぁ!変態!
「....って、え?」
今....幽霊吹っ飛んで消えたよね?剣で切り付けても銃で撃っても魔法を当てても死ななかった幽霊が....。
もしかして、これって....俺のチート時代がキタコレ!?
「なるほど....何故かは分からんが、素手でなら倒せるってことだな!」
ユウが俺と同じように幽霊に殴りかかる――すると、ユウの手が触れた瞬間に幽霊が弾け飛ぶ。
「って、これ触っただけでも吹き飛ぶな」
俺も触ってみる。
触った場所が光って、幽霊が苦しそうにするも、弾け飛びはしない。う~ん....やっぱりユウは強い....のか?何でこんなことになるのかは分からないけど。
アリシアはというと....素手が効くと気がついて、幽霊を殴りまくっている。地球で見たボクシングとか、そういうレベルのキレッキレな動きで幽霊を屠り続けている。
一発殴ってもその場所が光ることもなければ、触れただけで消滅させることもない。普通に殴っている程度のダメージしか通ってないように見えるが....。
殴る殴る殴る。
圧倒的スピードで近寄り、何度も殴ってすぐさま離れる。
まさに、蝶のように舞い、蜂のように刺すって感じだ。
ユウが踊るように幽霊に触れて消滅させ、軽いフットワークで幽霊を倒していく。
気がつけば....ユウとアリシアの手で、幽霊たちは全員消えていた。
「攻略法が分かれば結構簡単だったな」
いや、よく分からないけど、多分普通だとそうは行かないと思うぞ....?年齢から考えて、結構普通じゃないアリシアでさえもあれなんだし....。
ってか、何で幽霊を触れる上に殴れたりするんだ?
....ま、考えても仕方ないか。
さっさとこの部屋のドアを壊して、あの女の子を探さないと。
「優貴、もしかしてあの女の子を探して助けようとか考えてないか?」
「え?でも、当たり前ですよね」
アリシアもユウに同調するように頷いている。
でも、普通に考えて、それが常識だろ?ましてや、助ける能力があるのに....。さっきユウが見せた魔法。空間自体がズレたように見えたが....とにかく、普通のレベルじゃないことくらい、見れば分かる。
いやだって、俺の中では魔法ってのは火の玉出したり氷の槍出す程度だもん。
「あ~、そういえば言ってなかったか。あの女の子も幽霊だぞ」
「そうなんですか!?」
「うん。アリシアは危機感知でなんとなく分かってたみたいだけど」
「幽霊敵~!」
マジかよ....。
「でも、全然透けてませんでしたよね?」
「確かにそうだけど....あまり迷惑に巻き込まれる訳にもいかないし」
「もう巻き込まれてます!あんな子供を放っておくなんて出来ません!」
「もし二人が怪我をしたら大変だろ」
言い聞かせるような口調のユウ。
....確かに、アリシアが怪我をしたりしたら、俺にはどうしようもすることは出来ない。ごめんで済まされるような問題ではないだろう。
「でも....あの子、助けてって言ってました....」
「....ただの、罠かも知れないだろ」
信じてもらえなかった。
いや、本来ならそう考えるのが妥当なのかもしれない。でも、でも――
「.....分かりました。そこまで言うなら、私はここで別れます。今まで
、ありがとうございました....」
言い捨てると、背中を向けて走りだす。
ドアを銃で撃って、部屋から逃げ出すようにして転がり出た。
□
「やりすぎた....」
かんっぜんにやりすぎた。
何であんなことを言ってしまったんだろうか....。どう考えてもおかしいだろ。
でも、すこしカッとしてしまったんだ。
あの....最後に聞こえた、少女の「助けて」という声。あの言葉は、あの言葉だけは少女の心からの言葉だった。何故か――それだけは、分かる。
たとえ....冷静に考えれば、あの女の子が俺たちを嵌めたのが確実だとしても。
「あ~もう....」
ああいって飛び出して来たので、戻るのも気まずいし....やっぱり、あの子が気になる。
でも....さっきから歩き続けているけど、全然出口が見えない。しかも、同じような風景ばかりで、自分がどこを歩いているかも分からない。そうだな....どこにあの子がいるかなんて検討もつかないけど....とにかく、城のてっぺんを目指すか。
結構広いように見えたから、時間が掛かるかもしれないけど....どうせ迷ってるんだ、どうにかして最上階に行って見せるさ。
なんだか、この世界の迷宮探索とは違う....ゲームっぽいダンジョンを攻略している気分だな。
よぉし、頑張ってこのダンジョンを攻略していくか!




