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第三話 人

「うわぁ!」


 夢か……悪夢でも見ていたのだろうか。汗をびっしょりと掻いているが、夢の内容は何も思い出せない。


 目を開けると暗い部屋にいた。背中に冷たい床の感触があり、床で寝ていた事に気付いた。


「なんだ?これ……」


 左腕に違和感を感じ、寝たままの状態で左腕を上に上げて目線に入れると時計のようなブレスレットが嵌められていた。外せる様子は無く、意図的に誰かが嵌めた物と思うと、不気味な感じを受ける。


 目が暗闇に慣れてくると、部屋の様子がわかり始めた。床も壁も木造で、広さは九畳ほどの正方形だ。天井は三メートルほどであろうか、ジャンプしても届かないぐらいの高さ。部屋には、壁や床と同じく木製のドアが1つある。


 周りを見渡したが、窓も電気も何もない。この部屋には、物は置かれてないらしい……。


「なんだ?この部屋……」


 赤ちゃんが這う様な体勢で四つ這いになり、床を隈なく調べた。部屋を隅々まで調べると片隅に文字が書かれているのを見つけた。


≪ここを爆破しろ≫


「ここを爆破しろ?……」


 首を傾げる。文字の書かれた箇所を軽く叩いてみたが他の場所となんら変わることなくコツコツと硬い木の感触しかない。当然、部屋にこの箇所を爆破する道具など無い。


 俺に出来ることと言えば残すは、ドアを開けることぐらいしか残されていなかった。


 気楽な気分でいた訳ではないが、考えてみるとこれは監禁されてる可能性もあるわけで、

のん気でいられる訳ではない。


 目の前のドアだって極端な話、開けたら何が出てくるか、わかったもんじゃない。それに、気になっていたのは、この左腕に嵌められている腕輪だ。


 これは、いったいなんなんだ……。いろいろ腕輪に触れてみたが、外せない。


 気を引き締めて、ドアノブへ手を伸ばした。金物で作られたノブは触れると冷たく、『ガチャッ』と音を響かせる。ドアを押し開くと『ギーー』と木製独特な音を発しながらドアは開かれた。


 少し開けて中を覗くと、こちらの部屋も暗い。中から何処と無く冷たい空気を感じる。暗くて中の様子は良くわからないが、ドアを完全に開き、ゆっくりと様子を窺いながら、中へ入った。


「誰か居ますか?……」


………………。


 返事が無い……。誰も居ないようだ……。


 ドアノブから手を離すと、『ギー』と音を引きずり、ゆっくりドアが閉まる。


 目を凝らすと部屋の様子が次第に姿を現した。部屋の広さはさっきの部屋と同じぐらいで、床と壁は大理石のような石で統一されており、青、白、黒の三色が斑模様に施されている。天井は高すぎるためか、その高さを知る事はできない。隣の部屋とは違い、その様相はどこと無く現実離れしており、不気味なものを感じさせる。ロウソクを一本立てれば、儀式にでも使えそうな感じた。


 床に目を配ると、いたる所にボタンが突起しているのが見えた。大きさは親指ほどで床と同じ模様のものだ。数は……四十ぐらいあるだろうか。


「なんのボタンだ? なにかのスイッチか?」


 好奇心で1つ押してみた。するとその突起物は『カチッ!』と音を発し、床の高さで止まった。まるで床と一体化し、元の状態へ戻ったように。


『ピッ!……』

 何か無機質な機械音が部屋に反響する。


「なんだ?」

『ピッ!……』

  

 続けてもう一度……。

 頭の中は、軽く混乱していた。なにか起きているのか。ボタンを押した事でこの音が鳴っていることは予想できた。


『ピッ!……』


 もう一度……。


 三回その音は鳴ってみせると、姿を消した。なんだったんだろうか?。無意識に嫌な汗が頬を伝っていた。


 あまりにも、自分の理解を超えるおかしな部屋の造り……床の突起物……。


 何かを試されているのか?……理解できない……何のために?……。


 その答えを教えてくれるものは何も無い。


 意識的に床のボタンを踏まないように奥へ進み、奥の壁へ背もたれした。この部屋も、床のボタンを除けば、置いてあるような物は何も無いようだった。密室に一人きりの孤独を噛み締めると自然と自分の中から溜息が出た。


「はぁー……」


『ガチャッ……ギー……』


 一瞬の出来事に瞬時に目線はドアを捉えた。闇の中、ドアが開くのが薄っすらと見える。


 そして、人影。


「あのー……」


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