プロローグ1-7
急に動きがとまった夏海の様子に聡は、不思議そうに問いかけた。
「どした?どっか具合でも悪い?」
その言葉にハッとしたような表情を見せ、我に返る夏海。
「ううん、なんでもないよ、それより、そろそろ下に行った方がいいんじゃない?
お義母さんが待ってるだろうから。」
「そか?なんかあったらすぐ言えよ。」
「うん、ありがとう。」
聡は、スーツ姿から普段着に着替えてからどこか夏海の様子が変なところを気にしつつも悦子が待っているリビングへ向かった。
夏海は、あれからずっと悦子とは、会っていない。
食事は、コソッと聡が持ってきてくれたり、夜中誰も起きていない時間帯にお風呂に入ったり、それで文句言われた様子でも聡がフォローしていると、後から知った。
この人を愛してよかったと心から思っていた矢先の聡からの気がかりな言葉。
いてもたってもいられない夏海は、自分のクローゼットの奥の方から予備の妊娠検査薬を取り出し、トイレに駆け込んだ。
「お願い、お願い、お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い…」
恐る恐るも夏海は、妊娠検査薬を見た。
そこには、信じられない、受け入れたくない現実が目の前で起きた。
聡の子供だと言い訳なんてできやしない。
寧ろ悦子からには、出ていけと言われた。
夏海の脳裏には、ただただ
悦子さえいなければこんなことには、ならなかった!
その悔しさと憎しみの気持ちでいっぱいになった。
この手で悦子を殺してやりたいと思った。
今お腹の中の中にいる子供さえ憎くて仕方ない。
どうしたら…どうしたら。
小さい個室の部屋の中でもがき苦しみ頭の中と気持ちと整理できないほどになっていた。
ただその時にさっきの聡の会話の中に出てきた女の子。
その女の子の言葉が頭の中に不思議と過ぎった。
"貴方の怨み買います"
その言葉が思い出された瞬間気が狂ったようにトイレから出ると、あの時渡された名刺を必死になって部屋の中を探した。
自分の手の中から離れてから時は、結構経っている。
間違ってレシートやゴミと間違えて捨ててもおかしくは、ない。
夏海は、それでも探した。
探しに探した。
が、見つかることは、なかった。
「なんでないの!!」
部屋中に夏海の大きな声が響き渡った。