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地獄の螺旋  作者: 蝶桜
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プロローグ1-6

「このままだと死んでしまう。」


何を縁起の悪い事を言っているだとふと相手の顔をみた。

正直関わりたくないと思った。


あまりの過激なゴシック系ファッションに黒のレースの日傘。


色白の肌に真っ青な瞳に綺麗な金髪の巻髪。


生きたフランス人形と言えるような不気味な美しさがあった。


聡は、一瞬言葉につまったが、すぐに小さい子に尋ねるような口調で。



「君どこの子?そんな不謹慎なこと言っちゃだめだよ、お母さんは、どこかな?」


「お母さん…僕は、お腹の中にいるよ。」


「何をわけのわからないこと言ってるのかな?」


ちょっと聡は、困った顔をしていても顔色一つ変えずにただ一言それだけを言うと、くるりと背中を向けて、

トボトボと歩いて、街の中へ消えて行った。


「なんなんだ、今の子は、全く最近の親は、どういう躾をしてるんだ。」


ふぅと溜息をついて、聡は、自分の家に帰ることにした。

今日も夏海は、部屋から出る気がないのだろうか。

最近では、家に帰ることさえ憂鬱になっていた聡だった。


ふと駅前にあるケーキ屋に目が止まった。


そういえば、結婚する前プロポーズをしようと決めていた日、丁度このお店で一緒にケーキ食べたっけ。


そんな甘酸っぱい思い出が蘇り、自然と足がケーキ屋の中に入って行った。


「いらっしゃいませ。」


懐かしいケーキの甘い匂いが鼻についた。

今じゃあの頃と全く変わってしまった。


俺のせいなのだろうかと思う時さえあった。

でも思い当たる点がなく、途方にくれていた。


ふと夏海が好きなショートケーキが目に入った。


「すいません、ショートケーキとこの苺タルトを一つずつ下さい。」


「ありがとうございます。」


「あと、なるべく小さい箱でお願いします。」


夏海の分だけのケーキを買い、自分の母悦子の分は、買わず、隠し持てるような箱を選び会計を済ませお店を後にした。


「喜んでくれるといいんだけど。」


ぼそっと一人で呟く。

自分の家が視界に入ると、自分の服の懐の中に小さなケーキ箱を隠した。

隠したところで外見からは、箱の形がわかる。

それを承知の上で、家に入った。


「ただいま。」


「お帰り!早かったわね!」


いつもと変わらない、悦子の声が耳に入る。

相変わらず聡には、べったりな様子で。


すぐさまに悦子が奥から聡の元に駆け寄り、鞄を預かり、コートも預かろうとしたら、いつも違い、自分で部屋でやるからいいと拒否をした。


悦子は、不思議に想うのと、隠しているつもりだろうけどもバレバレな箱の形がわかった。


「聡、それ、なーに?」


「あ、この箱の事?会社の人からもらったんだよ、今日退職した人がいてさ、それで。」


「あら、そうなの、中身は、何かしら?」



「ただのお菓子だよ、ほら、よく箱の詰め合わせで売ってるじゃないか、この箱は、余ってたから持ち運びやすいようにもらってきたんだ。」


「あらあら、そうなの?そういえば、夏海さん、今日も部屋からでてきてないわよ、本当困ったお嫁さんですこと。」


「そういうなよ、俺が見てくるから。」



そう言って悦子の横を通り、自分の部屋へ行く階段へ登っていった。


悦子は、箱のことは、何も深く気にもとめず、そのままリビングに戻った。


コンコン…


「入るよ、夏海」


自分の部屋に入ると、何も変わらずただ前よりも笑顔が消え、以前よりも体は、痩せ細り、廃人の様に何も明るみがない瞳でこちらを見ていた。


そんな夏海に優しくそっと触れる。


「ただいま、夏海、今日は、こっそり食べさせたいものがあるんだ。」


何も反応がない夏海に対して、そっと服の懐の中から小さなケーキ箱を取り出した。

どこか懐かしいケーキ箱。


「覚えているか?このケーキ、夏海が大好きなケーキだろ?」


そっと箱の蓋を開け、夏海に中身を見せると、今まで何の反応もなかった夏海が大きな一粒の涙を流した。


その反応がたまらなく愛おしく、本気で愛していると実感した聡は、思わず夏海のことを抱きしめていた。


「食べてくれる?」


「勿論ッ…」


夏海は、泣きながら大好きな苺のケーキをゆっくり食べた。

懐かしい味、このケーキを食べた後、プロポーズを受けた事を思い出す。


本当に本当に

大好きで愛おしい、そんな人の傍をどんな理由があったとしても離れたくは、ない。



「そういえばさ、さっき変な子に会ったんだよ、変ないい方すればフランス人形みたいな子でさ、このままだと死ぬとか僕は、お腹の中いるよとか訳がわかんなくてさ。」



その聡の言葉に少し時がとまったようにケーキを食べる手がとまった。

聡の話から聞いた内容で、以前に夏海があった女の子と間違いがなかった。

それに、夏海は、思い出した。


あの容姿をはっきり覚えていた夏海は、あの背格好で妊娠してるとは、考えにくいと共に最近自分の中で月経がきていないことも。


最悪な事を予感していた。


まさか…と。


おりえないと。

いや、起きてほしくない、受け入れたくは、ない。


冷や汗だけが静かに流れる。


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