プロローグ 1-3
「ぐっ…ふぐっ」
私は、突然の事で息ができなかった。
そのままぐっと強く束になってる髪の毛を引っ張られ、ぐちゃぐちゃの顔をあらわにした。
「まぁ、汚い顔! 聡もよくこんな顔の女を好きになったものね!」
悔しくて 悔しくて
声すらあげられず、ただ一滴の涙が流れた。
「泣いてるの?まるで私が泣かしたみたいね!あはははっ。」
きっと涙目で睨むと、悦子の笑い声がとまり、睨み返された。
「なぁに?その目…まぁいいわ、明日が楽しみねぇ、あなたの本性が見れるといいわぁ。」
「私は…聡さんしか愛してませんっ!」
「どうかしらねえ?」
パッと悦子の手が頭が離れた。
一気に頭が軽くなり、一瞬くらっと頭が揺れた。
「それ、片付けといて、私明日の準備で忙しいから。」
そう言って悦子は、自分の寝室へと姿を消した。
夏海は、ほぼ何も口に入れないまま洗い物をしたり、ぐちゃぐちゃになった顔やテーブルを綺麗に拭いていた。
その時、上半裸の聡が頭を拭きながらリビングに顔をだした。
「どした?なんかあったのか?」
「いえ、なんでもないの、私がどじっちゃって。」
「気をつけろよ?母さーん、お風呂あいたよー。」
「今入るわ。」
もう私は、悦子の声を聞いただけで吐き気を覚えた。
そこまで私は、精神的に追い込まれてるとわかった。
自殺の事は、一切考えなかった。
親の事や聡さんのこと想うとどうしてもできなった。
隣で幸せそうに冷蔵庫から冷えた缶ビールを出し、勢いよく飲んでいる。
「ぷはっ!やっぱり風呂あがりは、この一杯にかぎるな!」
「よかったわね、体冷やさないようにね。」
「おう、じゃ先行ってるぞ。」
聡は、そのまま缶ビールを全部飲み干すと、二階にある私達の寝室に向かった。
私も綺麗にしてから電気を消して、二階に向かった。
その後すぐに悦子がリビングに入った事は、全く気付かずに。
私は、いつものように自分の部屋のドアを開けるともう聡は、寝る準備をしていた。
「明日も早いし、俺は、寝るけど、母さんがあがってからお風呂入ってこいよ。」
「ううん、明日御母さんいないっていうし、明日の朝入るわ。」
「夏海がそれでいいってゆうなら…」
「大丈夫。」
私も寝る準備をして聡の隣に背を向ける感じで入った。
今日も色々あって疲れた。
あの女の子の事を私は、寝るまで忘れられなかった。
あの、独特の服装と雰囲気をだして。
まるで生きたフランス人形を見ているようだった。
綺麗なストレートの金髪で、黒と赤のゴシックな色合いのドレスに、真っ黒な日傘。
そんな事をずっと思い出しているうちに眠りに入った。
真っ黒なトンネルの中を歩いてる夢を見た。
その時……
"貴方の怨み買います"
あの女の子の声がはっきり聞こえた。
パッと慌てて起きた時には、もう隣には、聡の姿がなく、窓から日差しが差していた。
そのまま重い体を動かし、そのまま部屋を出て、下に降りリビングに降りた。
「あら、遅いおはようですこと、聡には、私がお弁当渡しておいたわ。」
「……すいません…」
「いいのよ、今日くらいゆっくり過ごして下さいね。」
悦子は、綺麗に着飾り、普段付けないような髪飾りから少し高めの洋服。
姿見の鏡を見ながら綺麗に外見を整えてから少しきつめの香水を吹きかけ、小洒落たカバンを手に持った。
「じゃ後は、頼みましたよ、まぁせいぜいあまり羽を伸ばさないで下さいね。」
「行ってらっしゃい。」
そう言って悦子は、少し高めのヒールを履き、バタンと冷たいドアを閉めて行った。
ここから一人の時間だと思うとウキウキが少しとまらなかった。
久しぶりの一人の時間と一人の空間。
軽く喉も通らない中ご飯を口にした。
久しぶりの一人でくだらないテレビを見ていた。
そこからポカポカ陽気だったせいか眠気もさしてきて、少しウトウトし始めた時だった…
ピンポーン。
家の呼び鈴が鳴った。
「すいませーん、お届けものでーす。」
玄関の外から低い男の声が聞こえてきた。